Brexitの現場を見に行く。ベルファスト訪問記(後)


こうしてEUの凄さを実感しつつ定刻通りにベルファスト着。バスセンター脇の道路に降り立つと、他のすべての乗客とは逆方向に歩き始めた私。「壁」を見に行こうと決めていたのです。

てくてく。

市の中心部とは逆に住宅地へ向かう変人の私。

歩くこと15分ほどでShankillというエリアに到着。20年ほど前に小型の観光バスで来たことがあるのですが、正直怖いと感じた。殺伐とした雰囲気でなんかここにいちゃいけないというオーラがそこはかとなく感じられたのよね。それを感じ取ったのかガイドさんは

「大丈夫、このバスはダブリンのナンバーだから何も起こらないよ」

とか言っていた。

どういうことかというと、当時(そして今も)カトリックとプロテスタントでベルファスト市内の居住区は完全に別れており、それを「壁」によって二分していたのね。で、カトリック居住区側の壁には政治的な壁画が掲げられていたと。

それが20年を経過して何かしら変化したのかをなんの予備知識も持たないまま見に来たわけ。

なんだけど、どこかそこはかとない違和感が。

まず思ったこと。ここに殺伐とした雰囲気がまったくない。というのも、

まず、アホな観光客(私も含む)がアホ面をして緊張感なく写真撮影に興じている。さらには他の都市でも見るような2階建ての観光バスまでもが何気なく走っている。

そして、壁画そのものが私の見た90年代のものと全く異なっている。

当時見た壁画、残念ながらデジカメで撮影していないので参照できないのだが、もっと殺伐とした「プロテスタント許さーん」的な内容だった気がするのだ。それがなんとも毒のないもの・北アイルランドとは直接関係のないものに変わっている。

一説によると、このカトリックとプロテスタントの居住区を分ける門は現在も夜間は閉まるらしい。見ての通り昼日中の明るいときにやってきたのでそれが事実かはわからない。ましてや、夜間に門を閉める必要性が未だにあるかも昼間にアホ面して眺めただけではわからない。

緩衝地帯にこんなメモリアルがある。

さっきの戸は別の門。観光客がおらずこちらのほうが殺伐とした感があった。

こちらのほうがやや殺伐感はあった。しかし、やはりなんか当時の緊張感はない。もっともこの壁を挟んで騒動が頻発していた60年代やそれ以前にここに来たら私がここを歩けたはずはないのだから、90年代にここを見たからってそれを「当時」などとしたり顔をして語るほうがおかしい。ただ、それでも当時と印象が全く異なるのだ。

なんか野球場の裏に来たような感じですが、この壁の向こうはカトリック居住区。

壁の反対側、すなわち壁のこちら側のプロテスタント居住区に目を向けるとそこには盗まれてぶつけられて放置されたのではないかと思われる車。やっぱりここは夜は来たくない場所かも。

別の門を通りカトリック居住区に戻ります。

一つ気がついたことがある。昔はどちらの居住区にもアホかと思うくらいそれぞれの旗、つまりはユニオンジャックとアイルランドの三色旗が掲げられており「ここは俺達の居住区」としつこく主張していたのだがそれをほとんど見ない。下手したら当時は縁石まで塗られていたのだが。

当時は紛争地域と言っても良かったと思われるBombay Streetには記念公園があります。ここは観光バスは入ってこられないらしく貸切タクシーがひっきりなしに客を降ろし、運転手さんが説明をしてます。しまったなあ、ガイドさんがいたら深く理解ができたのになあ。

この壁画も間違いなく差し替えられている。何かしらの政治的な力が働いていることは疑う余地がない。

さっきプロテスタント居住区から見た壁を反対側から。たった壁一枚ながら徒歩だと10分以上かかります。

ついでにカトリック教会へ。

こうして2時間ほどの滞在でベルファスト市内へ戻る。さっきのバスセンター脇の道をようやく市内方向に向かう。

お昼ごはんはパブでランチ。なんじゃこりゃ…とお思いの方、ステーキサンドイッチなるものでした。うちでほとんど肉を食べない半菜食主義者的生活をしているのでたまには肉も食べさせてください。

こちらベルファストの中心にある市庁舎。この豪華絢爛さはあからさまに大英帝国のものです。そう、ベルファストの町並みはロンドンのそれとダブリンのそれとどちらに近いかと言われれば、ロンドンに一票。いい悪いは知らんけどやっぱり北アイルランドはグレートブリテン王国の一部なのだ。

街にしばらく滞在してバスターミナルのあるヨーロッパセンターへやってきました。ここにあるホテルヨーロッパ、当時は何度も爆弾テロに見舞われたとか。そんなホテルの脇で安心してバスを待てるというのはありがたいこと。

こののち、4時半のバスでダブリンに戻ろうとしたのだが、このバスが積み残しを出すほどの大盛況。予約なしでは乗車困難な状態になっていた。どうもバンクホリデーなどのときはこのバスは予約をしていたほうが良さそう。

バスは渋滞のせいでベルファストからの脱出に手間取り40分も遅れてダブリンに到着。ベルファストを出てから運転手さんがイライラした様子で急ごうとするのだが、もともとリミッターのかかる100キロで走ることを前提にしている時刻設定らしく運転手さんが以下にイライラしても遅れの回復にはつながらず、ただ単に荒い運転をしているだけ…という残念な状況だった。