大逆転?春のドイツのアスパラ祭り


朝食を食べながら嫁が言うのだ。「最近両親にいろいろお世話になったから食事にでも招待しようよ」と。ふむ、なんの異論もない。いつもお世話になってるしね。すると、嫁は思い立ったが吉日と言わんばかりに階下の両親宅へ直行。数分後に、今度の土曜日の夕飯を一緒に食べる…という約束を取付けてきた。…変なところで行動力のあるやつだ。

今度はおもむろに電話を始める嫁。どこにかけるかと聞けば、レストランに予約を入れると。待て。朝の10時にレストランに電話したって誰も出るわけないだろ。万が一誰かいたとしても迷惑だろ。私だったら早くてもお昼時の忙しい時間を避けて午後2時とかに電話する。やめろ莫迦と言っているうちに誰かが電話に出た。え?なに普通に予約しちゃってる?

 

電話を終えると嫁はどや顔で

 

「土曜日の午後7時に4名予約できました」

 

朝の10時にレストランに電話するのは非常識…という私の常識がドイツでは間違っているのでしょうか。ちょっと自信がなくなりました。

 

そして、翌日の土曜日。近所のこの界隈ではいちばんおしゃれな、結婚式の日本の両親とこちらの両親との食事会にも使ったレストランへ。

 

基本的にこっちの料理って、「肉と添え物の野菜とイモ」というのがお約束じゃないですか。つまり、野菜はあくまで「添え物」で、肉が主役。まあ、肉じゃなくて魚の可能性もあるけど、どっちにしても野菜は添え物。

 

ところがドイツでは、年に一度だけ野菜がその「添え物」という脇役から主役に躍り出る期間があるんです。それが4月から5月にかけて。少なくとも私が住んでいるドイツ北部ではこの時期に「春のアスパラガス祭り」が各レストランで開催されるのです。無論、そんな日本のどこぞの製パン会社のようなイベントは私が勝手に名づけただけですが。ちなみにここで言うアスパラガスはホワイトアスパラガスのみ。それも、地元ドイツで採れたものが旬のものとされている(ように見えます)。

 

はい、この黒板の「特別メニュー」に注目―。ドイツ語で書いてあるからテキトーに意訳すると…

0105c

ドイツ産アスパラガス (皮をむく前およそ500グラム)

 

…とじゃがいも €14.9

…と生ハム €20.5

…ととんかつ €20.5

…とサーモン €27.5

 

バターまたはオランデーズソースもつけられます。

 

私の言いたいこと、わかってくださいますか。このメニューの主役はあくまでアスパラガス様なのです。生ハムもとんかつもサーモンもあくまで「添え物」なのです。この大貧民で革命が起きたかのごとくの大逆転が、この「春のアスパラガス祭り」のときだけ見られるわけです。

 

実は上の写真、別のレストランで撮影したのですが、今回行ったレストランも値段も内容もほぼ同じ。つまり、「春のアスパラガス祭り」のお約束のメニューと言ってもいいもの。かくして…とつなげていいのか、別に狙ったわけではないのですが4人ともアスパラガスを注文。

 

まあぶっといなアスパラガスですこと…。

0105a

私はアスパラガスと魚

0105b

…と、ソースとじゃがいもはテキトーに分けてくださいと。嫁と二人だったら堂々と嫁のも写真に撮ったけど義両親の手前自重。他の皿の写真はありません。じゃがいもの写真の上の方に「アスパラガスととんかつ」が写ってます。

 

まあ、3人でワインを1本開け(嫁は運転手として飲んでません)、その他水だコーヒーだで4人のお会計は€128.4でした。…ドイツのイナカはホントに安いので助かります。嫁と私が招待するという約束でしたので、チップを含めて€135をウェイトレスに渡して帰宅。

 

帰宅後、義父からお小言をいただく。

 

義父:「チップに7ユーロも渡すなんて気前が良すぎる。このあたりでそんなにチップを上げるやつなどいない」

 

…ふーむ。

 

「大手町のサラリーマン100人に聞きました。答えは7つ。海外旅行で戸惑うことと言えば?」

 

という設問があったらその中の答えの一つには必ず「チップをいくら渡していいかわからない」というのが入ってくると思う(はいはい、「昭和おつ」というツッコミはいいから)。私がアイルランドで身につけた肌感覚はなんとなく10%くらい置いていけばいいか…というもの。なんて取ってつけたような言い方をしなくても、アメリカとかは知らんけど、なんとなくのチップの額って1割じゃないかしら。

 

その肌感覚にそのまま従えば、€128.4の10%といえば端数切り捨てで€140…という結果になる。なんだけど、ローカルルール的に、ドイツ人がドケ…じゃなかった、質実剛健なことも計算に入れて控えめに€135という数字をはじき出したのだが、それでも文句言われたぞ。

 

嫁いわく

 

「ああ、今回なら、端数を渡すくらいで€130で良かったくらいよ」

 

はぁ?チップは1%以下?それってほとんどウェイトレスさんを莫迦にしているレベルじゃないですか。そんなことしてるから海外でドイツ人はケチと言われるんだ…と思わず言ってしまった。そう言えば私たちの結婚式の時は、台所の人も含めてひとり20ユーロ渡したけど、これは完全に「ご祝儀相場」なんだろうなぁ。

 

日曜日を挟んで翌週の月曜日。ここで話はなぜか階下の義両親の居間のテレビに移る。なんと、21世紀も17年が経過しているというのに古臭いブラウン管のテレビを使い続けていたのだが、ついに壊れた。。いつもぶーんという低い嫌な音がしてまして、いつ壊れてもおかしくないな…と思っていたら、この日、突然焦げたような異臭とともに画面が映らなくなったと。はい、議論の余地なく寿命です。

 

急遽テレビがいると言い出して、近所の電気屋へ行くらしい。近所…と言っても同じ村ではないのですが、日本的に言えば街の電気屋さんなのに遠くの大きな街の家電量販店の攻勢にも負けず、「町の電気屋連合」みたいなものに加入しているので、値段も量販店には勝てないまでも、さほどひどくもない…そんな感じの店。

 

義両親、ネットという便利なものに目覚めておらず、テレビがないと生きていけないらしいので、慌ててその近所の電気屋へ。ちょっと待て、と引き止めてその店のサイトにアクセス。大型量販店と比べても値段に遜色のないお買い得品を数種類選択し、それをメモ帳に書き出して持たせた。ちょうどパナソニックのテレビが安売りになっていて、お財布的にも優しい感じだったのでこれがいいだろうなと。

 

さあ、1時間も経ったろうか、義両親が件の電気屋から戻ってきまして…

 

義父:「パナソニックのでいいのがあったよ。なんと、画面が曲がっているんだよ。画質もいいし。…ちょっと予算オーバーだったけど」

 

聞けば、私が勧めたお買い得品の2.5倍もするようなテレビを買ったらしい。待てやい。同じ画面の大きさでなんで2.5倍もするんだ?画面が曲がってるってなんの利点があるの?そう言えば会社の同僚が韓国メーカーのスマホで一辺の画面が曲がっているやつ持ってたけど、正直なんの意味があるのかわからなかった。本人に聞いたところ「クールじゃん」だと。…はいはい、さしたる意味はないのね。それにしてもパナソニックに画面が曲がったテレビとかあったっけ?

 

それよりも何よりも、私の7ユーロのチップに気前が良すぎるとかなんとか言いつつ、ご自分は意味があるとは思えない曲がった画面とやらにン百ユーロを無駄遣いですか。なんか私の常識と金銭感覚が異なっている気がする。本人曰く、「テレビは20年持つから」。お言葉ですが、最近のテレビなんて10年持たないんじゃないかな。

 

ちなみにテレビは在庫がなかったのか、翌日にに無料で配達・設置してくれるとのこと。翌朝テレビが配達されたと言うので階下に見に行ってみた。

 

そこには韓国S社の曲がったテレビが鎮座していた。…パナソニックじゃないやん。