【平成最後の日本帰省5】重岡駅。ついでに勝手に大分の海の幸を褒めちぎる


朝の4時に起きて、午前6時18分発の始発かつ終電の延岡行き各駅停車に乗り、佐伯駅から早朝の宗太郎駅へやってきた…というのが前回のお話でした。

 

11月の終わり、南国九州とはいえ山あいの宗太郎峠は寒かったです。放射冷却現象だかなんだか知りませんがこの時の気温はマイナス二度だったらしい。

 

このように「気温 -2 」と「  凍結注意  」が交互に表示されてました。

 

08:00 宗太郎駅近所の「撮り鉄スポット」

 

赤塚さんの気が済んだところで、さて、佐伯観光にでも参りますか。細かいことが気になる右京さんタイプの人のために書いておくと、宗太郎駅も佐伯市内なんですが、市町村合併前は大野郡宇目町という地目だったのです。

 

お昼ご飯の予約までまだ時間はある。正直何をするかを深くは考えてなかった。前回行った鶴見半島なんかもいいかもだし、まあ、何かしらやることはあるでしょ…くらいにしか考えてなかったのだが、ここで高萩さんが変なことを言い出す。

 

「とっておきの撮り鉄スポットがあるんですよ」

 

なぜ知り合って数分のはずの赤塚さんのツボを押さえているのか…と思ったのだが、それ以前に高萩さん、あなたその筋に造詣のあるお方なんですか?

 

そんな私の素朴な疑問をよそに、高萩さんは宗太郎駅から佐伯方向に数分車を走らせる。

 

 

…ここ?

 

Google Mapでぐりぐりしたい人は上をご参照ください。ネットの海がいかに広うとも、この場所を紹介したサイトは未だないんじゃないかと思う。そういう意味では、地元民とはいえ高萩さん、只者じゃない。

 

誰がどう見てもなにもない国道10号線上のちょっと長めの直線。前を行く大型車の運転手さんがとってもいい人なら道を譲ってくれそうないい見通しの良い直線。ここがどうしたってのよ…と言われるままにフェンスの下を見ると…

 

 

…なるほど。日豊線と直交してる。ここで列車が来るのを待とう…と。

 

別にいいんだけどさ、すでに書いたとおり、ここ、普通列車は一日に上下合わせて3本しか通らない超過疎区間。特急電車はといえば、上下線とも毎時1本程度走っている。つまり30分に一度程度しか列車は来ない。正確な時刻表などないから佐伯駅と延岡駅の出発通過時刻しかわからない。

 

そんな悪条件下、なんと2時間もここに滞在した。なにせ高萩さんが変なことを言うから。

 

「この時間帯にいつも貨物列車が走っている。それがもうすぐ来る(と思う)」

 

…だからっていつ来るかわからない列車を待ちますかね。何が楽しいんだか。

 

 

一番最初にやってきたのは大分行きにちりん4号大分行き。783系…とかいう型式名は知られてなくてもハイパーサルーンという愛称はおそらく九州内ではよく知られている。国鉄から分割民営化されて最初の電車で、当時の国鉄のオンボロ485系に比べたらとんでもなく輝いていた電車で当時大きな話題になりました。それって思えば昭和から平成に移ろう頃のお話なのよねん。平成が終わろうとしている今日び、この電車は多分JRの九州内でも最古参の電車。何が言いたいかって、やっぱりこの区間はそんなおじいちゃん電車が走るような冷遇された区間なんだなって。

 

 

逆方向にやってきたのは私が朝乗ったのと同じ型(787系)の電車。ただし、特急。まあ、こんなにゆっくり走っていたら特急も各駅停車も所要時間はさほど変わらないだろうなと感じる。

 

それにしてもここ、国道10号線という東九州の大幹線道路なのだが、同じ国道10号線でもここから80キロほど北にある別府と大分の間は一日の交通量が7万台近くあるのに、ここはホントに忘れた頃に車が通る程度。幹線国道の道端に立ってたらそれこそ大迷惑になりそうだが…ホントに閑散としていまして。

 

(皆様のブラウザ上で地図がどのように表示されるか定かではないですが、左が一般道326号線経由で海沿いが東九州道経由。有料道路を使ってもあまり時間短縮ができないとなると、私なら一般道経由にします)。

 

数年前に佐伯と延岡の間に無料の高速道路(新直轄方式とかいうらしいですが)ができたせいで交通量が激減したことは想像に難くない。でも、それ以前に東九州九州自動車道が開通する前から大分=延岡間の移動には国道326号線という短絡路があり、90年代にバイパスが開通したそちらは実に快適でして(実際なにもない山奥では誰も60キロ制限など守っていない印象)こちら(国道10号線)の交通量はもともと少なかったとは思われる。

 

ここに滞在していたら、やはり大迷惑で通報されたのか、やってきたのはパトカー。こりゃ人生初の職務質問来ましたか…と思ったが…

 

 

…マイクで注意されることもなく通過。まあ、駐車違反でもなけりゃ、道端に立ってちゃいけないって法律もないんだからなんら悪いことはしていないのだが。嘘は書けないから正直に書いとく。なんだかんだでくだらないことを喋ったり、いつくるかさっぱりわからない電車を待ったり楽しかったです。

 

10:00 宗太郎駅のお隣「重岡駅」

 

お次に向かったは、宗太郎駅から佐伯方面に向かうと最初の駅になる重岡駅。

 

この宗太郎峠の区間の国道10号線、峠というほど勾配やカーブがきついわけではなく、しかも交差する道路もなく、ずっと緩やかな坂とカーブが続く感じ。そんな道なのに50キロ制限のかかる理不尽さ。

 

 

そんな中で、重岡駅に到着する直前にトンネルを含め500メートルほどの直線区間があるのだが…もう言いたいことはおわかりですよね。そう、こんなイノシシと衝突する以外の事故原因は考えられないような安全な場所でスピード取締りをするセコい職務に忠実な大分県警。トンネルの出口のところにカメラを仕掛け、数百メートル先の駅前広場でサイン会という段取り。自慢していいなら、私が運転していたら確実に検挙されてた。だが安全運転の高萩さん、こんな理不尽な制限速度もきっちり(検挙されない程度には)守っており、セーフ。

 

検挙されたお気の毒なおいちゃん(大分または九州方言=おじさん)。軽微な速度超過だったことを祈る。

 

駅の探索をしていたら早速検挙されるお気の毒な運転手さん。お国への寄付金(罰金)は21000円といったところか(知らんけど)。左に見えるバスがサイン会会場。

 

重岡駅には駅のイラストが入ってますね(後述)。

 

下り。宗太郎・延岡方面。

 

上り。上の写真位置より振り返り佐伯方向を撮影。

 

ホームは2面3線。ホームはおそらく2両分くらいが嵩上げされている。跨線橋を見る限り、こちらもバリアフリーとは無縁の駅。まあ、一日平均乗車人員16人…とかならそうだろうなという気がする。

 

 

 

他に引き込み線になにかの保線車両が留置してある。オーストリア製。まさか大分の片田舎でドイツ語を見るとは思わなかったよ。

 

それにしても、この駅の「名所案内」がイケてるのだ。

 

 

南西32キロとか西34キロとかどう見てもこの駅からの名所案内に見えない。「徒歩16キロ 4時間」…ってなんかの冗談ですか。

 

まあ、ここまで書くからには調べてみました。重岡駅から西の三重町駅(豊肥線)方面に向かうバスってのがこの駅始発で平日に5本もあるんですよ。それに乗って10キロほど西の「上小野市」というバス停で降ります(所要20分)。ここから傾山の西山登山口(払鳥屋というらしいです)まで徒歩で17キロ…4時間コースですね。なお、あくまで「登山口」までですので。そこから山頂までさらに頑張ってくださいね…というお話。というわけで、「西山登山口までバス50分。徒歩16キロ」は、徒歩の距離は正しそうなものの、バス50分の根拠がわかりません。たぶんWikiに載っている廃止路線とにらめっこしたら答えは出てきそうですが。

 

 

駅名標にあった駅にちなんだイラストに注目すると…ああ、唄げんか大橋ですか…ってマテコラ、唄げんか大橋って、件の大分=延岡の短絡路国道326号線バイパスにある橋じゃねえか。土地勘のない方のために平たく説明すると…単純に、重岡駅から西に17キロも離れてます。イナカの距離感覚はなかなかすごいものがあります。

 

話を駅に戻しましょう。

 

赤塚さん撮影。バスまで押さえてあるあたり、抜かりがない。「大野竹田バス」という大分バスから分社化された会社らしいです。

 

この駅、実は宗太郎に比べて遥かに恵まれた駅なのです。まず、上記の通り廃止の憂き目にあった路線(佐伯市内方面)もあるものの、未だにバスの発着が残っている。のみならず、おそらく通学需要なんでしょうけど佐伯方面への区間運行の電車が運行されてまして、時刻表がこんなににぎやかなんです。

 

 

…はい、とりあえず一日1便しかない末期状態の延岡方面は無視して、佐伯方面には一日3本の運行があります。佐伯方面から到着する電車も一日3本。つまり延岡まで運行される件の普通列車以外の2本はここが終点。これならかろうじて通勤通学に使えますね。しかも、夕方の便は、佐伯を超えて(ここに比べたら)メトロポリタン大分駅行きなのです。3時間近くかかるけどね。

 

ちなみに宗太郎駅よりここ重岡まで駅間が7キロ近くあるのですが、宗太郎駅で15分ほどあった延岡方面からと佐伯方面からの始発列車のここでの時間差はゼロ…この駅でどちらも6:47に発車しすれ違う設定のようです。しかも、件の三重町駅方面のバスは6:50発という狙ったのでないなら奇跡的な接続。まあ、逆にバスから電車への接続がまったく考慮されていないというすごいオチはあるんですがね。

 

というわけで、宗太郎の北、大分県内は重岡駅までの区間電車があるので状況は宗太郎駅より遥かにマシです(それでも一日片道3本という厳しい状況ですが)。それに対し、宗太郎駅より南側の延岡までの宮崎県内の駅、すなわち、市棚 – 北川 – 日向長井 – 北延岡 の各駅は宗太郎と同じ状況、つまり上り2本、下り1本の普通列車の運行しかないという状態。この一日あたりの平均乗車人員は(Wikiの2015年平均乗車人員による)…

 

(重岡 16)

宗太郎 0.39

市棚 13

北川 24

日向長井 3

北延岡 4

 

…という状態でして、一日各方向4本の運行のあった2015年ですらこの状況ですから、2018年の3月のダイヤ改正でさらに列車の運行本数が激減したことからこの数字がさらに悪化したことは想像に難くない。こうなると、もはやこれらの駅の存続が危ぶまれる状況なのかも。ちなみに延岡駅から北川駅近くの熊川というバス停までバスが平日一日5本出ているという事実からも、仮にそうなったとしてもあまり驚かない気がします。

 

10:55 福寿司

 

途中の直川直見上岡の各駅をすっ飛ばして戻ってきたのは佐伯市内。市役所のすぐ裏にある福寿司というお寿司屋さんへ。午前11時というお昼にはちょっと早い時間に予約をしていたのです。なぜ午前11時かというと、ほかの時間帯に予約が取れなかったから。しかも午前11時半から別の予約が入っているから開店と同時に入店し、30分で終わらせる…というものすごい条件。

 

…と思ったんだけど、寿司屋で30分ってさほど大変だとは思えない。もともと寿司って江戸時代のファーストフードだったんでしょ(どこで仕入れたのかわからない謎のうんちく話)。

 

佐伯の寿司って全国的にどれくらい有名かさっぱりわからないけど…いや、たぶんあまり知られていない部類の話なんじゃないかな…市内にはけっこうな数のお寿司屋さんがあります。私は地元民の高萩さんが勧めるから…という理由だけでこちらを選んだのですが、なんとミシェランガイドにも載っているようなお店らしいです。いや、私にはそんなミーハー趣味はないのでミシェラン云々のお店に入ったのは人生初かも。

 

 

というわけで、カウンターに3人並んで仲良くお寿司をいただきました。

 

 

 

写真掲載の許可を頂いていないのでぼかしが入ってますが大将です。ボカシの入っていない写真はGoogleに普通に載ってたりしますけど。この大将との会話が楽しかった。まあ、(「自分、不器用ですから」とかいう役をやっている)高倉健さんに寿司屋の大将は務まらない気はするので、大将の会話の能力はある程度必要な気はする。

 

美味しそうなネタがいっぱい。

 

残念ながらあんまり写真はないんですよ。カウンターで件の大将がけっこう気さくに話しかけてくださったのだが、その中のうんちく話の中に「スマホの画面はトイレ並みに汚い」というのが出てきましてなんか撮影しづらかったのです。ま、小心者と言われたら返す言葉もござんせん。

 

 

私が寿司屋と言われてぱっと思いつくのはがってん寿司という回転寿司屋さんですから、聞くだけ無駄なのですが、こんなふうにカウンターで水が流れていてそこで手を洗えるって回らないお寿司屋さんではよくあることなんですかね。少なくとも私は初めて見ました。まあ、スマホ触ってもここで手を綺麗にできるんだいっ…という話のネタにはなりましたが。

 

 

ところで、大分のお醤油、こと刺身醤油は濃くてやや甘いです。なので、薄口醤油に慣れている方には違和感があるようですが、お寿司に合うんだわ。下の方に出てくる臼杵市のフンドーキン醤油が大分では最も有名(と思われるの)ですが、江戸時代の天領日田には原次郎左衛門ほか醤油蔵がいくつかあります。

 

【勝手に宣伝】かぼすブリ

 

今勝手に思いついて決めたんですが、今回のまだ何回か続くと思われる大分のお話の副題として、大分を臆面もなく推すことにします。今回赤塚さんや水戸さんの、つまり大分に縁もゆかりもない人たちの目を通して見た大分は、改めて本当にいいところです。もしこれを読んでいるあなたが大分に足を運んだことがないとおっしゃるならぜひ大分までお運びいただきたいという思いを込めてちょっと寄り道。

 

この佐伯の寿司を満喫した前日に佐伯市と大分市の間にある臼杵市の割烹みつごさんにうちの両親とお邪魔して、かぼすブリづくし料理を頂いてきました。みつごさんは基本ふぐ料理屋さんなんですが、他にもいろんなコース料理を用意してくれます。かぼすブリはホームページを見る限り、ふぐ、関あじ、関サバ…ときてその下の「その他大勢」のような扱いですが、かぼすブリ、侮れないんです。

 

ご存じない方のために、そもそもかぼすブリって何よ?ってところから始めないといけないですよね。まあ、まともな説明はまともなサイトに任せるとして、誰かが思ったんでしょうね。「養殖のブリに大分の特産品のかぼすを食べさせたら面白かろう」とか。まあ、そんな単純な話じゃないんでしょうが、養殖のブリにかぼすを食べさせたら、魚臭くないわ、見た目もいいわ…こりゃいける…となったと(勝手に妄想)。

 

確かに、全国区の知名度を誇る関あじ関サバに比べればその地味さは否定のしようもありませんが、おいしいんだぞっ。この養殖魚。見方を変えれば、関あじ、関サバに加え、ふぐ、さらには只今絶賛売出し中のかぼすブリまである大分は美味しい魚の宝庫である…という言い方もできる。その他、スーパーボランティアなどとマスコミに持ち上げられている尾畠春夫さんの家の近所には城下かれいという名物もあるし。まあ、とりあえず、かぼすブリの実力に刮目せよっ…と煽ってみよう。

 

 

かぼすブリのカルパッチョに、ブリしゃぶに、りゅうきゅうに。なに?りゅうきゅうを知らない?これも大分名物なんだぞ。基本ゴマダレのタレに漬け込んだ刺し身…なんだけど、これがうまいんだ。ごはんの上に乗っけて食べるのもあり。

 

 

焼き物。

 

 

あられ揚げ。外はお湯の中に入ってふやけつつもカリリとしてて美味しいんだっ。

 

 

握り寿司。このブリだけで勝負しようという潔さがいい。

 

 

ブリの煮物。個人的に魚の煮物って好きでして。ことブリはその中でも疑いの余地なくトップバッター。よく味の染み込んだ大根といい、もうよくぞ日本人に生まれたと思うわ(とか言いつつドイツに住んでるアホタレでごめんなさい)。

 

 

お茶漬け。もういい加減お腹いっぱいなのに入っちゃう。

 

 

デザートとコーヒー。

 

ごめん。こういう下衆な話をするのはどうかと思うけどさ、大分を推すためにあえて言わせてほしい。このブリづくし、割烹の個室でこれだけ頂いて、大分ではこれでぽっきし5000円(税別・昼夜同じ)。お値段以上とか言ってるどこかのインテリア屋さんはこれを見て考え直してほしい。これこそお値段以上です。

 

実務的なお話として、みつごさんでのかぼすブリ料理、かぼすブリを仕入れなければいけないので要予約です。連休中ということもあり混んでおり、お部屋の予約も1週間前に電話した際には「最後のひと部屋が空いてました」という感じでしたので、他の料理にせよ予約をされたほうがいいと思います。なお、予約の際には「ikikou.comを見たよ」と言ってくだされば、漏れなく「はぁ?」と言ってくださいます(たぶん)。

 

…というわけで、寄り道をしたせいもあって、2回分、しかも各回いつもの倍の文量をしてまだ午前中というすごい状態ながら、次回、佐伯駅から再開です。