まずは朝食。取り立てて文句をつけることもないが、かといって褒めることもない大陸式の朝食。滞在中4回朝食を頂いたが、このメニューはまったく変わることはなかった。
嫁はある意味ぶれない人。どこに行っても朝食だけは譲れないらしい。ホテルを選ぶ基準はまず何よりも「朝食のサービスが値段に含まれているところ」。過去に朝食別のホテルを予約したことがあるのだが、その時に私が「ンユーロも出してホテルで食べるくらいなら外のカフェで食べようぜ」と言い出し、結局朝食を食いっぱぐれたことがあるらしいのだ。…伝聞系なのは言わずもがな私にそんな記憶がないからに他ならない。ともあれ、こんなささやかな朝食でもいいらしい。
午前10時に出発。それでは早速、「基本を外さない」嫁の指示によりサンマルコ広場にあるドゥカーレ宮殿へ。入場料金お一人様€20。ヴェネチアではお金がジェットエンジンをつけて飛んでいきます。
すごい宮殿だったけど、このあたりのレポは他にも優れたものがいくらでもあるので中は軽く触れるだけで。あくまで私はニッチ路線で行きます。
とんと歴史に疎い、高校の時の歴史の授業の年号丸暗記は見事に右から左に抜けた私、もちろんヴェネチアが「7世紀末期から1797年まで1000年以上の間に亘り、歴史上最も長く続いた共和国である。『最も高貴な国』や『アドリア海の女王』とも呼ばれる。東地中海貿易によって栄えた海洋国家であった。また、信教の自由や法の支配が徹底されており、元首の息子であっても法を犯せば平等に処罰された。」(以上Wikiよりコピペ)なんて知らなかった。ミソはここ「元首の息子であっても法を犯せば平等に処罰された」。
処罰をされた罪人が向かうのは牢獄。上のような豪華絢爛な空間と、牢獄がため息橋という橋一つでつながっているというのは興味深い。
2時間ほど滞在して、今度は徒歩でサンポーロ(San Polo)というエリアへ。
途中でアナログ嫁が絵葉書を買うと言い出す。アナログとか莫迦にしたけど発想は悪くない。LineだかWhatsAppだか知らんがあっという間に写真が相手に送られる2017年の世において、わざわざ絵葉書を買って、メッセージと住所を手書きして、切手を貼ってポストに投函する…こんな面倒に逆に価値がある気がする。なので私も数枚送ることにする。
飛び込みで入ったお土産屋さん。おじさんは英語ももちろんドイツ語も一切話せず。まあ、イタリアでは珍しくないことだが、こと観光地の観光客相手の仕事をしている人にしてはとても珍しいような。
このおじさんに嫁が英語で切手があるのかと聞けば、あるという。ヨーロッパまで1.2ユーロとか、高い。そして、その他の外国(日本含む)に至っては2.4ユーロ。そしておじさんは、「このポストに投函するんだよ」と店内にあるポストというよりは懸賞の応募箱といった趣の箱を指し示す。へぇ、お土産屋さんにも郵便箱を置いているなんてなんて親切…と思った私はあまりにアホタレだった。
種明かしをすると、おじさんが売ってくれた切手はFriend Postなるイタリアの公式の郵便とは無関係の私設の機関のもの。なので普通のポストに投函しても受け付けてくれない。コドモの頃に夏休みの宿題を最後の瞬間までやらなかった私は当然のようにヴェネチア滞在最終日の夜までハガキを書かず。結果としてこのFriend Postなる投函箱を探しに市内を駆けずり回るハメになる。
さらについでに書くと、日本あてに投函した絵葉書は1週間程度で到着したが、嫁がドイツに投函した絵葉書は3週間程度かかった。高いは(ことヨーロッパ内については)遅いわでいいことのなかったFriend Post。最終日に投函箱を探しに駆けずり回って気がついたのだが、同様のサービスをしている他の業者もイタリアにはあるらしい。少なくとも日本向けには仕事をしたけど、お勧めしません。
午後3時。サンマルコ広場へほど近いCampo Santo Stefano広場に戻ってくる。ここで、午後3時から「無料の」徒歩ツアーに参加予約をしていた次第。
この無料の徒歩ツアー、過去にベルギーはヘントで一度参加したことがある。あ、この話ブログに未収録だわ。気が向いたら(≒ネタに困ったら)やりますね。
ヘントのときと同様、ボランティアのガイドさんは学生さん。記憶が正しければスロベキアから来た美大の院生。「無料」ながら「チップ」は歓迎。そう、ガイドさんはボランティアながらちょっとしたお小遣いが稼げる、観光客はチップ程度でその土地を深く知ることができるという、どっちにも利があるうまいやり方なのね。ちなみにこの日のガイドさんは「チップの半額は陽の当たらない歴史的な場所に寄付されます。そして残りの半分は私が頂きます」といったことを言われていた。
この無料徒歩ツアーの参加者は私たちを含めて18名。多すぎず良い人数だわ。
まず向かったのはこちら。裏通りに突然出てきた立派な階段。コンタリーニ・デル・ボーヴォロ階段(Scala Contarini del Bovolo)。この階段は建物の裏側、裏通り側に面している。コンタリーニ家の普段人が目にしない裏側にこんな立派な階段を設けたのは、ガイドさんの言うことを信じると、大金持ちの家主が金が余っているものだから、使用人のための階段も立派にしよう…としたらしい。階段を登るのは有料。階段を登るだけで€7.5(お金がジェットエンジンをつけて飛んでゆくヴェネチア価格)。気になったので最終日に戻ってきて登りました。
そして、サンマルコ広場。
ここも前日は「ふーん」だったのだが、ガイドさんの説明を聞くといろいろ違った視点で見えてくる。サンマルコ寺院のサンマルコの遺体(ってかたぶんミイラだよね)をエジプトからだまし取って来た話とか。話とか、装飾に使われている金は略奪してきたものだとか。カソリック教徒には黒歴史なんだろうけど、あくまで部外者の私には聞いていて興味深い。
…といろいろとサンマルコ寺院の外から説明をしてくれていた突然ガイドさんが言うのだ。
それでは20分休憩にします。サンマルコ寺院に行きたい方はどうぞ
…ってガイドさん、聖堂に入るのに行列ができてますよ。どうやって20分で中に入れというのですか。
聖堂の中にリュックを持ち込むことはできません。そこの角にある荷物預かり所に預ける必要があります。預けるとタグがもらえますのでそのタグを係の人に見せれば並ばずに5人まで中に入ることができます。え?問題ないですよ。いつもやっていて問題になったことありませんから。
…なにその裏技。
ホントかよと半信半疑で荷物預かり所に愛用のリュックを預け、そのタグを係の人に見せると…中に入れてくれた。ずるいとかこすいとか言われるとその通りとしか言いようがない。
聖堂の中は…すごいものでしたが、写真撮影禁止につき写真はありません。
さらに徒歩ツアーは続きます。
こちら、「世界で一番美しい古書店のひとつ」
本に関しては一家言ある嫁が言うのだ。
「本のメンテナンスがなってない!」
その通りですね。書店の雰囲気は決して悪くないものの、本の管理は正直ダメダメな感じ。それもそのはず、2月あたりの高潮の日にこの書店を含め、ヴェネチアの一部が水没するらしいのだ。ガイドさんいわく、そのために、書棚の一部がボートになっているとのこと.
…ホントだ。ついでに言えば、猫が堂々と売り物の本の上に乗っている。観光名所として愛でる分にはいいが、ここで本を買う気には正直ならない。絵葉書を買うに留める。
外には濡れて売り物にならなくなった本が野ざらしに。…うーん、本に対する愛情が足りない気がするぞ。
さらにガイドさんは続ける。
ヴェネチアでゴンドラに乗ろうと思う方は多いと思いますが、基本的に30分で€80です。価格交渉はほぼ不可能です。ただ、6人まで乗ることができますので、シェアをすれば一人あたりの費用は下がります。もしご希望ならご希望の皆様で話し合ってみてはいかがでしょう。
さらにガイドさんは、ツアーの最後に「正しいレストランの見つけ方」を伝授してくださった。
まず、メニューが翻訳されていないこと。
えっ?たいがいのところは英語その他に翻訳されてますがな。
本当に美味しいレストランは市場の近所にあります。そして、市場から直送されてきた魚などの新鮮な食材を使うので、英語に訳しているヒマはないのです。
うん、間違ってないと思う。でも、いろんな意味でハードル高すぎだと思う。とりあえず、続き、頼みます。
次に、メニューが多国語で、写真付きのところは、まず間違いなくレンチンのTourist Trap(旅行客用の罠)レストランです。
…うん。これはなんとなくわかる。その理屈で行くと、日本の入口に蝋で見本が作られているデパートのレストランはどーなるんでしょうね。
観光地から少し離れること。
…そりゃそうだろ。
美味しいピザを食べようとは思わないこと。ローマより北で美味しいピザなど食べられません。
…言い切られたよ。
個人的にこれに追加するとすれば…
客引きのいないところ。
当たり前です。客引きは客がいないから呼ぶのであって、本当にいい店は客引きなんていなくても賑わっているに決まっている。
ガイドさん。「私がおすすめするのはここです」
と言いつつ、解散。
私たちもチップを払って解散…しようとすると、一組の客が…
「どなたか、一緒にゴンドラ乗りたい人、いませんかー」
面白そうなので、その話に乗ってみた。結果、ほかに希望者がいなかったので、4人で80ユーロを割り勘することに。
ガイドさんが勧めてくださった「わさわさしていない乗船ポイント」より乗船。
のんびりー。これは正解だった。大運河でゴンドラに乗ってる観光客も見かけたけど、見たところあの軍艦ほかが行き交う東京湾にゴムボートで繰り出すのと同じような感じだったので。
船頭さん、ご多分に漏れず英語の出来はイマイチだった。が、それなりに説明してくれる。そのカップルもいろいろ聞いている。曰く、自分で三代目だとか、4代目はまだ学生だとか。私も何か聞いてみようと思い、口から出てきたこと。
「船頭さんは、船から落っこちたことはありますか?」
「ないっ」
即答。失礼いたしました。
30分後、出発点に戻ってきた私たち。解散。一度ホテルに戻り体制を立て直してから同じ場所に戻ってきた。そう、ガイドさんおすすめのレストランに行くために。
行ってみた。いやいやいやいやレストランじゃないよ、ここ。立ち飲みバーみたいなところ…と言ったほうが近い気がする。
狭っ。満席。
期待していただけに、困ってしまった。代替案を用意してないぞ。こうしてさまようハメになる二人。が、さまよったのはたった1-2分だった。
ふむ。どうだろう。ここ。直ぐ側に見つけたAntica Osteria Ardenghiというレストラン。
入ってみた。
午後7時。誰もいなかった。そう、こんな早くやってくるのは観光客のみらしい。まあ、こちとら観光客にはそのほうが都合がいいわけで。
初日のピザでちょっと反省をした私は、「地のもの」を食べようと決意。私の中ではイタリアなんだからピザも「地のもの」だったのだが、どうも違ったらしいので。
イカスミパスタ。思えば、これ、人生で初めて食べる気がする。ドイツやアイルランドでは見たことないし、日本ではその色といい艶といい、好き好んで食べようとは思わないシロモノだったしね(いやクロモノか…って文字が違うと自分でボケて突っ込んでおきます)。はっきり想定外に言っておいしかった。ヴェネチア滞在中に訪問したレストランの中ではここが一番。
さぁー盛り上がってまいりました(当社調べ)。次回佳境のヴェネチア3日目に続く。