おらが村にも光回線がやってくる…のか?


私の住んでいるドイツ某所。イナカです。とってもイナカです。どれくらいイナカかということはもう過去に何度も書いたような気がしますが、これは聞いたら呆れられると思う。ネットの速度。これを書くにあたって、たった今調べてみました。

 

 

…信じられますか。2018年にEUの優等生ドイツの州都50万都市のハノーファーからわずか50キロの距離にある村(…長いな)に高速インターネットが来ていないという事実。日本に比べて10年以上の遅れ…くらいの勢いでしょうか。

 

毎年村で地方議会の議員さんが政治報告会みたいな寄り合いを開くので、有権者たる嫁を送って「ネット環境のカイゼンを!」と請願させていたのですが、お答えは芳しくなかった。

 

ちょっと話はズレるけど、このときの主な議題は村外れに建設されるとかいう超高圧送電線のお話。脱原発を進めるドイツ、ドイツ北部で作られた電力を南に送るのに高圧送電線を作るんだと。それが振動や健康被害などの原因になると反対運動が起こっていてそれが中心の議題。フクシマのお話が回り回ってこんなドイツの小さな村にまで影響してるんですよねえ。なので、嫁がネット回線の話などしても反応は薄く…

 

「ドイツテレコム社が興味を示してないんですよねー」(設備投資をしても利用者がいないという意味か)

 

…確かに、階下の嫁の両親はスマホすら持ってないからネットになど無縁だし、村のジジババ世帯は大方同じようなもんなんだろうなあ。こんなところに引っ越してきた私が悪いのだが、日本的に言えば、高速ネット環境が整備されることで「テレワーク」が普及すれば、こんな人口流出が続くばかりの村には革命的なことだと思うんだけどねぇ。

 

ところが、この春になり風雲急を告げ、地元紙の片隅に「おらが村に高速ネットがやってくる」という記事が出た(らしい。私は読み損なった)。しばらくするとなにやら工事が始まった。上記の理由によりこれは私にとっての一大事。ドイツテレコムに電話した。

 

もう、これが、長い、長い、お話だった。たらい回しにされ、電話に出る人出る人言うことが全く違う。正直カスタマーサービスは最悪、レビューを書くなら星1つ。…なのだが、この話はとりあえず割愛。とりあえず、電話に出た人の話を総合し、自分なりに調べた結果が以下の通り。

 

そもそもこの家のネットのプロバイダーはドイツテレコムではない。ドイツテレコムの回線を借りているだけの別会社。なので、ドイツテレコムへの乗り換えが必要。もう10年以上前の話で、なんのために乗り換えたのかも不明。電話でのセールスに騙されたのかなとか思うが。

 

この単純な事実ですらもう電話に出る人出る人言うことが違う。ある人は、まずは今使っているプロバイダに解約手続きをしてから出直してこいといい、また別の人はいやそれはドイツテレコムが代行するという(そうでないと、どちらにも契約しておらずネットや電話が使えなくなる日が出てくるとか)。結局後者が正しいという結論に至る。

 

そして、たぶん秋くらいには目下工事中の回線が使えるようになると。えっと、それって理論上の速度はいくらなんですかと聞くと、ある人は下り50Mbs(上り10Mbs)といい、またある人は下り100Mbs(上り40Mbs)と言う。言うまでもなく「あくまで最高の数値」だから実際はこれより遥かに遅くなる。って、そもそもこれ、なんの回線なの?光ケーブルなの?それ以前に、なんで、50Mbsか100Mbsかすらわからないの?あんたら自分たちがなんの工事してるか知らないの?そう突っ込むと

 

「100Mbsじゃないですかねえ。今50Mbsの回線を引いたってまた数年後に工事することになりますからねえ」

 

…それって完全にあんたの根拠なき推測じゃん。しかも、これ、下に書くけど、間違ってると思う。

 

もうひとつわかったことは、現在でもドイツテレコムにすぐに乗り換えればネットの速度は向上するとのこと。え?同じ回線使ってるのにどーゆーことよ?って聞いてみたら

 

「お客様のお住まいの場所はハイブリッドエリアですので」

 

…ごめん。なにそれ、初めて聞いた。今日聞いた。まさかプリウスの話、してないよね?

 

調べてみたら、DSL回線と、モバイルのLTEネットワークを同時に使って速さを向上させようというやり方らしい。回線2つ使えば確かに単純にその分早くなるわな。…ってかそんないい話があるならもっと早くに教えてほしかった。理論値では下りは16Mbsで上りは1Mbs。…まだお話にならないが、最初のスクショの通り、現状の上りが0.23Mbsとかいう惨状なので、理論上は4倍。実質でも倍の速さにはなりそうな気がする。とりあえず、上りの速度が話にならないから、インターネット電話が安定しないのだ(仕事にはとてもじゃないが使えない)。なので、いつもケータイで国際電話かけまくり…というすごい状況になっている。

 

ともあれ、件のハイブリッドとやらを使うためにはハイブリッドルーターが別途必要。それはわかる。で、ここから先がさっぱり理解できないのだが、今まさに工事されている回線、これに乗り換えるためにはさらにまた別のルーターが別途必要になると。ここがまた意味不明でして、ドイツテレコムの人によっては「50Mbsだったら同じのでいい」とか、別の人は、「いや、50Mbsでも交換が必要」とかもう各々がてんで勝手なことをいうものだから話がさっぱりわからない。

 

そもそも50Mbsか100Mbsかは同じ光回線だけど、基地局からの距離の問題とかじゃないの?今工事している回線は何なの?そう突っ込んでも「わかりません」で片付けられてしまう。ちなみに、50Mbsでも100MbsでもやっぱりハイブリットでLTEと有線を併用できるらしい。

 

埒が明かん。

 

私は行動に移した。きっと工事しているおっちゃんなら、自分たちがなんの工事をしているか知っているに違いない。きっと正しい答えを知っているに違いない。そう思った私は午後4時過ぎに早々と仕事を切り上げて工事現場に突撃。変なところで変な実行力のある私。

 

 

まず、村の中に穴を発見。誰もいないもののなんかやってる。確か今まで落書きのされた箱は存在したがそれ以外は今回はじめて設置された気がする(見た感じ真新しいし)。

 

ここから、すでに高速ネット(と言っても下り100Mbs)が開通してる隣町までおよそ2キロの距離。そこを徒歩でたどっていくと

 

 

…点々と、100mおきくらいとかだろうか…道路脇の土の部分に深さ1mくらいの細長い穴が掘られている。

 

 

途中に川があるのだが、その向こうにも点々と穴が掘られており、

 

 

…隣町に入った途端にどどーんと、重機ほかが置いてあった。

 

 

なに?このドリルで掘り進めるってこと?地下鉄で言えば穴を開ける開削工法ではなく、ドリルで掘り進めていくシールド工法になるの?

 

 

その後ろにはチューブが。この中に新しい回線を入れるんだろうな。日本でも電線ドラムとかみたことあるけど、それに比べると…巨大ですな。

 

…お気づきとは思いますが、そう、これじゃ私の目的は達成されない。だって工事のおっちゃんすでに撤収しちゃってるじゃん。

 

ただ、気になったので、点々と掘られている穴をさらにたどってみるとここにたどり着いた。

 

 

何やら大きめの箱が道端に設置されてます。耳を澄ませてみると、中からはぶおんぶおーんとファンが回転している音が聞こえる。ん?これが基地局になるの?なんかもっと立派なサーバールームの建物か何かを想像していたのだが。

 

とりあえずおらが村の中で見つけた箱よりはるかにでかい。ということは、村の中にどこか新しい同じような大きさの箱の基地局ができるのだろうか。その基地局の位置によって、うちの回線速度が決まったりするのだろうか。だとすると、基地局は村の中心に置かれるのかしら…などとかってに妄想が進むがさっぱりわからない。

 

数日後、出直しました。すると

 

 

…おお、掘っていた穴にチューブが入った。ということは、確実に工事が進んでいるんだな。それにしても、浅いところに入れたもんだな。しかも、道路のコンクリの下ではなく道路脇の土の中。ぶっちゃけ、雨の後とかなら私でもスコップでこのケーブルの掘り出しは容易に可能だと思われる。

 

つまり、村の中でネット回線破壊ゲリラをしたい場合は…。などとアホなことを考えたが、そもそももう「ゲリラ」という言葉自体が日本では死語かも。最近の若いもんは知らんでしょうが、こんなゲリラ事件も昭和の頃の日本ではあったんですぞ。

 

それよりも、チューブが2本あるということは、二回線で冗長性を持たせているのか。いや、だとしたら、同じところに二回線引いたって、上記の理由で切られる時は故意だろうと事故だろうといっぺんに切られちゃうんじゃないだろうか。こと、道路脇は畑。巨大な農機具を使ってるから、ちょっとズレただけでこのケーブルをうっかり傷つけちゃう…という自体は容易に想像できるんだけど。

 

それはともかく、また工事のおっちゃんはいない。もしか、午前中しか仕事してないとか?

 

もう一つの謎は思いがけずあっさりと解けた。途中にある川はどーするんだろうという疑問。

 

 

こんな大型トラックが停まっていたのだ。そのトラックの側面には…

 

 

…実にピンポイントなわかりやすい解説ありがとうございます。川の下に通すとは。私なら橋になんとか設置しますが、なにかしら大人の事情があるんでしょうね。

 

結局工事のおっちゃんを捕まえることはできずに速度の話は謎のまま。でも当座のカイゼンとして、プロバイダを乗り換えれば速度はある程度改善する!と申し込んだのですが…1週間何も反応なし。この申込にも1時間半以上電話たらい回しの刑にあったのだがまあそれは割愛。

 

1週間後、しびれを切らせて電話すると

 

「そのような申し込みを承った記録はございません」

 

どこぞの関西の昭和の漫才師よろしく責任者出てこい…とよっぽど言いたかった。

 

結局一からやり直し(このあたりで話す人により内容がまちまち)。今度こそは申し込めたものの、やってきた通知は…

 

「回線の乗り換えは3ヶ月後になりますね」

 

…全然当座のカイゼンになってない。どこまで使えないんだ。この会社は。とりあえず、秋まで何も起こりそうにありません。

 

ふと思うことは、もしかすると私はアイルランドのことを悪しざまに書きすぎたかもしれない。ドイツに住んで数年、実はドイツだってアイルランドといい勝負のすっとこどっこい具合だもん。自分では高度な要求をしているつもりはないのですが…。

 

 

とはいえ、こんなところに回線を引いてくれたことに感謝すべきなのでしょうかねぇ。この話、たぶん、続く。