なんかタイトルからして大いにしでかした気がしますが、本日よりクレタ島の旅行記です。
10月20日(土)晴れ
朝の3時にのそのそと起きる嫁と私。…というか、「寝坊恐怖症」のある私、こんな変な時間に起きなければいけないときは必ずと言っていいほど眠れなくなる。殊勝にも午後9時頃には寝た…が1時頃に時刻が気になって起きてしまい、それっきり。
朝の6時40分のEurowingsのハニア行きに間に合うために午前4時前には家を出る二人。ドイツの片田舎の某村、夜の12時を過ぎると街灯すら消えてしまうからあたりは真っ暗。そのかわり、満天の星を眺めることができる。
午前5時。空港内のバスで移動になる安い駐車場(第七駐車場)に到着。シャトルバス乗り場にバスはいない。よく見ると、「シャトルバスに乗る人はこのベルを鳴らしてね」と書いてある。そのボタンを押すと明らかに無線で「すぐ行きまーす」と返事。数分後にバンがやってきた。
チェックインはチャーター便やLCCがいつも使っているターミナルCだと思いこんでいたのだが、実はルフトハンザほかスターアライアンス各社が御用達のターミナルA…つまりは私にとって通い慣れた場所。
まだチェックインをしていなかったのでとりあえずは搭乗手続きカウンターへ。前日にオンラインチェックインをしておきたかったのだが、なぜか旅行代理店の係の人が私達に予約コードをくれなかったのだ。「この便はチャーターですから」というのが理由だったが…いや、チャーターじゃないと思うんですがね。
EW3674便はなんと週にたった一便しか運行されない。しかも、夏季だけの運行だから来週の便が今年の最終便。これ、万一にもキャンセルになったらどーなるんだろ。
ユーロウィングス社はルフトハンザの子会社のLCC。つまりはANAとピーチみたいな関係。なので、ルフトハンザとルフトハンザと仲のいいごく一部の航空会社のマイレージ上級会員はそれなりに取り扱われるらしいが、私のような「Bクラスの」スターアライアンスのマイレージ会員にはなんの便益もなければマイルも貯まらない。ラウンジに行けるわけでもなく待合室の固く冷たい椅子にぼーっと座る羽目に。
6時20分過ぎ、搭乗開始。そこにあったはEurowingsではなくGermanwingsのA319。はい、あの副操縦士が機長を操縦室から締め出して150人近い人を道連れに自殺を図ったあの会社ですね。
あの事故のせいではないと思うのですが、GermanwingsはEurowingsのウェットリースオペレーターになっており、今回のように、Eurowingsのヒコーキを予約したのに運行はGermanwingsになることがあるらしい。ピーチのヒコーキを予約したらバニラが運行だった…そんな感じです。そして、バニラエア同様ジャーマンウィングスも消滅することが決定しているようです。ただ、名前が似てるから書いていてもごっちゃになります。
GermanwingsのA319は誰がどう見ても親会社ルフトハンザのお下がり品。ミレニアムの頃に導入されたヒコーキは途中でルフトハンザと同じ薄型シートに入れ替えられたようだが見るからにくたびれ果てている。
あてがわれた席は17DとE(通路側と中央)。翼のやや後ろの席なのだが…狭い。ルフトハンザと同じ座席ながらシートピッチは3インチも切り詰められている。これにより、ルフトハンザのA319に比べて2列の座席を捻出している。…のだが、ルフトハンザの新しいシート配列では、シートピッチを切り詰めることなくGermanwingsと同じ24列を捻出している(13列は欠番)。どんな魔法を使ったのかといえば、最後部のドア前にあったトイレ2箇所をドアの後ろ、つまりギャレーの部分に押し込んだのだ。狭いトイレはますます狭くなったのだが、それにより12席分を捻出できたことも事実。
まあいいや、そんなマニア話は。何が言いたいかって、これが言いたい。
狭い。
非常口座席までの10列はシートピッチがルフトハンザと同じ32インチ設定なのに、それ以降は29インチに切り詰められている。この7.5センチの差が恐ろしくでかいのだ。こと3時間以上もかかる飛行では。
ふと思うと、私がいつも使う飛行ルート。たいがい2時間以内の短いものなのよね。そうでなければ大陸間フライト。こんな3時間超の飛行を29インチの極狭シートで過ごした経験はない気がする。幸い3席を二人で占有できたので通路際に嫁を放置し私は窓際の席へ。肘掛けを上げ、お行儀が良いとはお世辞にも言えないが、片足をあぐらをかいたような形にしたりして3時間やり過ごす。辛かった。
苦行の3時間が過ぎ、午前10時40分(ギリシャにはヨーロッパ中央時間より+1時間の時差がある)、クレタ島の第二の空港ハニア空港に到着。定刻よりも15分早着。
クレタ島の地理を説明するのに一番わかり易い方法は、ここを四国と思ってもらうこと(これ、ホリデー計画編に書いた気がするけど、まあおさらいということで)。
四国のうち、南半分のカツオ県と阿波おどり県を海の底に沈めれば(広さ的には)クレタ島の出来上がり。クレタ島の一番の大都市イラクリオンは高松市(より正確に言えば坂出市あたりかもしれないがまあこんな雑な説明に正確さを求めないで)。ヘラクリオンには空港があるのだが、そちらではなくあえてホテルに近いクレタ島第二の都市ハニア(ちょうど松山くらいの位置という理解でいいです)の空港を選んだ。これは正解だった。後述しますが、クレタ島の交通事情は四国よりもはるかにはるかに悪い。実は鉄道すら存在しないという。
このハニア空港はまだできたばかりらしく、きれい。…なのだが、変。何が変って搭乗橋が設置されておらず、たとえターミナルビルの真ん前にヒコーキが到着してもバスでターミナルビルに移動となる。かくして、私達が乗ったヒコーキもダブリン空港なら間違いなく歩かされる距離をバスでの移動になった。
3時間もヒコーキに乗ったのに、未だに私達はEU域内。EUって思いがけずでかいなと実感。つまりパスポートコントロールも何もなく荷物の受け取り所へ。しばらく待たされた後にスーツケースを受け取りレンタカー会社のカウンターへ。
レンタカー会社のカウンターの女性。私と予約票を交互に見比べ申し訳なさそうに
「(オートマではない)MT車なんですけど…」
とおっしゃる。ああ、過去にオートマ車しか運転できない日本人とトラブルになったんだろうなあ。ご心配なく、私はギア車をフツーに運転できます。というか自分の車はギア車です。
1週間200ユーロ以下の格安料金で下から2番めのランクの車を選んだのだが、そこにあったのはシトロエンのC3。よくわからん車にあたったな。
この車、私のそらまめ号(日産ノート、Dig-S=つまりはe-POWERじゃないやつ)より馬力があるような気がしたが、よく考えたら、私はいつもケチだからエコモードを使ってるので単純比較はできない。じゃあ気に入ったかといえば、失格。買いません。問題はこのフロントマスクにある。
なんと説明したらわかっていただけるか、フロントが流線型じゃなく突然垂直方向に落ち込んでいるように見えませんか?これが運転手目線で意味するところは…見切れが悪いのだ。こと坂道のてっぺんとかで前が見えなくなるので思わず体を浮かすようにして前を見ようとしてしまう。これは運転しづらい。
いきなり道を間違えつつも小一時間でハニア郊外のホテルに到着。
ホテルは5つ星。海の見える部屋を予約…。などと書くととんでもない金持ちの自慢話のように響くかもしれないけどちょっと待たれよ。宿代はたぶんドーミーイン程度。所詮はパッケージツアーだし、金持ちはLCCの狭いシートで3時間耐えたりしない。
そもそもこのホテルがTUIの自前の物件らしい。つまり、JALパックが提携ホテルに手数料を払うくらいなら自分でホテル建てちゃえ…という感じで建てたホテル(だと思う)。
ホテルに着くと、まずはチェックイン…なのだが、さすがリゾートの5つ星ホテル。海の見えるテラスに通されて、そこでスパークリングワインとおしぼりのサービスを受けつつ記帳。ただし、運転する予定のあった私はスパークリングワインには口をつけた程度でしたが。
ここで登場したのが顧客マネージャーなる肩書を持つドイツ人のおじさん。このおじさんがまあ、やたら大げさな身振り手振りで話すのだ。嫁が数日後に彼につけたあだ名はミスター・ビーン。なるほど。顔は似てないけど身振り手振りは似てるわ。
案内された部屋は…広いし文句のつけようがない。ベッドの上のバスローブには赤いバラが挿してあるのがなんとも心憎い…のだがひところにとどまるということができない貧乏性の私(とそれにつきあわされる嫁)は部屋のワードローブの中にスーツケースの中身を移し替えるとそのままハニア市内へ。この時点で午後1時を過ぎており、朝ごはんすら食べていない私達はお腹が空いたのです。…ところで嫁よ、いつの間にかほとんどのハンガーとワードローブの使いやすい部分を独り占めしやがって。
ハニアの旧市街地には車で立ち入ることができません。いいことです。なので、ちょっと離れた海沿いの駐車場に車を停め、市内へ。
この日の気温は24度とか。汗ばむことはないしまさに適温。快適。
旧市街の入口にあったレストランに何も考えずに飛び込む。いや、いちおう見た。いかにも観光客向けのトラップじゃなさそうなのでままよと。
私が食べたのは海老のパスタ…。
…パスタ…なんですよ。これ。
かく言う私も「あれ、ライスって書いてあったっけな?またよく読まないで注文したのかな」と思ったのだが、これ、パスタ。もちろん日本のお米のように粘っこくないし、長粒米とも違う。パスタです。味は…がっかりレベル。嫁のサラダもしかり。
まあ、調べもしないで飛び込みで入った私達が悪い。少なくともお腹は膨れたのだから文句を言わずに市内観光へ出ましょう。
市内の散歩をはじめてすぐに気がついたこと。猫が多い。しかも、やせ細った性格の悪そうな野良猫…なんてのは全く存在せずに、どの猫もノラなのか飼い猫なのかは知らんが栄養が行き届いている感じで、のんびり昼寝している。ああ、こりゃ岩合光昭さんじゃなくても猫の写真集を出したくなるな。
そして飛び込みで入る店の店員さんも、裏で何を考えているかまでは定かではないが親切丁寧。ある程度の英語も話す。なんとなくギリシャはイタリア(あるいは日本)同様英語が通じづらいような印象があったが、この旅行の中で言葉で苦労した場面はまったくなかった。
こうして旧市街のお店を冷やかしつつ港へ到着。
まあ、右を見ても左を見ても見渡す限り見事にレストランとカフェしかない。一部のレストランではしつこくはないものの客引き行為をしている。ああ、どうせ大して美味しくないお昼を食べるくらいならこのいかにも観光客向けの眺めの良いレストランで食べても良かったな。
そんなレストランを横目に向かったのは埠頭の先端にある灯台。はい、末端がある限り末端に行かないと気が済まない人ですから。選択の余地はないのです。
こうして港を反対側から見ると、あれ、どこかで見たことがある風景な気がしてきた。そうだ、マルタの首都バレッタだ。いや、もしかしたら南欧の何処かにより似た街があるのかもしれないけど、私の少ない経験から導き出された答えはバレッタ。
このあとホテルに戻り、海の向こうに沈む夕陽を眺めながらベランダでワインをいただ…こうとしたのだが、残念なことに部屋そのものは確かに西向きだったのだが、夕陽は海の向こうではなく向かいの部屋の向こうに消えていったのでした。そもそもジャグジー付きの部屋を予約しようとしたのだが、決めかねているうちにその部屋が予約されてしまったのだ。
夕飯。今回のパッケージツアーは往復航空券+ホテルまでのバス+ホテルでの二食付きだったのだが、レンタカーを借りた私たちはバスは当然使わず。
夕飯は、個人的に嫌いなビュッフェスタイル。確かにいろんな種類の食事が容易されているのだが、どうも「元を取らなければ」というセコい発想に囚われるさもしい私にとってはビュッフェスタイルは苦行でしかない。
というわけで、翌日に続く。さて、私はもうすぐ日本に帰省するんですが、それまでに「書き溜め」できるのだろうか…。実はこれだってヒコーキの中で慌てて書いたんだし…。