前回(あるいは前々回)のお話の続きです。
ダブリンからの帰りのヒコーキはエアリンガスでして…まあ、正直大して書くことがない。…と思いつつ書き始めたらちゃんと1回分の日記の分量になった。
帰りのヒコーキは搭乗直前+ハイシーズンということもあり150ユーロも払った。LCCと見紛うサービス水準の会社としてはすごくいい値段。なのに、この値段では荷物を預け入れることができない。預託荷物に35ユーロとか取るとかいうふざけんなな価格設定。
困ったことには、私にはどうしても持って帰らなければならない100ml以上の液体があった(お酒じゃないです)。そして、液体は機内持ち込みができない。どうしようかと一計を案じ、郵送で別送することに。
…と書けばわずか一文で終わりなんだけど、これがまた容易なことじゃないのよ。会社から5時半に閉まる郵便局に向かいバスに乗り、更に徒歩10分かけて郵便局へ。
まず聞いたこと。小包用の宛名の用紙はどこかと。斜め上の答えが返ってきた。
「そんなもんないわよ」
もともと会社で見つけた空き箱。会社の住所がラベルにでかでかと印刷されてる。そこにできるだけ多くの網線を入れてボールペンで箱に住所を書く。ってか、持ち逃げされるのか知らんが、窓口にはボールペンすらなかったので自前。
こちらの郵便局、平和な日本にお住まいの方には想像もつかないかもしれないですが、窓口のお姉さんは強盗対策なのか分厚いガラスの向こう側にいる。小さな箱を渡すためには夜間金庫のようなハッチを経由して受け渡しをすることになる。意味不明にものものしい。そして、お姉さんにハッチを介して箱を渡す。
まあ、図々しいことは自覚している。でも、お姉さんにお願いした。お願いせざるを得なかった。
「申し訳ないんだけど、テープで封してもらえませんかね」
会社で箱を封するテープが見つからなかったのよ。それに対して、さらに斜め上の答えが返ってきた。
「テープなんてないわ」
…いえ、そこ、お姉さんからは影になってるかもしれませんが、私の側からはガラスの向こうに透明な極太テープがよく見えてるんですがね。そう言うと
「ないわよ」
なんか前にもあったなあ。店で値段が違うことを指摘したら、店員さんに
という仕事に対する矜持のかけらもないことを言われたことが。アイルランドに10年以上住んで学んだことは、その手の人と言い争いなどをするだけ無駄。はいはいと引き下がる。それにしても”I’m just standing here”って10年以上経ってふっと思い出す思わぬパワーワードだわ。
まあ、なんとか郵送料として11ユーロほどドブに捨て…いや、バス代まで考えるとそれ以上だな…そこからまた10分以上歩き、バスに乗り、滞在先に戻る。いやはや車ってあると便利だわ。
その夜、私を発狂させるSMSがエアリンガスから届く。
(超意訳)フライトが混雑してるから、荷物を預けてくれてもいいよ。5ユーロだよ。
ねえ、ナメてます?そういうお願いをするのなら、「無料でいいので預け入れにご協力お願いします」でしょ。お気の毒にもRyanairとの仁義なき20年戦争でそういうまともな感覚すらもはやお忘れなんですかね。それを言うに事欠いて、おためごかしに「保安検査での手間が省けますよ」とはふざけるにも程がある。せめてあと一日はやく書いてこいや(←これは完全に個人の事情)。まあ、これだけは言わせてくれ。
…郵便局に行った苦労を返せ。
ともあれ、翌朝の5時過ぎにバスに乗り(注:そんな時間にダブリンバスは運行されていません。別の会社のバスです)、午前6時前にダブリン空港ターミナル2に到着。…って最後にターミナル2を使ったのいつでしたっけね。基本的にターミナル2はエアリンガスと一部のアメリカや中東などへの長距離線専用といった趣のターミナルなので、私がお世話になることはほとんどないんですよねえ。
ちなみに出発時刻は6時50分。小一時間しかない(しかも、6時50分は出発時刻なので、この時刻に搭乗口に行ってもだめな)ので保安検査に手間取ると乗り遅れる可能性がある。所要20分と書いてあったのでなら間に合うなと撮影しようとしたら17分に変わった。実際15分ちょいで通過できたので正しい表示だったと思う。とりあえず予定よりも早く終わったので時間が余ってしまった。
かくして、搭乗まであと20分ほど時間がある。さて、軽く朝ごはんでも食べようかと思ったが、どこもかしこも長蛇の列。朝の6時からなんでバーガーキングにまで行列ができているのか私にはさっぱり理解できなかったが、とりあえずお腹も空いてなく却下。
ええっと、搭乗口は301…301…301…ってええ、それ、ターミナル1じゃん。
ちなみにどこぞのRyanairと違い、座席は前日に無料で非常口や機体前部などを除いた「一般席」の中から自由に選ぶことができた。適当に通路側の席を選ぶ。
機内はお約束どおり完全な詰込仕様。足元の狭さもRyanairと変わらない。なんだけど、前の席の圧迫感が恐れていたほどでもなかった。前の席のアホタレがこんだけ狭い席なのにリクライニングを倒してきても意外と平気。その謎は着陸前に解けた。フライトアテンダントさんが
「座席の背もたれを元の位置にお戻しください」
と言ってきたのだ。…え?倒れてたの?搭乗したときから倒れていたらしくまったく気がつきませんでした。まあ、一つ言えることは、短距離線、ことシートピッチがひどい会社で私は座席の背もたれを倒したりしません。その点では最初から倒れない(「仕様です」と言ってのけると思われる)クズのRyanairに逆に清々しさを感じたり。
エアリンガスの名誉のために申し添えますがフライトは定時に運行され、無事にハンブルまで送り届けてくださいました。その意味ではなんの不満もございません。
ドイツに戻り日曜日を挟んで月曜日の朝。ピンポーンとドアベルが鳴る。ドアを開けるといつもの郵便局のおばちゃんが例の箱を持って立っていた。
「航空郵便」のシールで封をしてくれていました。ねえねえ、これ、笑うところですか?感謝するところですか?まあ、無事に着いたんだし文句は言うまい。