かくして(前回の車載動画からの続きです)、とんでもない屋内駐車場の屋上に車を停めた私たち。気を取り直してヴェネチア本島へ向かいうべくTabacchi(よーするに、イギリス・アイルランドで言う「ニュースエージェント」、小さな商店)でバスの乗車券を買おうと思ったら閉まっている。ちなみにバスの車内で運転手さんから乗車券を購入すると割増賃金らしいのだが、閉まってるなら仕方ない。車内で割増料金を払おう。
私の事前調査の結果によると、Tabacciで事前に乗車券を買うと2ユーロ程度。車内で運転手さんから買うと3.5ユーロ程度と理解。遅れつつもバスは到着。ところが、運転手さんはアサルトスクリーン(強盗避けの透明な保護板)があり、現金などをやり取りすると思われる小さな小窓も閉まっている。運転手さんは
「乗車券?ダメダメ、ちゃんとTabacchiで買ってきて」
このお約束とも言うべき状況に、すでにイタリアに呆れ果てている私がいる。そういえば、チロル村はほとんどドイツだったな…言語だけじゃなくて。もしかしたら、言語と人間の行動には相関関係があるのかもしれない…などという大胆かつ意味不明な仮説を立ててみる。
仕方ないから嫁と荷物を放置して小雨降る中Tabacchiを探す。数百メートル歩いてようやく次のバス停の前に開いているTabacchiを見つけ乗車券を購入。2ユーロ程度だと思っていたのに一枚3ユーロと言われる。よくわからん。
程なくやってきたバスの運転手さん。今度は車内で乗車券を売る気があるらしく、小窓が開いている。…まったくわからん。まあ、そんなことをイタリアで追求してはいけないのだろう。
バスは「本土」から「お魚」に向け出発。ヴェネチアの島、地図で見ると分かる通り、どう見ても魚の形してるような。その魚の口の部分から本土に長―い橋がかかっている。
実は私、ヴェネチアに一度来たことがある。まだイタリア・リラを使っていた頃(つまり少なくとも15年以上前)。記憶は断片的にしか残っていないのだが、ヴェネチアでの最初の記憶はまさにこの橋だった。列車の車内からこの真っ直ぐな橋の向こうにヴェネチアを見たときに、「おおおおおお」と少なからず感動した。
そして今回。
どよよよよよよーーんとした空、どんよりとしたバスの車内(ヴェネチアに星の数ほどの観光客が訪れても、路線バスで島に入るやつってあまりいない気がする)、感動という感情とは程遠い。
ローマ広場のバスターミナルに到着。ちなみにスーツケースを抱えており、スリ警戒モード最大なので写真など一枚も撮っていない。ここで、水上バスの7日券を買う。バスにも乗れるこの券、一枚€60ですよ(バス停付近でこの券を買う方法はなかった)。待てやい。その値段なら日本なら短距離の1ヶ月定期が買えるぞ。ちなみに、1回券(75分有効)は€7.5。もうこの時点ですべてがおかしい。
一体この値段で一体どーやって地元の人が生きているのかと思ったが、なんのこたーない、地元民カードがあればほぼ1/4の値段で乗れるらしい。言ってしまえば地元政府公認のボッタクリですね。
「そーゆーことは落ち着いてからしたい」という嫁のたっての希望もあり、誰もが知っているリアルト橋などがある大運河はあえて避けてヴェネチアの外れを通る水上バスを選択して乗る。ホテルにチェックインして、荷物のないときにのんびり大運河からの眺めを楽しもうという魂胆。これは正解だった。なにせ、大運河を通る水上バスは混むのだ(後述)。
ちなみに、このローマ広場界隈などヴェネチアの一部には車が入れます。自家用車でヴェネチア本島入りして立体駐車場に車を停めてヴェネチア入りすることももちろん可能。私もそうして良かったのだが、考えた挙句に一日€7-8を節約するために本土にある駐車場を選んだわけ。どこか、せこい。そして結果としてトンデモ駐車場を使う羽目になっているんだから、どこかマヌケでもある。
というわけで、外れの運河を航行するこの水上バスからはあまりヴェネチアらしくない光景を見ることに。
ヴェネチアのホテル、散々悩んだんですよ。ヴェネチアの本島を避けて、隣のLido島とか、本土の車を停めたあたりに宿を取れば当然少しは安い(ただし、それでも高い)。…なんだけど、いつもお世話になっている旅行代理店のお姉さんの助言に従い宿の質を捨てて交通至便なヴェネチア本島の付近のホントにど真ん中のサンマルコ広場至近の場所に宿を取った。
実は事前に旅行代理店のお姉さんが他のホテルを勧めてくださっていたのだが、もたもたしているうちに満室になってしまった。そして、次善の策として選んだのがこのホテルフォンタナ。
事前にStreet Viewで「予習」しておいたので迷うこと無くホテルに到着。S. Zaccariaという水上バスのバス停からスーツケースを引っ張っりつつでも徒歩2分。
ホテルは…
うーん
なんちゅうか
…私が実際に払った金額の半額の値段ならなんの文句もない。だけど、「この値段でこの質かよ」という残念感は満載。おそらくもともとは古いアパートかなんかなんだろう、部屋は広い、天井は高い…けど、古いし浴室はもうリフォーム待ったなしの状態。
さらに、車の中に屋内用スリッパを忘れてきて嫁に大目玉を食らう。床がホテルによくあるカーペットではなく冷たいビニール張りだったのよねん。
一つ大失敗したのは、最初にチロル村に行ったことだと思う。そう、プール・サウナ付き4つ星プラスホテルに泊まったあとに、この三つ星(個人的評定では二つ星)のホテルに泊まればそりゃ見劣りするわなあ。順番を逆にしておけばここまでがっかりしなかったかもしれない。
…と、ここまで思いっきり悪口を言っておきながらいきなり手のひら返しをするのですが、もし、これからヴェネチア旅行をしようという人がいらっしゃったら、実はこのホテルをお勧めしたい理由はあったりします。それはさっきもちょっと書いたように「場所」。これから書いていきますけど、観光の中心となるサンマルコ広場まで350メートル、徒歩4分。これは便利。
本島ではなく、本土側のメストレや反対方向のリド島へヴァポレット(水上バス)やバスにて片道小一時間かけて「通勤」することは可能。だけど、こと滞在期間が短い場合のこの往復2時間の損失は痛いしそれ以上に、こと女性にはトイレ問題…というものがあるような。概してイタリアのバーなどにあるトイレはお世辞にもきれいといえないことが多い。このホテルの浴室だってリフォーム待ったなしと確かに書いた。それでも、多くの人が使う公衆トイレよりは遥かにマシなわけで。そう。徒歩5分とかなら戻ってこようか…という気にもなるでしょ。そういう意味では高くてもあえて中心を選ぶ意味はあると思う。
ついでに言うと、S. Zaccariaという水上バス停も正解だった。この場所、観光客で溢れる大運河経由の水上バスを避け、完全地元民ルートの水上バスでたどり着ける場所だった。おかげで通勤列車並みの水上バスにスーツケースを抱えて乗り込む…という面倒なことをせずに済んだ。
あとはね、このホテル、小規模な家族経営のものだったので、ことフロントのお兄さんとはすぐに顔見知りになった。
このホテル、昔ながらの方式で、フロント脇に全室の鍵(今時のカードーキーではない、昔ながらの鍵穴に差し込むやつ)をかける小棚があり、そこに出かける時は鍵を返却することになっている。大丈夫なのかな…と思ったが杞憂だった。フロントとは顔見知りになり、夜間、別の人がフロントにいた時は、名前と部屋番号を聞かれ、素性を確認された。フロントはこんな小さなホテルなのに24時間対応。あ、私たちの部屋、フロントから階段を上がったすぐのところにある4号室だったんだけど、どうもお隣の部屋が仮眠室だったらしく、深夜、施錠されたホテルの玄関ドアのベルが慣らされる度に、誰かがごそごそと出ていく物音がしてたな。バーなどに面した表通り側でなかった分静かだったはずだが、その意味ではうるさかったような。
まあいいや、とりあえず荷物は部屋に置いたし観光に行くべ。
ここでいきなり観光名所に行かないあたりが私たちらしいというか年寄りくさいというか。向かったのはホテル近所のレストラン。細い運河に沿った小道にテーブルが置いてあったカフェで一休み。
…この世界どこに行っても「ブレない」私はある意味褒められても良いかも。(チロル村でカンパリオレンジ飲んでただろう…とかいうツッコミはいりません)。このビール€6以上した覚えがあるなあ。ビールそのものは…まあ、可もなく不可もなくの印象に残らないラガー。イタリアでワインではなくおいしいビールを所望するというのがそもそも間違っている気がする。
というわけで、自らの充電が完了したところで水上バス停に戻り大運河を通る水上バスに乗る。
さっきも書いたとおり、この大運河経由の水上バスは通勤電車状態。始発からとかでないと座るなんて無理。そして、最前部の席はたぶんだけど、始発から終点まで乗り潰そうという暇な観光客がずっと居座っている気がする。かくいう私も20年前にそんなことをしたような記憶がかすかにある。
…ああ、ベタだ。ベタだ。ベタベタだ。
ベタの上にベタベタにリアルト橋にて下船。観光客あふれる橋へ。
押し合いへし合いようやく撮った橋の上からの写真がこれ。
ヴェネチアの面白いところは水路が中心なこと。人が通れる道はまさに路地ばかりで、簡単に迷うことができた。なぜ過去形かというと、21世紀も17年も過ぎるとおう誰も彼もがスマホという便利な小物を持っているのよね。このGPS機能を使えばこの狭い路地でも迷いようがない(まあ、スマホ片手に周りに気を配らずにウロウロしてたらひったくりしてくれと頼んでいるようなもんだけど)。
そこから細い路地をてくてく歩いてかの有名なサンマルコ広場へ。大運河って逆S字型に大回りしているから実は水上バスでも徒歩でも所要時間はほとんど変わらない(場所にもよるでしょうが)。サンマルコ寺院やドゥカーレ宮殿は翌日に回して、まずはサンマルコ広場にある鐘楼に登る。莫迦となんとかと言われても私は高いところが好き。ただし、同時に実は少し高所恐怖症でもある。
この高さから見ると、運河はほとんど見えない。はっきり言ってしまえばごちゃごちゃした島。ただ、車が一台も見られない、というのは特筆すべきことだと思う。
そしてこの日はホテル近所のAl Vecio Cantoというレストラン。観光客のあふれるあたりからはちょっと離れていて、「ベニスの裏道レストラン」的な佇まいが気に入りましてね。
生ハムピザ
正直…まあまあ。特に感動もせず。翌日に観光ガイドさんに言われたこと。「ローマより北でおいしいピザを食べるのは無理です」。真偽は謎です。
嫁はパスタ。えびの殻の剥き方がわからんとかで結局半分こして私もパスタをおいしくいただく。
デザートにビスケットとワインを頂いたのだが、正しい食べ方は、ビスケットをワインに漬けるらしいのね。物を知らない私は別々にいただきました。美味しかったです。
翌日へ続く。