【2016年桜舞う日本新婚旅行5】花見ツアーと謎のお蕎麦屋さんと…

翌日は、いよいよ本題。「桜を見る」を目的に佐久市にある懐古園へ。この日はわざわざ東京から駆けつけてくださった友人2名とそのお子様の三名が飛び入り参加。


懐古園。駐車場にC56蒸気機関車が静態保存されてます。…って実は蒸気機関車なんてD51しか知らないのよ。今Wikiを見たらなんと戦前に作られたSLなのね。それにしてはきれいな状態で保存されてます。地元の方が尽力されてるんでしょうね。

(写っているお子様はまったく知らないお子様であります)

まだ桜は開花前だった。

…それでも、きれいだった。

正直、よくぞ日本人に生まれたと思った。桜、きれいだわ。なんで日本に住んでいる時にこの美しさに気がつかなかったのかと心憂く思う。嫁も大喜び。


そののち、今度は上田城跡公園へ。ここ、懐古園より標高が200メートルほど低いらしく、桜が満開になっているらしいのだ。

心奪われるような満開の桜。

…だったのだが…


…人多すぎ。

(真田神社ってありましてね。そこにお参りするにも並ばなければいけないという…)


日本に住んでいない私にはさっぱりわからない話なのだが、NHKのドラマかなんかで真田丸がブームらしい。そのブームと、日曜日と、満開の桜と晴天が見事にハマった結果が上の写真のような次第。桜は本当に美しかったがそれ以上に人が多すぎた。車で向かったのだが駐車場を探すのにも一苦労したし。


そののち、東京から参加してくださった友人が言うのだ。


「信州に来たんだからそばが食べたい」


一理ありますな。うどんが食べたいとかほざくどこぞのアホ夫婦とは違いまともですな。蕎麦屋さんに行きましょう。


ところが。これが実に難題だった。駅前をはじめとして市中心部のお蕎麦屋さん、午後2時から5時くらいまで休憩時間になっているのだ。現在時刻午後4時過ぎ…思わぬ食事難民になる。


結局午後4時半を過ぎた頃、ようやく「開店前だけど入れてくれる」というお蕎麦屋さんを友人が見つける。このお蕎麦屋さんが普通の表構えからは想像もつかないようなとんでもないものだった。

(琴笙庵さん)


この東京から参加してくださった友人の一人、もう驚くほど交渉能力や適応能力が高い。例えて言えば、ドラえもんのテキオー灯がなくても深海10000メートルまで潜れるような人(ちょっと意味不明ですね。まあ、深くは追求しないでくださいな)。

(後ろの達筆の書は、女将さんのです…たぶん。)


その人が交渉してくれたのだが、まあ、ここのたった一人で切り盛りをしているという女将さんがすごい人だった。見かけは…関西のおばちゃん。


「私ひとりでやってるの。忙しいから料理ができたら自分で持って行ってね」


…すごいことを言う人がいるもんだ。


すごいのは言うことだけではなかった。それだけの人数ならとお座敷に通してくれたのだが…

…いや、食べ物屋さんのお座敷というより、田舎のおばあちゃんの家のお茶の間なんですが。


さらに…


「飲み物はそこの冷蔵庫から勝手に持って行ってね。…あ、もちろんお代はいただくわよ。もしそこにないものがほしければ、表通りの自販機にでも買いに行ってちょうだい」


(かくして冷蔵庫から「セルフサービス」で持ってきた地ビール、琴笙庵の赤備えビール、この言葉でググったら、なんとまあ、このお蕎麦屋さんが一番上に出てきたよ。このリンク上で女将さんのご尊顔を拝見できます…ってあれ、今気がつく私も相当なマヌケだけど、琴笙庵って、このお蕎麦屋さんの名前やん。これは地ビールではなく、お店用にラベルを張り替えたビール??)


…それでいいんですか。

(ちなみにこの本ね。あら、つい最近ブームに乗って上梓された本なのね…。)


女将さん、料理に忙しいはずなのだが、お手洗いにに出た私を捕まえて、自分が載った雑誌を嬉しそうに紹介してくださる。さらに始まる身の上話。なんでも京都のお寺で得度したとかなんとか。確かにゆっくり話を伺えば相当に興味深い方だと思う。


料理はおまかせにしてくれというのでそれを信じて頼むと…


…地鶏。

(テーブルの上を片付けてから撮影しろよ…というご批判はあまりにごもっともです。)


さらに山菜のおひたしや地野菜の天ぷらなどが次々と出てくる。正直美味しい。だが、ヨーロッパに住むこと20年ほどで人を信じるということを忘れてしまった哀しい私は、「これはぼったくられるパターンじゃないのか」と気が気でならない。


いや。ぼったくられるんじゃないかと思った理由は他にもある。女将さんのケータイが鳴りまして、向こうでなんか話をされてるのね。で、しばらくするとこちらの座敷にやってきて仰天発言をするのだ。


「知り合いの猿使いが上田城址公園で今日仕事をしていて今終わったんだって。もし良かったら呼んであげるよ。もちろんタダというわけにはいかないけど、ちょっとした気持ち程度を出してくれるなら呼べるけど」


日本語を解さない嫁が何が起こったのかという顔をしてこっちを見ているので


「猿呼んでくれるって」
「猿ぅ?」


何莫迦なこと言ってんのこいつは…という顔でこっちを見る。確かに、食べ物屋に猿を呼んだらまずい気がする(もしか外でやったのかしらんけどね)。…いや、私は単に訳しただけですので。結局丁重にお断りしたのだが、私の中で虫の知らせアラーム鳴りまくり。今こうやって日記にまとめていると、もしかお願いしていたら面白いことになっていたかもなあ…とも思うが。


そのうちおそばが出てきた…友人が運ばされていたけど。

(自慢の薬膳そば)


おそばも美味しかった。ただし、嫁には不評。うどんのほうが美味しかったと。ほう、なぜ?


「おそばは冷たかった。うどんは暖かかった」


…前日の丸亀製麺のうどん、茹でたてが温かい汁に入っていた。これがおいしかったのだと。それに対して、今日頂いたのはざるそば。温かいほうがおいしく感じたらしい(つまり、琴笙庵さんには微塵も罪はない)。


そんなこんなでお会計ターイム。疑心暗鬼のまま女将さんのところにいくらか聞きに行く。


…全然ボラれてなかった。むしろとても良心価格だわ。


女将さん、ご親切にしてくださったのに変な疑いの目で見て申し訳ありませんでした。もうそんなふうに人を疑うことしか知らない自分を恥ずかしく思います。


さらには、女将さん、店の外で一人ひとりに火打ち石で切り火を切ってくださった。厄除けの意味があるんだそうな。このおかげもあってか、この新婚旅行、息災に終わりました。女将さん、美味しいおそばと忘れられない思い出を作っていただきありがとうございました。