前回のスマホのお話からの続きです。くっそ重い、でもくっそ頑丈(だとされる)中華スマホを手にした私は使い始めた2-3日後にはベルリンに行く羽目に。
ベルリンで何をしたって、結婚式だったんですよ。私の嫁がゴッドマザーを勤める甥っ子の。
ちょっと待てやい。ゴッドマザーとかよくは知らんけどキリスト教上の後見人みたいなもんでしょ。その子供が結婚する歳になっただぁ?そりゃ私も年取るわけだわ。やれやれ。
だいたいがさぁ、なんでくそ寒い1月に結婚するのよ。ジューンブライドという言葉に凝縮されるように気候のいい夏にするのがお約束。正直1月に結婚式とかあまり聞かない。デキ婚?とかとっても下衆なことを一瞬妄想したが、どうもお嫁さんがスペイン語を母国語とする外国人でそのへんも関係しているとか。正直あまり詮索してませんが…たぶんあなたのその推理はあたってます。
嫁には甥っ子姪っ子が私の知る限り4人いまして(絶縁した親戚がいるとかそういう話を聞かないのでたぶん4人で正しいと思う)、この4人が年齢も近くけっこう仲も良さそうなのです。当然この結婚する当人を除く3人も参加なのですが、もう皆様お年頃です。それぞれの彼氏・彼女を連れてくるとのこと。
それ自体は別に驚くには値しないが、ひとつ面白い情報を嫁が仕入れてきた。甥っ子のうちの一人がゲイだとカミングアウトして、彼のパートナーを連れてくるとのこと。
私、同性愛者の皆様に対する偏見などございません。私が参加したなかで2番めに良かった結婚式はスットコランドでのゲイカップルの結婚式だったし、嫁の幼馴染の大親友もレズビアンカップル、しかも子供が二人いたりする。
だがしかし。嫁の両親の世代となりますと話は違ってきまして、残念ながら嫁父(義父)は同性愛者反対。自分の親がどうなのかは聞いたことはないけど、まあいい顔はしないと思う。世代間の意見の相違とかあるからそれも仕方ないと思うけどね。ともあれ、野次馬根性としては嫁父がどんな反応を示すか見ものだわ…と勝手にワクワクし始める。
が、残念ながら年寄り連中は「ベルリンまで行くのがかったるい。足が悪い。ここがかゆい」と言い出して不参加表明。結局うちの近所のレストランで別にお披露目会を開くことで話がまとまる。
さらに。お嫁さんの方は自分のお国で夏に別に結婚式を開くらしい。こうして参加者は25人程度という実に小規模な結婚式が開かれることになった。
さて、かのグレタさん的にはベルリンまでおよそ300キロの距離は新幹線で移動すべきなんだろうけど、最近値下げされたとはいえ鉄道は高いし、何より結婚式の衣装一式を持っての鉄道移動はかったるいので車で行くことに。“How dare you?”です。はいはい。
環境にどうなのよ…という疑問は確かにあるものの、車での移動は実に正解でして、アウトバーンに入るなり、車速を120キロに設定したらベルリン近郊に到着するまでその設定を解除することはほぼなく到着。ちなみに、仕事の関係で当日式直前に新幹線でベルリン入りしようとした件の甥っ子の一人の彼女さん、新幹線が遅れ5分の差で式場入りを逃すという痛恨のミスをしでかしているのも事実。
最初の目的地はホテル。Tiergarten駅近所の住宅地の中にあるホテル。ちなみに写真がないのは…見事に忘れていたのだよ。気になる人はGoogle Mapsでもご参照ください。
こちら、ベルリンの一般のアパートを改装したような感じのホテルでして、市中心部にあるにも関わらず静か。趣もある。強いて問題点を挙げれば駐車場がない。路上に縦列駐車。運がいいとか悪いとか人は時々口にするけど、そういうことってたしかにあって、おかしなところで強運を発揮する私、ホテル前に社長づけ。
ホテルを予約してくれた新郎の親…つまり、嫁から見ておじさんになるの?こういう親類関係の説明がすごく苦手なんです…がこのホテルを定宿にしているということもあり、どうも事前にお願いしていたらしく午前11時という時刻にも関わらずスーパーアーリーチェックインに成功。すでに親類縁者の皆様は例の遅刻をしてきた一人を除いてお揃い。
揃ったところで始めようと10人ほどがそろってぞろぞろと近所のカフェで昼食。このカフェのテーブルでまさかのものを発見する。日本のファミレスにほぼ必ずあってでも、ヨーロッパではほとんど見たことないもの。
店員呼び出しボタン!
私が説明するまでもなく、このボタンを押せばどこか厨房あたりで♪ピンポーンと音がして、レジあたりの壁面に呼び出しが鳴ったテーブル番号が表示されて、店員さんがやってくるって流れですよね。ファミレスで働いたことないから良くは知らんけど。
翻ってベルリン市内の某カフェのボタン。
ボタンがあればバスの「つぎとまります」ボタンだろうと火災報知器のボタンですら押したくなる私(いちおう大人ですからやっていいこと悪いことの判断はできている…と思う)、このボタンを押さずにこのカフェを去る選択肢はなかった。「お会計」を押してみた。
おお、色が変わった。
もう一度押すと、消えた。
ちょっと気になったので「サービス」を押してみた。
おお、別の色になった。
しかしなにもおこらなかった。
つまりはこういうことです。このボタンを押すと電灯が灯る。それだけ。どこにもつながっておらず、もし、近所を店員さんが通りがかったら「どうしました」とやってくる。原始的ですな。
食事・支度ののち地下鉄とバスを乗り継いで市役所へ。10人もいるんだからタクシー分乗で行け…とも思えるのですが、折しもベルリンのこの地域ではトラクターによるデモ活動が行われてましてこの界隈を中心に交通が麻痺している状態。実は私たちが午前11時にホテルに着いたというのはこのトラクターによる抗議デモの影響をすんでのところで避けたということだったりする。
どどーんとそびえ立つ市役所。うーん。私が結婚式をあげたドイツの片田舎のそれとは格が違うな。ベルファストのそれを思い出した。
それもそのはず実はこちら、ベルリンが東西に分かれていた当時西ベルリンの中心施設として利用されていたらしいのだ。かのJFKもここに来たことがあるとか。
外で待とうと思ったが…寒い。中で待つことに。
しばらくすると新郎新婦さんがやってきた。新婦さんは当然といえば当然ウェディングドレス姿。真っ白のそれを着た彼女は見惚れるほどに美しい…のだが、それ以前にこの2度か3度しかない気温で肩を出した格好をしているって見方によっては罰ゲームですぜ。
幸い建物の中は若干とはいえ暖房が効いていたので肩を出した状態でも直ちに健康には影響を及ぼさないレベル。とはいえやっぱり1月って結婚に適した月じゃない気がする。
とりあえず式まで時間があるということでエントランスホールで記念撮影。たしかにこの階段は写真映えしそうな気はする。
そして式の時刻となり内部へ。
この市庁舎、とんでもないハリボテだった…というのは正しくないな。なんと言えばいいのか、内部まで管理の手が届いていないのだ。エントランスホールを過ぎると外観やエントランスホールの荘厳な雰囲気はどこへやら、なんとも寂しく、薄汚れた感じの庁舎になる。
入り口から見て1階左手最奥にある結婚式用のホール近辺はそれでも比較的きれいに保たれていた。こちらで30分ほどの結婚式。市役所のかかりによる話の後に指輪の交換、書類へのサインなど一連の行事を30分ほどで終わらせる。
ぶっちゃけて言う。私たちの結婚式のほうが良かった。まず、ベルリンという大都会でび結婚式ということもあってか、市役所職員さんのスピーチが新郎新婦さんの事にあまり触れずにすごく一般的な内容だった。そう、結婚式の数が多いからだろうけどいちいち新郎新婦さんの人となりにかまっちゃいられないのだろう。そして、式の終わりにスパークリングワインで乾杯のひとつでもやるかと思いきや…なし(お酒を飲めなかったことで文句を言っている説に自分で一票)。次の人達のために会場を空けることに。そう。完全に流れ作業状態。
件のホールから外に出ると、外には中に入れなかった新郎新婦の友人たちが寒い中集まっておりちょっとしたお祝いに。…何でもいいけど寒い。
新郎氏、何やらスマホを取り出してどこかに電話。
「すいませーん。タクシーお願いしたいんですが。24人」
…って予約してなかったんかいっ。
まあ、ベルリンだからできる芸当。私が結婚した某町は周辺の村を含めてタクシーは2台しかいない(しかも運転手さんは親子)。なので予約なしではまったく無理。私たちのときはレストランまで自分の車を運転したな。そういえば、私、新郎なのに自分でレンタカーのバンを運転したわ。
なぜこれを思い出したかというと、新郎さんは私たちのためにタクシーを予約するとさっそうと自分たちは予約していた運転手さん付きのリムジンに乗り込んでしまったから。文句を言ってるんじゃないよ。でも、日本の結婚式に比べるとどこにも仕切る人がいなくてグダグダだわ。
こうして3台のタクシーに分乗して(日本で言うジャンボタクシーが数分間隔で3台やってきた)次の目的地、レストランへ。
この住宅地の中にあるイタリアンレストラン。JR九州の783系特急電車のように(たとえがひどすぎますね…)入り口を挟んで左右に別れている半室構造。そのうちの半分を借り知ってのパーティー…といえば響きは良い。ところが、30人近くを収容するにはまさにギリギリの部屋でして、要するに…狭いんだわ。
テーブルはざっと8-10人づつで3つに分かれていた。親兄弟を除く親類縁者関係は部屋の構造上他のテーブルからはやや離れた三番目のテーブルにまとめられており、私にとって僥倖なことに、私の席は3つのテーブルの中で一番どうでもいい(と思われる端っこに設置された)親類縁者のさらに一番奥。まさに末席。これはいい。まあ、私なんてゴッドマザーたる嫁のダンナじゃなかったら呼ばれてすらないしね。
文字通り「末席を汚す」状態になった私はここでおとなしく食事をいただく。なにせ、狭いのだ。他の席に移動する席替えもできなければ、他の人がやってきてあいさつをするスペースすらない。つまり、唯一の正解はおとなしく周りの知った人たちと話をしながらおとなしく過ごすこと。
ただ、そんな中でも一人気になる人がいたのだ。それは例の甥っ子が連れてきた彼氏。この二人は同じテーブルにいたのだが反対側の端でこれがまた月ほども遠いのだ。私も知らなかったのだが甥っ子は彼氏ともども喫煙者。というわけで二人が外にタバコを吸いに行った時にまさにむき出しの好奇心でさっとついていった。
レストランの外には喫煙所がありまして、そこに立つ甥っ子の彼は、まあ、私の腰あたりにまた上があるような、それでいて体重は私と変わらないようなしゅっとした背の高い悔しいくらいのイケメンでして。しかも話してみるといいやつっぽい。さて、今後おつきあいを続けるならクリスマス他の親戚イベントに強制参加となり、嫁父他保守的な人たちからのどんなふうに歓待されるのやら。冷たいようですがあくまで他人事なので頑張ってねー…としか言いようがない。
そうこうしているうちに夜も更けてきまして、なんと「バンド」がやってくるという。待て、どこにバンドが入り込むスペースがあるねん…と思いきや
…そういうことか。
ここで会場に革命が起こった。今までまさにアウェイ感満載で借りてきた猫のように大人しかった新婦側の人間(つまりはドイツ人から見ればガイジンなわけ…って私もですが)一緒になって歌い出す。陽気に騒ぎ始める。これはいい。盛り上がってまいりました。見ているうちには楽しい。
そんなこんなでタクシーでホテルに戻ったのは日付変わって…何時だったんだ。覚えてない。翌日のおまけ編に続く。