3月17日。アイルランドはSt Patrick’s Dayです。ドイツは…平日です。が、しかし、アイルランドのカレンダーで仕事をしている私、祭日だったりします。元旦を除けば本日最初の祝日。
何かしよう。
Cさんに相談しました。
「…うーん。掃除して、それから…。」
却下。
性能の悪い脳みそをフル稼働して考えた。この祭日を有効試用してどうにかしてこの退屈な村から脱出しなければ。
ちーん。
思い出した。Cさんがちょっと前に言っていたのだ。
「お皿とか、揃えたいね」
そうだ、お皿、買おう。
うちのお皿、私が某スゥエーデンの巨大家具屋から買ってきた一番安いセット以外は、どっかの焼き物の街で買ってきたんだと。私の個人的意見を言わせてもらえば、高いお皿とか、洗うときにすべらせて割ったりとか怖いからイケアの安いのでいいのよ。なのにさあ、ドイツだからなのか知らんけど、お皿もそうだけど、ワイングラスなんかもクリスタルの高そうなやつが揃ってるのよ。まあ、ちょっとこの焼き物の街を見てみたくなったし、Cさんが行くくらいだからさほど遠くないに違いない。
かくして、向かったのはFredelsloh(フレーデルスロー)という村。ちょっと自慢していいかな?今調べたらこの村についての日本語の情報は絶無。つまり、日本語サイトとしてはネットで初紹介だ。こりわ。まあ、日本語のサイトがないということはどーゆーことなのか、推して知るべしですが、続けます。
行き方としては非常に簡単で、ハノーヴァーとカッセルを結んでいる高速道路A7の70番出口で降りて西に進めばいい。迷いようがない。…いや、あるかも。村に入っても、気をつけていないと気がつかないで村そのものを通過してしまう可能性がある。
…はい。こちら、焼き物の村Fredelsloh(フレーデルスロー)の目抜き通りであります。どー見ても、フツーの住宅街…ですな。これは。車で走り抜けたら本当に何も気がつかない可能性がある。
しかも、です。一番最初に書いた通り、この日はドイツは火曜日。もろ平日。しかも夏のホリデーシーズンならまだしも3月。観光客なんてただの一人もいない。ホントにね、この写真の風景、私が住んでいる村のそれと何も変わらない。
車を降りたらさっそく店があった。
オフシーズンは週末のみ営業。
ちょっとー。少しくらい下調べしてから来ようよ。
そして、明かりがついている店を見つけた。入るなりに言われたこと。
「すいません。今からお昼休みです」
…時刻は12時半。なるほど。お昼時ですなあ。
事前の調査の重要さを痛感しつつ、こりゃどうもならんぜよと思い始めたら、なんか店があるよ。
一人だったら入るのが憚られるような静かさだったが中にずんずん入っていくCさん。ある意味頼もしい。
中に入ると…誰もいない。うわあ。私がコドモの頃に行った近所の店とかがそうだったなあ。待てど暮らせど店主のおばあちゃんが出てこないの。その気になれば万引きし放題(してません)。同じだわ。しばらくしたら、いかにも焼き物を焼いてました…という感じで手に泥(でいいのか?)のついたおばあちゃん登場。ぱちっと店の電気をつけてくれる。
さて、Fredelsloh(フレーデルスロー)の焼き物って、こんな感じなのよ。とりあえず、この店のをご覧いただきましょう。
(表のショーウィンドウ)
ここに写っているお皿、一枚7ユーロ(900円)。他の店にも行ったが、7-8が相場。
やっす。
なんだよ。うちにある皿も同じようなもんだから、この値段なのか。もっと高いもんだと思って気を使って扱ってたよ。生産者直売だから安いのかなんか知らんが、手作りにしては破格に安いわ。
村の中心の教会近くに博物館があった。
ご用の方は呼び鈴を押してください。…と書いてある。
もう私なら完全にスルー物件だが、臆せず果敢に呼び鈴を押すCさん…やめろよ。もう。
インターホンの向こうからおっちゃんが…
「裏手に入り口があるからそっちで待っててください。今行きます」
ところが、中にいるはずのおっちゃん、いつになってもドアを開けてくれる気配がない。数分後、私はある可能性に思いが至る。そして、それは当たっていた。
おっちゃん、どこからともなく自転車で現れる…の巻。
正直、中は外から想像が充分につくレベルのしょぼいものだった。入場料はお一人様2ユーロ。金をドブに捨てたといえばそうなのだが、実はそうではない。おっちゃんがさ、まずはDVDを見せてくれて、それから展示の一部の説明までしてくれて結局小1時間滞在した。そう思うと二人分4ユーロがこのおっちゃんの時給。気の毒過ぎる。それに、村の歴史も知れたし、明示はしてなかったけどこの焼き物の大方の生産コストも想像がついた。
帰り際におっちゃんに聞いてみる。
私:「今日やってるカフェなんてないですよね?」
おっちゃん:「Klettならやっとるでー」
即答。
小さな村のこと。さすが村のすべてを知ってるのだなと関心。小さな村のこと。徒歩数分でこのKlettに到着。
こちらは煙突があってああ、なんか作ってるな…というのが分かる建物。…ってか焼き物の窯元やりながらカフェやってるのね。観光シーズンに観光バスの客を一本釣りできるパターンだな。ただし、今日はオフシーズンの平日、中には当然のように誰もいなかったけどね。
(無人のカフェ)
いただいたコーヒーとケーキ。カップとお皿、個人的には好き。もちろん窯元手作り。ちなみにコーヒーとケーキおふたりさまで9.1ユーロ(1200円)。某コペンハーゲン空港のビール1杯と同じくらいの値段。
一休みしてると、中で買っているのであろうワンコが人懐っこく人にあいさつをして通りすぎてく。そしてその後に飼い主らしき女性。…平和だわ。さらに数分後、「ごゆっくりー」と言いながら焼き物を焼いていたらしいおっちゃんが通り過ぎる。
…ってさっきの博物館のおっちゃんやん。
どうもおっちゃん、Cさんが博物館の呼び鈴を押したばっかりにこのおっちゃん、本来の焼き物の作業を中断して博物館まで自転車で来てくれたらしいのだ。申し訳なくなるわ。そして、なんのこたーない、自分のとこのカフェだから今日営業してるって即答できたんだわ。
で、上は工房及び販売所。行ってみましたよ。
こちらのほうがさっきのより値段は張った。…と言ってもコーヒーカップとソーサーで16ユーロ(2100円)とかの世界。
さっきのおっちゃんに聞いてみた。
私:「これ、全部自分で作ったんですか?」
おっちゃん:「全部ちゃうでー。この窯元、3人でやりよるねん」
へえ。というわけで、先ほどの案内の感謝も込めてコヒーカップ2客とソーサーを買いました。
この、日本でもお湯のみとして使えそうな…湯のみ。7ユーロ。これは日本へのおみやげになるな。…しまった、値段バラさないほうが良かったか。
ほかにもさ、数軒のお店があって、この店が規模としては一番大きかったかも。ちなみに最初の写真にこの店は写り込んでます。
値段はさっきからの説明の通り。なんだかんだで、お皿も10枚とか買って100ユーロ以上使ってきました。…それでも100ユーロなんだけどね。
なんというのか、観光客など絶無で「俺だけが知っている」感がありすごく楽しい一日でした。うちに帰ってCさんが
「皿の置き場所がない」
と嘆いていたのは聞かなかったことにしました。
あっはっはっは。
久しぶりに見ました。
面白いですね。
お客が自分ひとりみたいな状態。日本人にはプレッシャーですね。
お店の人はそれでもうれしいと思いますけど。
ごぶさたをしております。
いやはや、私、どこまで行っても日本人なんですよ。ホントにそーゆー状態に弱い。なんか買わないと出られないんじゃないかとかそんなことばかり考えてしまう。
博物館の時給4ユーロは正直あんまりだったと思います…と考えるのもおそらく日本人的なんでしょうけど。