9月3日。殊勝にも朝の5時に起きて荷物をまとめて成田空港へ向かった私。私のSASがっすのスカンジナビア航空の折り返しコペンハーゲン行きは到着便遅れのため30分遅れでの出発の模様。チェックインカウンターでは
「いえいえ、それでも定時より前に到着予定ですよ~」
と言われる。この時にはもちろんこの先に起こる騒動など知る由もない。
ANAのラウンジで朝ごはん。朝から調子こいてカレーをいただく。文句なしに美味しかった。
予定より30分遅れの搭乗予定時刻(11時40分)になり搭乗口へ。…だが搭乗する気配はない。待ちくたびれて搭乗口脇のユナイテッド航空のラウンジへ。ラウンジ内に放送が…。
「スカンジナビア航空984便にてコペンハーゲン行きにご搭乗予定のお客様にご案内申しあげます。当便は欠航となりました。詳しいことは搭乗口にてご案内いたします」
すたすたすた。搭乗口へ。そこでは明治維新のときの浪人のような髪をした係の男性がアナウンスをしていた。この時点で定刻より90分経過した午後12時40分。
「当便は、貨物室のドアにヒビが見つかったため、欠航となりました。つきましては入国審査場が再開され次第、皆様を入国審査場にご案内いたします。そののち、B12荷物ベルトにて荷物をお引き取りのあと、出国階4階のGカウンターにて振替便のお手続きをいたします。」
ドアにヒビ…と聞いて思い出したのが、1985年の日航ジャンボ機墜落事故。初期の報道で右側後部ドアの異常で墜落したという報道があったのを思い出した。貨物ドアの異常での事故って実際にあるし、このヒビを整備の人が発見してたことは、もしかすると賞賛に値することなのかもしれない。
今回の騒動で唯一の救いというか良かったことは、このおそらくSASがっすのスカンジナビア航空の日本支店の責任者と思われる方がなんというか、自信に満ちた、しっかりした対応をしてくださったこと。ただし、その部下と思われる方やANAの職員のすっとこどっこいぶり(後述)のお陰でその努力はまったく無駄になっていたが。
到着客と同じ導線をたどる。入国審査場で出発中止客のための特別レーンを通過し、荷物受け取り所へ。ここ、何度も通ったことがあるけど、この「お帰りなさい」に怒りを覚えたのは初めて。この状況だとほとんど嫌がらせにしか思えんわ。上の写真、まじまじと見て思ったけど、「お帰りなさい 税関」ってなんか変じゃない?
荷物を受け取ったのだが優先タグをつけてもらっていたのも拘らず私に荷物が出てくるのは遅かった。この時点で結果的に今回の敗戦は確定した。
荷物を受け取るなりダッシュする他の方々。何やってんだかと醒めた目で見ていたが、このダッシュするという一部の乗客の行動は正しかった。私はと言えば、エレベーターの順番を譲ったりしているうちにすっかり出遅れてしまった。まあ、カートを使いながら走るなど自殺行為。他の人にぶつけたりしたら間違いなくケガをさせる。そーゆー意味では荷物が多かったのが敗因とも言える。…あ、それなら自殺行為じゃなくて他殺行為か。
午後1時35分。振替用のカウンターに並び始める。ビジネスクラスの列、前には少なくとも30人は並んでいる。完全に出遅れ。少なくともその後1時間、列は1センチたりとも進まなかった。ビジネスクラス用の列もエコノミークラス用の列も同じくらい並んでいる。
午後4時(並び始めてから2時間半後)。ほとんど進まない列に絶望してついにジベタリアン化する。
とことん失敗したことは、私はビジネスクラスの列に並んだこと。つまりはこーゆーこと
エコノミークラスの客に対して:「明日の便に振り替えになりました。こちらホテルのバウチャーです」(はい次の方-)
ビジネスクラスの客に対して:「ええっと、この便は満席ですので他の便をお探しします。少々お待ちください」(永遠に終わらない)
私の推理は大方間違っていないと思う。とにかくエコノミークラスの列のほうがはるかに早く捌かれていた。
午後6時すぎ。昼ごはんを食いっぱぐれつつ並び始めてからほぼ5時間のの待ち時間のあと、ようやく私の順番がやってくる。羽田深夜0時50分発発ANA便フランクフルト経由ハノーファー行きへの振り替えをお願いするが、空いていないと言われる。
私:「明日、仕事なんですよね。なんとか午後だけでも仕事できるようにご配慮いただけませんかね」
まったく意味不明ながら、係のANAの女性は…
「お客様のブッキングが二重三重になっておりまして、明日の同時刻の便と、(修理を終えて)2時間遅れの出発となります臨時便と、イスタンブール経由の…」
すると、後ろで見ていたお局さんらしき人が
「イスタンブール経由はダメでしょ」
とダメ出し。どーゆーことですかと聞いても
「諸事情により、これはなし…ということになりました」
ただただ不信感のみが募る。
なんだかんだで、本来は翌日の26時間遅れの臨時便ではなく、24時間遅れの翌日の定期便に振り替えをしてくれるとのこと。
「お席の方ですが、窓際席がご用意できます」
「ええっと、非常口席とか、せめて通路際は空いてないですかね」
「あいにくすべて満席となっております」
思えば失礼この上ないが、私の口からは「最悪」という言葉が漏れ出てしまった。ほぼ5時間無為に並ばされた挙句に、まったくのゼロ回答。本当に失礼だったと汗顔の至りながら、この余計なひとこと以外は紳士的に対応したと自分では思っている。
その失礼な独り言が聞こえたのかはどうかは定かではないが、後ろのお局さんが…
「非常口席、リリースしてもいいわよ」
すると、係氏…
「それでは非常口座席、窓際と通路際、どちらがよろしいですか」
…空いているんじゃねえかよ。不信感は頂点に。
「それではホテルへご案内いたします」
「いえ、ホテルは結構ですので、日暮里までの往復のスカイライナー料金を請求させてください」
「そうなりますと、事後精算…という形になります。こちらのメールアドレスまで…」
5時間近く待った挙句に、私の対応時間は5分とか。理不尽さと不条理さでため息ばかりが出る状態。
階下の荷物一時預かり所でスーツケースを預け身軽になりスカイライナーに乗る。
1時間後、都内某所の馴染みの一杯飲み屋さんで寛ぐ私。この費用もしっかり請求してやる。
翌朝。昨日より一便後のスカイライナーで成田空港へ戻る。いやはや、まさか2日連続でANAのラウンジのお世話になるとは思わなかったわ。
とんこつラーメン。昨日のお昼ごはんを食いっぱぐれた経験を活かし、ついでにカレーうどんまでいただく。コシがあり美味。
上の写真で見て取れるでしょうか。どうも本当に貨物室のドアーが問題だったみたい。ドアーを交換したのか、ドアーにAirlinesの文字がペイントされていない。
エコノミークラス対策で自販機でお茶を2本買い搭乗口へ。定刻通りに搭乗開始。もしかするともしかしてインボラアップグレードが来るかなと一縷の望みをかけたがそんな調子のいいことは起こらず、なんとか昨日ゲットした非常口座席に。
エサの時間。SASがっすのスカンジナビア航空の日本線は「食事前の1回に限り」飲み物は無料。ダメ元で白ワイン2本頼んでみたら認められる。
…正直ここ数回のエコノミークラスの食事よりはマシだった。ただし、未だに「食事」ではなく「エサ」という分類だったが。先ほどの麺類のお陰でお腹いっぱいの私はほとんど残す。とりあえず、左下のピンク色の物体(デザートのケーキらしい)が気持ち悪い。
途中でおにぎりとサンドイッチが配られる。無料らしい。コーヒー紅茶も配られるが、緑茶はないとのこと。かくして、おにぎりとコーヒーという食べ合わせが良いとはとても思えない組み合わせになる。せめて紅茶にしておけばよかったかな。
さて、機内のリニューアル後のSASがっすのスカンジナビア航空のA340機。エコノミークラスの座席にも電源のコンセントがある。これは(あるいは最近の航空業界では当たり前なのかもしれないけど)ポイント高い。…ちゃんと動いていればね。そう、メンテナンスができてないのか何なのか、今回は行きのように単純に主電源の入れ忘れなどではなく、私の席をはじめ多くの座席に供給されていなかったらしい。
私は気がついちゃったのよ。非常口脇におそらくサービス用だと思われる電源のコンセントがあることに。ここからしっかり電源をいただく。ちなみにこんなことしていいかどうかは確認してません。
到着時に日本人の客室乗務員さんが、「本日は客室乗務員が通常より2名少なく、また、日本人乗務員も一名少ない状態でした。さらに、エコノミークラスの一部の座席で読書灯がつかない等の不具合がありました」という趣旨のお詫び放送が入ったので、この電源問題はどうも私の座席だけじゃなかったらしいと気がついた。日本人乗務員はともかく、座席の電源くらいしっかり使えるようにしてほしいもんです。
こちらは到着前の昼食。ヨーロッパ内のエコノミープラスクラスと同等の食事です。
そののち、ハノーファーには若干の遅れで到着。つまり、本来の予定より24時間ちょっと遅れて到着。一日仕事ができませんでした。翌日、時差ボケの脳みそをなんとか稼働させてフザケンナの苦情を諸費用のレシートのコピーを添えて送る私。内容は、「トラブルが発生することは避けられないかもしれないが、5時間も無為に並ばせるな。一日余計に滞在することになった諸費用と、EU法に則りとっとと補償金600ユーロを払いやがれ」。もちろん、英語で丁寧な口調で書いてます。
そう、EU法。詳しくは端折るけど、EU内の航空会社がEU外から(へ)のフライトがキャンセルされた場合600ユーロ(およそ8万円)の補償金を請求する権利があるの。詳しく知りたい人はこちらのサイトへ(英語)。さて、このフライトがキャンセルされて困った200人超の乗客のうち、この事実を知っている人は何人いたやら。こと、日本人は知らないんじゃないかなぁ。知らないと損をします。
蛇足ながらちょっと興味深い事実。上記のEU法は「EUに到着するEU以外の航空会社」には適用されません。つまり、ANAやJALのEU行きの便の日本出発が遅れたりキャンセルされてもこの対象にはならないということ。逆にANAやJALでもEUからの出発が遅れたりキャンセルされた場合この法律の保護対象になると。なんかおかしい気がしますが、悪法もまた法なり。そーゆー規則らしい。
ウェブ上のフォームを埋めて提出すると、「お返事には3週間程度かかります」という香ばしいテンプレメールが返ってくる。ただし「マイレージカード上級のお客様の苦情には最優先で対応します」とも書いてある。
マイレージカードのご威光か、3週間に比べたら遥かに早い1週間後、これまた明らかなテンプレメールが返ってくる。なぜテンプレメールとわかったかというと、金額の部分だけフォントが違うんだもん。
ごめんなさい。補償金・諸費用込みで748ユーロ返金します。
数日後、日本円にしておよそ10万円が私の銀行に振り込まれていた。
…そう書けば、完全勝利のように聞こえるけど、だがちょっと待ってほしい(←某新聞が大好きな言い回しですね)。返ってきたのは単なるテンプレメール。あのさー、私は空港で無為に5時間待たされたこと(本来の定刻の出発時刻から計算すれば実に1/3日)、そして、そのカイゼンについても提案したのよ。その件を無視して「ほら、金返してやるから黙れよ」というテンプレメールを送ってこられたのは実に残念でした。
航空会社の実力は何か問題が起こった時にこそ明らかになると思います。今回のSASのスカンジナビア航空の対応は、日本という(カスタマーサービス先進地という意味で)土地の利があったにも拘らず明らかに落第です。まあ、こんなページを見ている関係者がいらっしゃるとは思いませんが、万一ご覧になっていたら、カイゼンを心からお願いします。
5時間も・・・。
苦行です・・・・。
SASでコペンハーゲン・LHでフランクフルトに到着後に拝読して、無事に飛んでよかったSAS!!!
EU法、存じませんでした。
もしかも時には、申請いたします。
貴重な情報ありがとうございます。
苦行でした。特に、少ない日本での滞在時間を少しでも長くするためにとわざわざ深夜便にまで乗ったのに空港で半日…いや、実質一日無駄にするというのはダメージ甚大でした。
EU法、悪天候などの航空会社の責に帰さない時は使えませんのでご注意を。