技術の日産がぶっちぎったもの


私の車は日産ノートです。まったくアホですよね。せっかくドイツに住んでいて、かつ、人生初で新車を買ったんだからよりによって日本車なんかじゃなく郷に入れば郷に従えでワーゲンなり買えばいいのに日産。ちなみに日本に住む私の弟も父もドイツ車に乗ってるんですよね。なんか間違ってる気がします。

新車で買ったそらまめ号(私のDig-Sエンジンの日産ノートの愛称)もすでに5年が経ちまして、前々回のお話の通り定期点検に出し、そして、2度めの車検を受けてきました。

ちなみに車検は定期点検時に修理工場に任せるというのもありなんですが、手数料も馬鹿にならないし、自分で近所の検査場に持ち込めばいいだけなので(しかも日本のユーザー車検のように自分で検査ラインを運転する必要すらない)自分で検査場に持ち込みました。

こちらの車検場、TÜVという独立した認証機関の検査場に持ち込むのですが(注:TÜV以外にもあるけど細かいことは省略)、これがけっこうあちこちにある。おらが村のすぐ近所の町にすらある。こちらが全景。

そう。検査ラインがひとつあるだけ。なので、働いているのも一人だけ。ここで働くおっちゃんはもうすでに顔見知り。都市部はどうかは知りませんけど、うちの近所はこんなにんのんびりした感じです。ちなみに車検の検査費用は€120近くしまして、日本円にして15000円弱は正直痛いです(注:検査費用です。整備などは一切されません)。

こうして、車はピカピカ、整備も万全。タイヤも夏タイヤに交換。ついでにガソリンまで満タンにしてこのようなことをつぶやいたーに投稿しました。

そう。もうしばらくは出かけないからそらまめ号もガレージに静かに保管される…はずだった。ところが急転直下話は別の展開に。

ここでお話はうちの嫁の話になります。私がドイツに住みながら日本車に乗っているという変人っぷりを披瀝する一方で、嫁は嫁でドイツ人のくせしてイタリアの車に乗るという変態っぷり。FIATのPuntoに乗ってます。

FIAT=Fix It Again Tomorrowの頭文字というのは英語圏の古すぎるジョークですが、まあ、実際そう。バッテリーがおかしくなったりトランクの鍵がかからなくなったり問題ばかり。なので、2年前の車検時に「もう廃車にしろ」と強硬に主張したのですが車検を受けまして、なんと合格。そして、あちらが壊れ、こちらがおかしくなりを繰り返すうちに季節は流れてついに再び車検の時がやってきたのです。私の意見は至極全うで単純明快。

「捨てろ」

つい最近も別の問題が発生したポンコツイタ車を擁護できる要素は嫁にはほとんどなく、今回はおとなしく車検を諦め廃車にすることに同意。

嫁、運転がうまいとは正直思わないのですが、ただ運転は荒くないので大きな事故はもとより、ぶつけることもこすることもなくずっと乗ってきました。あ、一度ぶつけたな。スーパーの駐車場でショッピングカート「を」。そう、ショッピングカートから荷物をトランクに移すときにショッピングカートが動いてテールランプを破損したというのが唯一の事故。なので、日本的に言えば「修理歴なし」の車です。

なんですが初登録は2004年、つまりは16年選手、下駄車として近所ばかり年間1万キロ近く乗っているのでトータルの走行距離も15万キロ近くになってまして…まあ、私が日本の常識で判断する限り下取り査定額はゼロです。嫁も概ね同意するものの諦めが悪い。

こちらで車を路上とかに停めているとワイパーにこんな名刺サイズの広告が挟まれることがたまにあります。

おいおい、電話番号のっけちゃって大丈夫かよ…と思われた方、続きをお読みください。

「車買います」

まあ、怪しいと言えばそうとも言えるかも。「クレジットカードで即融資。電話090-XXXX」てな感じの日本の広告と同じくらい怪しい。なお、0157はケータイの番号グループのひとつ。

ここに電話してみたんです(今あらためて読むと、ショートメッセージかアプリで連絡しろって書いてるけど…)。すると、

「おかけになった電話番号は現在使われておりません。」

廃業だか詳細は不明ですが、すでに連絡はつかなくなっていました。

嫁は同じようにワイパーにカードを挟み込んでいた別の業者にも電話。すると、「外国人らしき人が出て」(嫁談)、年式や走行キロを教えただけで簡易的な査定をしてくれたとのこと。ところが嫁は

「なんか畳み込まれるような感じ(急いで事を進めようとしている感じ)が強く嫌な感じだった」(同)

などとのたまう。「きちんと書類を処理してくれないと、万一のちほど問題が発生した際に私に累が及ぶ」(嫁談)ので、このような業者に任せることはいまいち良い判断とは思えない…などとぶつぶつ。

「いい加減な業者」(しつこいが嫁談)による現車を見ることもなく電話で行われた査定はン百ユーロなり。ええ?大した金額じゃないにせよ査定がついた?You売っちゃえyo…と思うが嫁はそれでもぶつぶつ言っている。

ちょっと興味本位で私はドイツのオンライン査定サイトに行ってみた。査定額はゼロではなかったものの上の「いい加減な業者」のちょうど半分。こりゃ四の五の言わずに件の業者に売っちゃえよ…と私は主張。

ところが嫁は自身の人的ネットワークを駆使して、うちからさほど遠くない(注:田舎的な感覚による距離感)修理工場が車の販売をしていることを聞きつけましてそこにアポを取って突撃。なんか変に行動力あるね。

小一時間で嫁は帰ってきた。

「怪しい業者の査定額より€50低かったから、『もう一声』って言ったら同じ金額が出たわ。売ることにしたよー」

嫁。やるな。…というか、この調子ならもうちょっと査定額は上がるかもな…と思わず欲が出てきたが、きりがないし、そもそも査定ゼロを主張してたのは私。余計なことを言って話をかき混ぜるのも良くないと思い黙っておいた。

こうして嫁のポンコツFIATは引き取られました。聞いたところ「怪しい業者」(何度でも言うよ。嫁談)は買い取った車をアフリカなどに輸出されるらしい。そういえば、日本でもパキスタンあたりに中古車を輸出する業者さんがいますよね。あれのドイツ版と思えばわかりやすいかも。あ、あの業者さん達が怪しいとか言ってませんからね。

こうして家からそう遠くない修理工場に引き取られたからおそらくある程度の整備をして車検を通してある程度の値段でまた近所で売られることになるはず。…ということはおそらく近所でこの車をまた見ることはありそうな気がする。

さて、話は私の「そらまめ号」(日産ノート)に戻ります。嫁の下駄車がなくなった…ということは当然の帰結として私のそらまめ号が嫁の下駄車になるわけでして。嫁は当然のように私の車を通勤に使い始めます。

まあ、これ自体問題はない。なにせ在宅勤務の私に車なんていらない。いわんやコロナ禍真っ只中の今日びをや。いつも車庫で眠っている車なんだから。…おとなしく使ってくれる限りは。

ところが。そうは問屋が卸さない。嫁、車庫に駐められないとのたまう。

問題はガレージのシャッター。ここが狭いのだ。3-40年前とかに設計・製造されたと思われるガレージ、日本で言えば5ナンバー車のノートの出入りの問題になるとは思えないのだが、確かに出っ張ったドアミラーの幅プラス両側に拳ひとつ分くらいの余裕しかない。慣れないと確かにちょっとドアミラーを当てそうになる。

それよりも何よりも問題なのは前後。車庫はもともと嫁父(義父)の作業場だったのだ。そこを嫁母の強権により強制収容したという歴史がある。妥協の結果として未だにガレージの1/3は作業場。作業場と車庫スペースは棚で完全に仕切られている。

問題は件の棚の位置。嫁父が作業スペースをギリギリまで広げようとするものだから、前後の余裕もどんなに多く見積もっても拳3つ分はない。まあ有り体に言えば、前後左右とも余裕がないのよね。

初公開。うちのガレージとAVM。

ここで登場するのは「ぶっちぎれ技術の日産!」の誇る先進技術AVM(アラウンドビューモニター)。これさえあれば、たとえ30センチ以下の余裕しかなくても余裕で車を駐められます。嫁に使い方を教えたのだが

「使い方がわからない」

と高らかに宣言される。ああそうか、どんな先進技術も技術アレルギーの前にはなんの役にも立たないのね。技術の日産はどうやらうちの嫁をぶっちぎってしまった模様。

とりあえず突き放すことにしました。

「自分でなんとかしろ。俺はいちいち(嫁の代わりに)車庫から出したり入れたりしてる暇はない」

何を偉そうに…と自分で思います。まあ実際はこんな言い方をしてないしできるはずもない。ネット上でくらい偽りの亭主関白させてください。

でもまあ正味の話、朝の6時過ぎに家を出ていくこともある嫁につきあって車をガレージから出すために起こされたりするというのは考えただけでお断りですので、なんとか慣れてもらうしかない。

個人的にはカメラもあるのでバックで入れるほうが楽だと思うのですが、嫁はこの点だけは譲らない。まあ、ここは妥協するからなんとか便利なAVMを使うようにしてください。最初はこんな小型車に不要な機能と思ってましたがあるとほんとに便利ですから。