バート・ハルツブルク。空中の散歩道


君はBad Harzburgを知っているか…と昭和の頃の少年誌の煽り記事のような始まりですが、今日はバート・ハルツブルクのお話です。Google先生的にはバート・ハルツブルクと表記するらしいのでそれに従います。ドイツ中北部のハーツ山の麓にある人口2万人ちょいの小さな町です。…はいはい、よほどのドイツマニアの人でも知らんでしょうね。そもそもこの日記にすら初登場な気がする。


実は数年前に一度訪問したことはあったのですが、印象は「死んだ町」でした。それが平日だったのかもう記憶が定かではないのですが、町の中心部の目抜き通りには老人ホームから出かけてきたような感じのお年寄り以外誰もおらず、日本のシャッター通り商店街の人通りをドイツに持ち込んだらこんな感じだろうなあ…という趣。


ところが、市長さんが「これじゃあいかん」と町おこしをしたのか詳細は知りませんが、Baumwipfelpfad Harzなるもんが作られて、それを目当てに観光客が大挙して押しかけているらしい。そのあまりの盛況ぶりに入場料金が15%引き下げられたとか(落ち着いて考えると需要供給のバランスから考えるとおかしなことをしているわけですが)。で、行ってみたわけです。


ところが、その日は着いた時から様子がおかしかった。車を停めようと裏通りに入って行くと消防士さんに止められた。で、別の道に路上駐車(合法)して、表通りを歩いていると、今度は池の脇に消防車が停まっていて、池の水をポンプで汲み出している。


切符売り場は閉まっており、これは何かがおかしい。聞けば


「今日は近所のホテルで火災があったので、閉まってますよ」


とのこと。(その火災のローカルニュースはこちら。ドイツ語です)


トボトボと引き返しました。…お昼ごはんは食べたけどね。


というのが数週間前のお話。そして、そうなるとますます気になるのが人の性。再び訪問したわけです。


その、ホテル火災の日にも感じたのだが、目抜き通りが活気づいている。子供連れなども含めて沢山の人が歩いている。以前のバート・ハルツブルクとはとても同じ町とは思えない。その通りを歩いて、前回閉まっていた切符売り場に向かうと…


行列出来てるし。


嫁いわく、「ネットで調べたら行く前に全部わかっちゃって面白く無いでしょ」…とのことで、下調べはせずに向かった(私の場合、単に億劫だっただけなんだけど)。で、並んでいる時に調べると、ロープウェイで頂上に向かえるとのこと。

(大きい物は、ここから見られます


…なんだこのコドモが描いたような地図は。正直何が言いたいのかさっぱりわからん。今、現地に行ったあとにこの地図を見返すと、実は要点をついていてわかりやすい地図なのだが、現地では?が並ぶばかりだった。とりあえず、4キロくらい歩くみたいだし、だったら、上までロープウェイで行って、降りてきたほうがきっと楽だよなと堕落思考でケーブルカーの片道券と入場券のセットを購入。


ロープウェイ乗り場は、外まで行列が伸びている。あのー、私達、浦安のねずみ島に遊びに来たわけじゃないんですけどね…。なんでこんなに混んでるのよ(回答:ドイツの子どもたちの夏休み時期の日曜日だから)。


待つこと20分ほどで、ようやく私達は古ぼけた20人乗り程度のロープウェイに乗ることができた。乗ってわかったのだが、運行方式はケーブルカー式。つまり、2台のロープウェイが一斉に山上駅と山下駅から出発するという。ケーブルカーとの違いはまあ、当たり前だけど、完全に「複線」になっていることくらい。普段は15分おきの運行ながら、多客期につき、10分かそれ以下の頻度で運行していた。(あのー、無知を晒すようですが、これって普通なのでしょうか?1号機、2号機ともに専用の索道をおのおの1本持っていて絶対に交わらないのです)

(乗るとすでに山上駅が見えた。別に歩ける距離だな。…だるいだろうけど)。


ものの数分で山上駅に到着。山頂は、当然のように展望所になってまして…


うむ。いい眺めである。


これがバート・ハルツブルクの街の全景(右側の木の影に一部隠れているので、正確には半景というべきかも。そんな言葉があるかどうかは知らんけど)。目を凝らしてみると…


火災に遭った「元」高級ホテルもしっかり写り込んでます。


ほんじゃ、今から下り始めますか。


道は整備されていて歩きやすい…というか普通に車で来られる状態ながら、一般車両はもちろん通行禁止。


途中でさっきの「コドモが描いた」地図に赤色で記されていた短絡路発見。楽をしようと嫁に提案したのだが…

(テキトー訳)
短絡路。平均傾斜25% 経験あるハイカーが適宜な靴を履いている場合のみ使用のこと。


議論の余地なく却下される。ぶぅー。


かくして、車も通れる緩やかな坂ゆえに長い坂道を降りることに。とはいえ、途中にいろんな仕掛けがしてあり退屈しない。


さらに途中には…バス停があるぞ。もちろん、ハイカー向けのバスなのだろうけど、…こんなとこにどんなバスが入ってくるんだ?


バスは一方通行での運行で、季節運行で毎時59分に通過。一日5本のみ。1台のバスがぐるぐる回っていることが見て取れる。12時と15時にバスが来ないのはわかりやすく運転手さんの休憩時間だと思われる。


ここにバスがやってくるんだって。どんなバスだろう。やっぱり日本的に言えば、マイクロバス、あるいはいわゆるチョロQバス的なやつが来るのかな。気になるけど、まだバスが来るまで10分以上あるので諦め、上の写真の右の道へ進む。


さっきの短絡路の入り口とぶつかる。ここを見る限り、そんなすごい道には見えないが、やっぱり上と同様に脅す気まんまんの看板が立ててある。


その脇には、Baumwipfelpfad Harzの入口。


あとで気がついたが、ここは「出口」。たいがいの訪問者は、バート・ハルツブルクの市街地から徒歩でやってきて、ここを出口に出て行って、下の道を街に戻るらしい。そう、ロープウェイに乗る必要なんてなかったのよねん。


こーゆー散歩道…なんですよ。けっこうな高さの位置に歩道橋のように橋が架けられているわけ。普段は見られない木のうえのほうが見られるという趣向。なるほど。考えましたな。ドイツには何ヶ所も同じようなものがあるらしいが、日本ではまだじゃないかな。日本の町おこしをお考えの皆様、視察にお越しになってはどうでしょう。日本人のガイドさんも近所にお住いですよぉ。


途中には東屋(ただし空中)などもあって、ここは売店。大挙して押しかけている観光客に疲れ果てたお兄さんがジュースやアイスを売ってました。


この空中の散歩道、特にコドモを退屈させないようにいろんな趣向が凝らされておりまして、子連れでも楽しめると思います。


エンジン音に気がついて、下の道をふと見ると、バスがやってきてました。…って、市内をフツーに走っている大型バスやん。嫁はなんでバスの写真なんか撮っているのかと呆れ顔。…放っておいてください。


この散歩道を1キロほど歩いて本来なら最初に来るべきハイライトとなるドームが見えてきました。こっちから来ると、最上段から数えて2層目に到着するのね。さて、最上段に行きましょうか。ところが…


…嫁はこの網の隙間から数十メートル下の地面が見える階段を見て「高所恐怖症につき登るのを拒否」カードを使ってきた。はいはい。優しい私はもちろん一人で登りましたよ。嫁放置で。


なんか突端部に人だかりができてます。


♪ガラスのジェネレーション


どこぞの国にはガラスの床の吊橋があるらしいし、それに比べるとイマイチ大したことはないのですが、それでも男性なら股間に違和感を覚えると思われる床でした。だからといって、歌ってごまかしてもどうもならんのですが。写真に撮ったようにちゃんと行きましたからね。


一段下から見た図。うん。日本の女学生(死語)は制服姿でここに旅行に来てはいけないな…。


ちょっと木が邪魔なんですけど、下から見るとこんな感じのドーム状の建物でした。


市内の目抜き通りまで戻ってきて、アイスクリームを頂きました。ちなみにこの空中の散歩道とロープウェイの共通券のお値段はお一人様8.5ユーロ。1000円で一日遊べたので安いものだと思います。…まあ、だからといって、日本からわざわざ訪問する価値があるかどうかとなると疑問ですけど。