さて、1ヶ月あまり続けてきましたイノトランスシリーズもオチもまとめもなく今回でおしまいです。実はすでにクレタ島に行ってきたとか、来月は日本に帰省するとかネタになりそうなことがゴロゴロしているのでこのへんでまとめておこうという事情がありまして。というわけで、最終回、参ります。
エントリーナンバー12。RRX Rhein-Ruhr-Express
総合評価(評価不能)
まず最初にお断りしておかないといけないことは、この車両の写真は少ないです。というのも、この車両を見たのは一日目にバスを見に行く前になんとなく駆け足で見ちゃったんですよね。もったいないことしました。
Rhein-Ruhr-Express(リンク先ドイツ語Wiki)…その名の通り、ライン川とルール川の流域を結ぶ急行列車…らしいですが、このあたりの土地勘がないのでよくわかりません。日本人が多く住むデュッセルドルフあたりがこの地域に含まれるので、あるいは現地に在住の日本人の方はこの列車のことをご存知かもしれません。とりあえず、シーメンズ社製の新型車両です。
この車両の特徴はですね、中間車は2階建て、先頭車は1階建てになってます。
こちらが2階建て車両の2階部分です。
…というわけで、情報が少なすぎて評価不能です。ごめんなさい。
ごく正直に書いておくと、下を含めて計13台の車両についてあーでもないこーでもないと書いてますが、展示されていた車両はもっとたくさんあります。しかし、あとで写真整理をしていて上のようにぜんぜん資料写真が足りないものが多数。見苦しい言い訳としては、初日に見に行ったときに人が多かったのであまり写真を撮影していなかったのです。もし2020年にまた現地コーディネーターのような顔をしてイノトランスに参加する機会があれば、今度はまんべんなく撮影してこようと思います。
お次は最後の車両です。
エントリーナンバー12。FLIRT Traverso
総合評価★★★★
この列車、スイスのドイツ(さらにはオーストリア)国境にほど近いSt Gallenとスイスのちょうど中心辺りになるLuzern間を結ぶ列車です。150キロを2時間ほどで結ぶようです。
どこぞの幼稚園に入り込んでしまったような印象を受けますが、あながち間違ってません。こちら、お子様向け車両らしいです。
側面の壁に目が行きましたが、赤いシートに黒っぽいヘッドレストは個人的には好きです。
テーブルつきの席です。すごろくはついてませんがなにやら賑やかなテーブルです。思えばモケットは通常席とかわりません。
一つ上の運転席真後ろの壁面の拡大写真です。このイラストにこの列車のメーカーが売り込みたかったことが詰め込まれている気がします。すなわち、車椅子や自転車でも難なく乗車できます…と。
振り返ると車内がかなり遠くかなたまで見渡せます。
もはやお約束どおりと言えるのですが、この列車も連結台車を利用してますので、連結部分の床は高くなってます。なので、一部で座席の背もたれが目立つ部分があります。
バリアフリーではない通常のトイレ。そういえば他の車両で紹介してなかったなと…。別に特筆するようなことでもないのでここまでスルーしてましたが。他の車両のも同じようなものです。列車のトイレってもはや完成形に近づいていて他に改善のしようがないのかもしれません。
スキー置き場もついているあたりが土地柄を感じさせますね。
こちら、自販機コーナーと言うべきか、セルフカフェとでも呼ぶべきか。下の写真の自販機ではクッキーからコーラ、ビールにワインまで揃ってます。たぶんですが、ビールにはややぬるめの、でも赤ワインには冷たい温度設定になっているのではないかと。列車が大きく揺れたら上の段のグミが落っこちて来たり…はしないだろうなあ。
注目すべきはこのような小銭稼ぎの自販機にすらクレジットカードの読み取り機能がついていることでしょうか。下段のアルコール(とレッドブル)飲料を除き価格は2.00って書いてあるんですが、これ、スイスフラン。ご存知の通りスイスはEU加盟の各国に囲まれてますので、私のようにユーロしか持ってない!とかいう人が乗っている可能性は高いです。そんな時クレジットカードならスイスフランを持っていないという面倒は一気に解決できるわけで。特にコンタクトレスのカードならピッとかざすだけで精算が済んでしまうのだから便利です。キャッシュレス化はこんなところからも進んでいくんだろうなと実感します。
車掌室も開放されていたのでもちろん入ります。日本の特急電車や新幹線にも設置されてますが、こんなところに堂々と入れるのはイノトランス様様と言えます。
運転席についているのと同じ(と思われる)おそらく無線機なんでしょうね…が設置されてます。その下には電源ソケットが3つと、なぜかUSBコネクタが2つ。なんでこんなもんがついているのやら…というのは数行下を読むとわかります。
その先に進むと、突然シートのモケットの色が変わりました。こちら、一等車です。落ち着いた感じで好きかも。
もう何度でも臆面もなく書きますが、この座席と窓割りが一致しているのは見ていて気持ちがいい。そして、1-2の座席配列はカップルでの利用なんかにはいいでしょうね。それにしてもヘッドレストの「1」の数字が目立ちます。私が後から書き足したような感じで浮いてますが、こういう仕様のようです。
運転席。良く言えば、運転士さんを中心に扇状に広がっていて、「俺様のコックピット」という感じでかっこいい。でも、いつもの視点で言えば、また横方向の見切れが悪い。そして、やたら気になるのが、くだんの横方向にある鏡のようなもの(上の写真の菱形の部分)。係の人がいたので聞いてみた。
「これですか?停車時に開いて後方確認用のミラーになるのです」
あとで外から確認してみたら…なるほど。停車時に車のドアミラーのような感じで後ろ方向が確認できるのね。
なんでも、このような設備は「すべてクライアント様からの意向」らしい。これを聞いて「なるほど」と思った。やたら自転車置き場が広いとか、スキー置き場があるとか、座席が通路を挟んで反対方向を向いているとか、そんなのは運行会社からの意向で決まっている可能性が高い。そう思うと、私がここしばらく書き続けてきたことはメーカーさんに言わせれば「それはクライアント様からの意向なんです」ってことも十分にありえる。…というわけで聞いてみた。
「もしかすると、この謎のUSBコネクタも、クライアントさんの意向なんですか?」
「そうです。ついでに言うと、最高速度が160キロに抑えられているのもクライアント様からの意向です」
…なるほどなぁ。
会場内で別の意味で目を引いたのがこれ。見慣れた2階建て車両。さらに落書きがされていることでさらに見慣れた感が倍増。ただ、よく見るとInnoTransと落書きされており意味不明感も。
左の方に目を移すと、この車両、実は一般車ではなく、DB Sicherheit=ドイツ国鉄セキリュティの車両。実はこれ、落書き消しの実演をしていたのだ。個人的には忌み嫌っている(だって、ドイツ国鉄の運賃が高い理由の一つだと思うもん。誰がこの落書き消しの費用を払うねん…というお話)クソグラフィーをどう消すのか興味があったが時間の関係で見届けることができなかった。
こうして金曜日の閉場時間近くまで再び屋内の会場に戻ってみると…
…すでに撤収準備中。
そう、イノトランスは4日間開催で、週末の土日は一般客に開放されるらしい。金曜日の午後遅くはもはや撤収ムード。
これはおまけなんですが、翌土曜日、このイノトランスが一般公開された日に懲りもせずに行ってきました。
私のパスは金曜日までのみ有効で、土曜日は入場料別途3ユーロ徴収されました。
屋内の見本市会場は閉鎖。もはや入れません。
屋外の実車展示も実はほとんどは外から見学するのみ。第6回で紹介したMünchen-Nürnberg-Expressも中に入ることは叶わず外観のみの展示。おじさんがドア越しに中を覗ってます。まあ、車両メーカーとしては不特定多数の人を車内に入れて、汚損や破壊などのリスクを負う価値はないと判断しているんだろうなあ。
中に入れたのはベルリンの地元民が特に関心を持っていると思われるS-Bahnの新車などごく一部のみ。中に入れるとあって大行列。いや、あとちょっと待てばフツーにベルリンで乗れるよ…とは思うのだが、それでも一刻も早く乗りたいと思うのはマニアの心理なんでしょうね。
そのかわりといえば響きはいいが、なにやらフリーマーケットが開催されていました。ただし、どう見ても昨日まで見本市に展示していた人たちとは無関係の、言ってしまえばその辺のまちなかでもやっているようなマーケット。もっと有り体に言ってしまえば、私にはガラクタの販売にしか見えなかった。草野さんの食指が動いないような印象だったし。かくして、一般公開日に行く意味はないなと正直感じました。
おまけの写真。
見本市会場内で見かけたシュミレーター。第1回で紹介した音楽館のそれに比べると素人目にもおもちゃレベル。なので、音楽館のシュミレーターにビジネスチャンスがあると考えるか、いや、彼我の差がありすぎて逆に売れんだろ…と考えるかはあなた次第。
列車の床材メーカーの展示。いつも不思議に思っていた。ダブリンバスの二階建てバスの二階の床ってどーなってんだろって。おそらくこんな感じなんだろうなあ。
列車の連結器についている端子部分。日頃は絶対に見られないものだと思う。きれいに左右対称なのはいいんだけど、これ、相当細かくて取り付けるのには最新の注意が必要じゃないかなと思いました。
というわけで、おつきあいありがとうございました。次回からはクレタ島のお話です。