名前はめでたい吉祥航空搭乗記

上海から日本へは吉祥航空なる航空会社を選んだ。この区間、残念ながら会社が出してくれずに自腹となったのでとにかく安い航空会社を探したのだが…なかなか見つからないのだ。


まず、ANAのような大手の航空会社は片道運賃を出していない。出していても完全な普通運賃で福岡まで片道11万とかほざく。全く論外。で、日本でも事業を展開している春秋航空が佐賀(福岡)とか言って上海=佐賀を運行しているのだが、こちらも高い。


この航空会社、なんか一昔前のRyanairのような宣伝をしている。しかもさ、「1円セール」と称して、安さを全面に出しているのだが、いざサイトを訪れてみると「1円(でも、燃油サーチャージほかは含まれていないよ)セール」だったりする。さらには預け入れる荷物の許容量が低い(超える分は容赦なく超過料金)などと、慣れていない人ほど使うべきではない航空会社。


しかも、なぜかは知らないが、航空券が全然安くないのだ。まあ、種明かしをすると、私が日本に帰ろうとしている日は中国の国慶節という日本で言えばゴールデンウィークがまさに始まろうとしている日だったのだ。なので、どの航空会社も高い。うーん、困った。


そんな中で変な聞いたこともない航空会社を見つけた。その名も吉祥航空(ちなみに、この日記を公開した時サイトは落ちてましたが、それがこの航空会社のクオリティです)。値段はまあ、東京から九州への大手航空会社の通常片道運賃と同レベルなのでなんとか諦めのつくレベル。…サイトに行くと、中国語以外はほとんど工事中状態。予約をしてみようとしたが、エラーが出る。結局旅行会社のサイト経由で買うことに。


なんとか予約をした後に、気になったこの航空会社のWikiを見てみた。


(ここからWikiの記事の転載)
緊急着陸妨害事件
2011年8月13日、カタール航空(QR) 888便(ドーハ発上海/浦東行き)は、燃料不足による「メーデー」を宣言し緊急着陸を要請した。それを受け管制塔は、QR888便の前方を飛行中の吉祥航空 1112便に着陸を中止し順番を譲るよう指示を数回送ったが、吉祥航空機のパイロットは拒否し航路を譲らなかった。カタール航空機はその7分後着陸した。「メーデー」は航空機、船舶などが発するSOSに当たる緊急信号で、カタール航空機には着陸時には残り5分間分(一部メディアでは4分間分)の燃料しか残っていなかったという。航空機の歴史の中で、他機の緊急信号を無視して航路を譲らないというこれだけ悪質なケースは過去に例がない。なお、後日、カタール機側の燃料は30分以上、吉祥機側の燃料は1時間以上残存していたことが報道されている。
2011年8月29日、中国民航華東地区管理局は、緊急着陸を妨害したとして吉祥航空機の韓国籍機長の国内パイロット免許を剥奪し、吉祥航空自身には3ヶ月間のペナルティ(経営拡大申請の受理を停止し、運航枠を10%削減する)を与える事を発表した。
(転載ここまで)


…なんというか…酷いな。一気に不安になるが、まあ、なんとかなるでしょ。


で、上海から日本へ帰る当日。ホテルから乗車した大手の会社のタクシーは新型のタクシーでボラれることもなく快適。200元(4000円)で、ちょうど日本の東京都心から成田空港の距離にある浦東空港へ。


空港の搭乗手続き時に座席の選択はなし。事前に予約するサービスもなし。ヒコーキは沖止めだったので、ターミナル内を延々歩くことなく(そのかわり、空港内をバスで延々移動して)ヒコーキへ。


ヒコーキはなんの変哲もないA320だった。シート配置も前方2列にビジネスクラスがあるだけのなーんの変哲もないもの。そうそう、この航空会社、売りは「フルキャリアサービス」つまり、LCCじゃなくて、機内サービスなどが期待できるらしいのね。


それで…なのかは定かじゃないけど、各座席にはクッションが備え付けられていた。たぶんコーポレートカラーと思われる朱色の。


…そう書くと響きはいいが、色は抜けているし(おそらくクリーニングもしていないと思う)しかも、邪魔…なのだ。必要以上に分厚いので腰当てに使っても違和感があるし、頭の後ろに置くにも邪魔。しばらく意味もなく膝の上で持て余していたが、しまいにはお尻の下に敷いてしまった。


今回の目的地は福岡。東京から福岡程度の短距離なのだが、前回乗った中国ナントカ航空ではいちおう機内食と飲み物が出た。で、「フルサービス」を謳う吉祥航空では…


水とカップケーキ(選択の余地なし)。


えっ?水?カップケーキ?


時刻は昼ごろ。朝の6時台に軽く朝ごはんをホテルで食べただけの私、昼食と(それと一緒に出る軽いお酒)に期待をしていたのだが…そうですか。そーゆーオチですか。


ちなみにこの日は大型の台風が台湾を直撃して被害が出た日。上海から福岡までベルト着用のサインが消えることはなかった。そのためこんなサービスになったのか、それとも上海=福岡はいつもこのなんちゃって機内サービスなのかは不明。


ちなみに、浦東空港からのフライトが定刻だったことはただの一度もない。混雑しすぎているのか詳細は不明ながら、いっっっっっっっっっっっっっつも遅れる。しかもさ、この吉祥航空だけじゃなく、中国ナントカ航空まで含めて遅れに対するアナウンス(出発の見込み)などのアナウンスがまっっっっっっっっっっったくないのだ。結果として、いつ出発するのかさっぱりわからないまま機内でぼーっと待つハメになる。


機内で暇だったので観察をしてみた。まず、7割くらいの座席は埋まっていたのだが、日本人は5人も乗っていなかった。なぜそう言い切れるかというと、福岡空港到着後、日本人は日本人専用の入国審査でさっさと荷物が受け取れたのに対し、外国人の入国審査は列が何重にも伸びていて相当時間がかかっていた模様。で、荷物の受取所で待っていた人が5人もいなかったのね。なので。


じゃあ、残りの人は…といえば、まあ、ご賢察の通りたぶん中国人。まあ、この人達が賑やかなのよ。ほとんどノリは町内会のバスツアー。福岡に爆買いツアーをしにいくのかなんなのか…。なんとなく東京とか大阪に比べると福岡って地味な感じがするのだが。


でね。上海で地味に辛かったこと。私、相方のインド人と寝ている時以外はほぼ一緒にいたのだが、どうも私はこのインド人の通訳か何かに見えるらしく、みんな中国語でガンガン話しかけてくるのだ。残念ながら私のわかる中国語なんてニーハオくらいだからポカーンとすると、相手が例外なく驚いた顔をする。


この機内では、日本人などほとんど乗っていないようだから、客室乗務員さんも中国語で話しかけてくる。日本に帰れば、もうそんなことは起こらないに違いない。


かくして、ほぼ一年ぶりに踏む祖国の地。…わざとこの大仰とも言えるこの言葉を使ってみたけど、実際そう。海外に何年住もうと私の「祖国」は日本なのだ。中国人他の外国人の入国審査の列を横目に悠々と帰国。荷物を受け取り外に出ると、地元の観光協会の方が


Welcome to Fukuoka♪


と言いながら、小冊子を手渡してくださった。


…私は、日本人じゃあ!


と思わず怒鳴ってその小冊子を叩き落とした…わけはなく、にっこり笑って受け取りましたよ。