バブルの遺物、ダブリン空港新ターミナル探訪記

ドイツに行くのに、いろいろあって朝の6時40分発のルフトハンザのヒコーキに変更しました。この「いろいろ」はもうこのテのネタに食傷気味なので省略。6時40分発のヒコーキに乗るためにバスの時刻を調べてみると…当然そんな時間にバスはない。唯一、使えそうだったのはうちから徒歩45分(ってそんなの徒歩圏じゃねえ)のところにあるバス停から出るバス。6時5分に空港に着く。うーん、微妙だ。10分遅れたらピンチだ。その前は4時40分着…これに乗るしかないんかの。

というわけで、朝の…いや、深夜の3時前に目覚ましかけてとことことバス停まで歩き始めましたよー。

♪月がとっても青いから遠回りしてかーえろー

…いや、遠回りしたくない。ましてや帰るんじゃない。出かけるんだよ。

空車のタクシーがばんばん通り過ぎていく。バス停までタクシーに乗ろうかという衝動に駆られるが、タクシーに乗った刹那、「空港まで!」と言ってしまう自分が怖くて自重。

そんなに寒いとは思っていなかったのだが、道はところどころ凍っている。なるほど、これがblack iceというやつなのね。日本の道路によく「ただいまの気温XX度」とかいう表示があるけど、あれって意味のあるものなんだなーと初めて気がついた。

そんなこんなでバス停着。上の写真、バス停の写真なんです。誰がなんと言おうと。相棒の米沢さんならちゃんと解析してくれます(たぶん)。

そこでヒマなのでTwitterにくだらないことを垂れ流す。

(自分のほざきのコピペ)

バス停に着いた。あっ、お財布に50ユーロ札しかない。これかなりまずいかも。お釣りがないとか言われたらどーしよー

そう。お財布の中を確認しないでバス停に来たらお財布の中には50ユーロ札しかない。これはまずい。かといってお札をくずせるようなところは皆無(午前4時ですから)。まあ、なるようになるさと思っていると後2分でバスが到着という時刻に。すると目の前に8人のりのミニバンのタクシー(日本で言えばジャンボタクシー)が止まった。屋根に正規のタクシーの行灯のついた車。

運転手:「空港に行くの?」
私:「あんた、バス?」
運転手:「いや、違うけど、空港までバスと同じ運賃でいいよ」

出たー、コバンザメタクシー(造語)。

コバンザメタクシーって何?って方、いい質問ですねー(あんたは池上さんか)。よくね、街中のAircoachのバス停で空港行きのバスを待っているとタクシーがやってくるんですよ。「バスと同じ運賃でいいから乗らない?」って。街中から空港までのタクシーの運賃はおおよそ20ユーロ。で、バスの運賃は7ユーロ。つまり3人客を捕まえることができれば利益が出る計算になる。8人乗りのタクシーで、まあないだろうけど運よく満席になれば56ユーロの儲け。うはうは。

前にね、街中のバス停でAircoachを待ってたらこのコバンザメタクシーがやってきて、乗らないかと持ちかけてきた。「ああいいよ」と言ったものの、他にもう一人しか乗るという人がいなくてこのタクシーは「ごめーん」といいのこして走り去っていった。信じてくれない人は、Aircoachのバス停に行ってみてほしい。「このバス停での客引き行為はお断り」って書いてあるから。

考えてみると、この行為はバス会社に対する強烈な営業妨害。おそらく違法行為なんじゃないかな。だけど、無理やりタクシーの側に立つと、今のアイルランドの不景気はタクシーの運転手をして、そこまでしないと生活が成り立たないというわけでして、同情に値する部分もあるかもしれない。知り合いのタクシーの運転手さんも朝の4時から仕事を始めて4時間で10ユーロしか稼げない日があるとか言ってたもんなあ。

まあ、頻繁に運行されていて客数も多い街中のAircoachのバス停ならともかく、こんな片田舎のバス停にまでこんなコバンザメタクシーが現れるとは思わなかった。で、私はどうしたかというと

…乗ってしまった。

考えてみると正義に反する(ってお前何様)。だけど、このときはあまり深く考えずに乗ってしまった。ものすごーく疑り深く考えると、これ、誘拐目的とも限らないわけで、まともな人はこんなもんを相手にしないほうが無難だと思う。

ともあれ、タクシーの後部(中部?)座席に乗り込むとすでにタクシーの助手席には別の乗客が一人。で、バス停を出るとタクシーは空港とは違う方向に走っていく。おいおい、誘拐かよ。

…などというわけはなく、なんのこたーない、タクシーはちょっと遠回りして空港に向かい始めた。ちょっと遠回りってどーゆーことかというと、忠実にバスのルートを辿ってるのね。ほんで各バス停でお客を拾おうとしてる。と言っても午前4時。お客などほとんどいない。途中でもう一人の客を拾っただけ。

別のバス停には3人のグループ客がいたが、乗車を拒否。そうだよ。それが正しい姿だよ。結局乗客は私を含めて3人。エントツ(メーターを回さないタクシーの運行)で税金等を逃れて27ユーロがそのままポケットに入る計算なら、なんとか採算に乗るかどうかのラインだろうなあ。

今これ書いていて気がついたけど、私の行為は自分の首を絞めている。このバスに乗らないと、バスは乗客がいなくて廃止の憂き目にあう可能性が否定できない。そうなったときにこのタクシーの運転手がこのコバンザメタクシーを運行するはずもなく、結局は自分の不利益になるのだ。

まあ、そんなこんなでバスの定刻より10分ほど早く午前4時半に空港着。しかも、月ほども遠い長距離用バス停ではなく、ターミナルの車寄せに到着。もちろん運賃は9ユーロ。かなり得をしたような気もするけど、上記のような理由で薦められた行為ではない。

こんな早い時間に空港に来たことがない。ほとんどの店はまだ開店してないし、挙句に時間をつぶそうとした

Bmiのラウンジ(スターアライアンスで共用)まで開いてない。

こりゃ困った。ヒマだ。というわけで、空港内探索開始。ふと気がついてしまったのだ。

この通路を通れば、実はターミナル2に行けてしまう。

ターミナル2。去年の秋にオープンしたばかりの新しいターミナル。バブルの真っ只中に計画されて建設。その当時のアイルランドのバラ色の未来予想図ではダブリン空港の乗客数は右肩上がりでこのままじゃあ乗客が捌けなくなる。これはいかんと関係者が立ち上がって新しいターミナルを作ったはいいが、いざ完成してみると、バブルは弾け、ターミナル1の新設の地下にある搭乗受付も使われていない。

今ではようやくエアリンガスが新ターミナルを使うようになって少しは面子を保てそうになっては来たけど、それでもこのターミナルは無用の長物であるというのは全国のトップブリーダー約8割の共通した意見です(当社調べ)。

昔で言うエリアCの搭乗エリアをそのまま転用した長い通路。そこには

お前みたいなビンボー人には用はないと金文字で言ってくる(ような気がした)Etihad航空のラウンジ。一日1便しかない空港に自前のラウンジを作ってしまうとはさすがオイルマネー…などと考えちゃうのはあまりに穿った見方ですか。そうですか。

そこから威圧感のない(しつこいけどそう思ったんだってば)エアリンガスのラウンジを望みつつ進むと、

うおっ

(そういえばアメリカの「入国審査」ができる珍しい空港だったな。ダブリンは)

ひろびろーという表現がぴったしの空間。そういえばターミナル1に新設された搭乗エリア100番台(昔で言うエリアD)も天井が高くて開放的な雰囲気だけど、なぜか そこよりも開放的な印象を受けた。書きながらなぜかを考えたらあっさり答えが出た。誰もいないからだ。

搭乗エリアの先端まで行く気がなかったのでそのままエスカレーターに乗って待合室へ。

ふと思ったけど、このエスカレーター、アイルランドで一番長いんじゃないかな。100%の自信はないけど、1階から3階といったふうに階を飛び越えるエスカレーターって今までなかった気がする。「エスカレーターに不慣れな方は最寄のエレベーターまたは階段をご利用ください」などと真顔で書いていた空港にしては隔世の感がある。

未だに残っている件の表示。

エスカレーターを降りて通路を左に進む。待合室は目の前にあるのに左に進むのは明らかに導線の設計ミスだと思うのだが、ともあれ、待合室。

ひろびろー。

そして、

無駄なスペースだらけー。

待合室の真ん中には居心地のよさげなパブもある。居心地が良くて誰もいないことをいいことに横になっているアホタレが映りこんでますが、アイルランドでは仕様ですのでお気になさらない方向で。どんなに箱が立派でも中身がダメだとどうもならん…などと辛辣なことを言ってはいけません。

これはなかなかの新しい空間ですが、誰がどー考えてもこんな無駄なもん作って空港税を上げるくらいだったら、前の田舎くさいターミナルをそのまま使っていれば良かったと思うのは私だけではないと思います。しかも、エアリンガスをほとんど使わない私にとってターミナル2はどう考えてもいらない子です。

ターミナル1へ戻る通路は、来た道を引き返してもいいのですが、待合室から別方向に進むように書かれているのでそれにしたがってみます。

すると、昔到着客用に使っていたさっきより1階層上の通路のベルトコンベアが供用されています。ただし、動いてませんでしたが。`

昔の設備をそのまま転用しているので、無駄が生じています。昔は到着の方面別で乗客を二つに分けて別々の通路を歩かせていたので(ただしうまく運用されていなかったけど)通路が二つありましたが、現状ではひとつしか利用されてません。かといって再利用されているわけでもないので、おかしな状況になっています。

昔の搭乗橋からの上りエスカレーターを逆に下ってターミナル1の出発階に戻ります(ひとつ上の写真のドアのところを左に曲がる。ちなみに昔はドアの向こうが入国審査だった)。

散策が終わってターミナル1のbmiのラウンジに戻ると、良かった。開いてる。

で、搭乗案内を見て力が抜けた。

出発は6時40分じゃなくて50分だったのね。…たかが10分の違いですがされど10分。これなら6時5分到着のバスで来ればよかった。次回からはそうします。

おまけ、威圧感どころか、貫禄も心地よさもなにもないbmiのラウンジ。ヒースローのラウンジはきれいに改装したのに所詮、ヨーロッパの端っこの、便数を半減したような小島の首都(ダブリン)なんてどーでもいいんだろうなあと感じた。