Jさんから「アイルランド人の彼氏がいて日本からアイルランドに行きたいと思っている」というメールをいただきました。以下、私の返事を転載。Jさんのプライバシーを考えてJさんのメールは転載せず、一部改変済みです。皆様のマジメなコメントをお待ちしています。
メールありがとうございました。Snigel@アイルランド真実紀行理人です。マジメなメールにはマジメに返します。が、その分耳が痛くなるようなことを申し上げる可能性があることをあらかじめご了承ください。
Jさんがまず検討すべきは、言い切ってしまいますがワーホリです。30歳まで合法的に働けますから。ただし、一年間合法的に滞在できても、就労できるかどうかは別問題です。現在、日本のワーホリメーカーが結構いますけれども、彼(女)らは就労場所がほとんどなく右往左往しているのが現実です。
何らかの理由でワーホリが無理の場合は、不本意でしょうが彼におんぶにだっこにならざるを得ません。基本的に就労許可は下りませんから。就労許可なしにヤミで働こうなど考えないほうが無難です。最低賃金以下でゴミのように扱われれば御の字ですから。それすら現実には無理だと思います。
おそらくPIIGSという言葉を耳にされたことがあると思います。ヨーロッパのありていに言って足を引っ張っている国リストで、その中にアイルランドは含まれており、今のギリシアの騒動がアイルランドに飛び火するんじゃないかと恐れられています。そんな状況ですからアイルランド人、あるいはEU内の人間が仕事がないと右往左往している中でガイジンのJさんが合法的に就労できる可能性は限りなく0です。
強いて二つ例外を挙げれば、ITだとか介護とかにスキルがある場合。よーするにアイルランドの経済発展に大いに貢献できる場合か、アイルランド人がやりたがらない、死語ですが3K職場に就労を厭わない場合。ただし、どちらの場合もすでに長きに渡り経験があるというのが条件になります。いずれにせよ、失業率が13.7%とかいうとんでもない数字ですので、一昔前ならうまくいったこの線でも現在では厳しいと思われます。
もうひとつが、彼と結婚、あるいは事実婚をした場合。この場合、EU市民と同等の資格が得られるので、アイルランドで就労は可能です。ただし、不景気のきょうび、事実婚の認定はかなり難しいらしいので、実質的には籍を入れることが必須になろうと思われます。果たして、彼が、あるいはJさんがこれを受け入れられるかどうかは私にはわかりません。ただ、冷徹な事実として、これくらいしか可能性がないというのが現状です。
やっぱり、もっとも大事なことは、上の事実を告げて、彼と冷静に話してみることだと思います。その上で彼が、「いや、アイルランドに来れば何とかなるよ」くらいのことを言うのであれば、残念ですが、彼はJさんのことを本気で考えていないと思います。彼が本気でJさんとの将来を考えているのであれば、きっとより建設的なことを言うと思いますので。
もうひとつ、まあこの辺はnone of my businessといわれれば返す言葉がないですが、彼はJさんがアイルランドに本格的に来る前に一度日本に来てJさんのご両親にきちんとあいさつをすべきだと思います。ご両親やご家族の心配を少しでも少なくして、あわよくば二人の関係を理解していただくことはJさんの将来にとって重要なことだと思いますから。
残念ではありますが、ひとつの事実として、このような相談メールをいただいた人で、「アイルランドでうまくいった」というお礼メールをいただいたことは残念ながらただの一度もありません。内容が厳しすぎてお気に召さなかったか、果たして、なんだかんだでうまくいって私にメールを送るのを忘れてしまったかは謎ですが、マジメなメールをいただいた以上、私には「きっとうまくいく」なんておためごかしなメールを書くのではなく、冷静な事実をきちんと告げる義務があると考えています。その上で、Jさんのご気分を害されたのであれば申し訳なく思っています。
Jさんがこのメールを読まれた上でいろんなことをきちんと調べてそれでもやるというなら私としてもできる限りの応援をします。とりあえずは冷静に彼と話し合ってみてください。Jさんの決意が「しょせんは恋愛でしょ」なんて鼻で笑われないことを切に願っています。