(時系列的には、前日の日記の続きです。)ちょうどそういう時間帯だったのか、空港はぜんぜん混んでない。ルフトハンザのカウンターにだけは長い行列ができていたが、優先カウンターで預け入れのスーツケースに偉そうに優先タグ(Priority)を貼ってもらい、さくっと保安検査場を通過。
空港で当たり障りのないクリスマスプレゼントを買い、ちょっと遅れ気味に搭乗開始。本日の機材はいつもより4割から5割も座席数が多い機材を投入してるのに完全満席。ルフトハンザさん、しっかり稼ぎ時に稼いでますねえ。
ご存知の方も多いと思うけど、この数日前からヨーロッパの大陸を寒波が襲って凍死者が出たり、公共交通機関が止まったりとヨーロッパは結構な騒ぎだったらしいのだ。ドイツでも空港が閉鎖されるなど結構な騒ぎだったらしい。ただ、その寒波も一段落して、私が乗り換えのフランクフルトに着いたときは、気温は若干氷点下を下回ったくらい(つまり平年並み)。空港もクリスマス前とあって若干客数は多そうだけど実に平穏そのもの。
で、Hannover行きのヒコーキはバスでヒコーキまで移動。いつもより3割増くらいの座席数の機材を投入…はいいのだが、ヒコーキの脇に停めてあるトレーラーに有り得ないくらいのスーツケースが乗っかっている。いくらクリスマスとはいえ、これ全部乗っけるのかよ?
そんな疑問を持ちつつ搭乗。こちらも満席。2台目のバスが来て搭乗が完了したころに、機長からアナウンスが入る。ぼそぼそとしゃべっていてよく聞こえなかったのだが、
「ご搭乗の皆様、こちら機長…いま、お客様の搭乗が…荷物の積載もほとんど完…。『ほとんど』と申しましたのはご存知のとおり…でして、フランクフルト空港では…の荷物が迷子になる事態になっております。…昨日ご搭乗の予定だったお客様の荷物については…と思われますが、本日ご搭乗予定のお客様の荷物に…クリスマス後にお届けする…。たくさんのプレゼントが入っているスーツケースで…ご了承ください。なお、Hannoverには定刻どおりの到着を…」
なんかあんた、さらっととんでもないこと言ってない?荷物が乗っけられないだ?もしかすると、今、ここでいつもよりも大きな機材を使ってそれでも満席なのは、前日とかに飛べなかった人がこっちに流されて来てるの?そして、荷物も流されてきてるの?
まあ慌てない慌てない。私の荷物には優先タグが貼られている。これがある限り私の荷物は最優先で取り扱われるに違いない。日記のネタにはならないが、少なくとも問題は起こらないはず。
機内サービスも一部の人にしか行われないほどの慌しいフライトでヒコーキはHannoverに若干遅れて到着。荷物を受け取って最終列車(11時36分発)に間に合うために20分しかない。ギリギリだな。まあ大丈夫。私の荷物は最初に出てくるに違いない。
こちら、荷物受け取り場所の様子。
迷子のスーツケースの海。
これを見た瞬間に、あ、ちょっとまずいかなーと思った。これらの荷物、前のヒコーキでやってきて乗客の手に渡らなかった(つまり乗客は乗っていなかった、乗客はさらに前のヒコーキに乗っていた)もの。このちっちゃい空港でこんな様子なんだから、いったフランクフルトあたりはどーなっていたんだろう。
ベルトコンベアが動き出して荷物が吐き出されるが、どう見てもRUSHのタグがついた荷物ばっかり出てくる。つまり、前の便からの積み残しの荷物ばっかり。
お客のイライラが募ってくるのも感じる。ある子供づれの女性のスーツケースをベルトコンベアからおろすのを手伝ってあげたのに、その人、お礼を言うどころかこっちを見もしない。
こーゆーことがあると心の狭い私はイラつくんですよ。もちろんお礼を言われるために親切にしてるんじゃない。だけどさ、ちょっとひとこと「ありがとう」って言っても罰は当たらないと思うんですよね。こーゆーことってドイツで多い気がする。どうしても人の目の前でデパートとかの入り口のドアが閉まるのが我慢できないし。外面がいいだけだといわれれば返す言葉もないけど、アイルランドでは少なくとも誰かに手を貸したらありがとうって言われるし、人の目の前でドアが閉まったりはしない。
まあいいや、そんなことは。とにもかくにも流れてくる荷物がほとんど引き取られないのよ。同じ荷物がぐるぐる何周もしている。つまり、乗せられていたのは積み残しの荷物ばかり。こりゃまずいということで、ベルトコンベアが止まる前に荷物の問い合わせカウンターに急ぐ。
もう荷物がなくなることは過去に何度も経験済みだから、並んでいる間に荷物の送り先の住所や電話番号をメモ紙に書いておく。時間短縮のための小技。ちょうどメモ用紙に連絡先を書き終わったころに前の人の対応が終わり私の順番が来る。係りの人も慣れたもんでかっこよく言えば阿吽の呼吸で手続き完了。言わなきゃもらえないエマージェンシーパック(下着やトイレタリーなどが入った「緊急避難用」バック)をゲット。がー、しかし、その時点ですでに終電は私を残して行ってしまったのでした。というわけで、タクシーで移動。やれやれ。思わぬ散財。ちなみに、この時点でカウンターには長蛇の列。下手したら1時間待ちとかになったんじゃあないだろうか。…ふと思うのは、あの「優先タグ」って何の意味があるの?
話は翌日、つまり24日。クリスマスイブ。
ドイツの不思議:ドイツではクリスマスプレゼントを24日の夜に開ける。
無知な私、よくは知りません。だけどクリスマスイブにプレゼントを開けるっておかしくない?日本ではサンタさんがよい子のところにクリスマスイブの夜にプレゼントを届けることになっている。なのに、クリスマスイブの夜に開けるとなると、サンタさんはいつよい子の元にプレゼントを届けにくるのよ?
そんな素朴な疑問をドイツ人の友人にぶつけてみました。
友人:「24日の昼間にサンタは来るのよ」
ひねりなしかい。そういえば、友人宅の5歳の一人息子のところに父親がサンタを差し向けたらしい。サンタさん役は父親の友人のマイケル(仮名)に頼んだらしい。マイケル君、きちんとサンタさんの格好して、真っ白の付け髭もつけて日本だったらそのまんまケーキ屋の前でバイトができるような格好をして(って別のたとえはなかったんかい)友人宅に昼間訪問。親はわかってるもんだから、コドモに「あ、サンタさんかもしれないよ」とか言ってコドモにドアを開けさせる。そこには果たしてマイケル扮するサンタさんが…
マイケル:「ほー、ほっほっ、よい子はどこかなー」
コドモ:「マイケルだー」
まったく最近のクソガキは可愛げがありません。私がマイケルならその場でこのガキをひっぱたいてますが。ともあれ、この例からもわかるとおり、やっぱりクリスマスプレゼントは24日の夜にサンタさんがコドモが寝ているうちに煙突からやってくるというほうが正しいものだとここに主張するものであります(ドン…と机をたたく)。
話を戻します。スーツケースのないまま無駄にタクシーで散財をして話は24日に飛びます。そう、クリスマスプレゼントが詰まっているはずのスーツケースが24日に届くかどうかというのは多くの乗客にとって死活問題ともいえるわけです。だってさ、たとえば出張帰りのお父ちゃんが家で待ってるコドモに対して、「ゴメンね、スーツケースがなくなったから今年はクリスマスプレゼントがないんだ」なんて言えんでしょ?
んなわけで、カウンターでも「24日に届ける最大限の努力をします」と言われた。ま、あの空港の状況を見れば、最大の努力をもってしても私のスーツケースが24日に届くことは絶望的だし、それにクリスマスプレゼントはちゃんと手荷物に入れてあるんだよね。賢いから(←クリスマスだし、言わせてやっておいてください)。冗談はさておき、私が経験したロストラゲージは例外なくクリスマスの話なのよねん。なので、ある意味覚悟はしていたのだ。
昼ごろになってルフトハンザから電話がかかる。
相手:「ご迷惑をおかけして申し訳ありません。本日中に か な ら ず スーツケースをお届けします」
言うたね。あんた。言うてしもうたね。あんたね、できもしない約束なら最初からしちゃいけないんだよ(自戒も込めて)。そう約束をした以上は約束は守ってもらうけんね。
夕方5時。クリスマスディナーの開始。信じてもらえるかどうか、クリスマスイブの伝統的な料理はソーセージとザワークラウトとビールなのである。「日本の女性はいまだにみんなキモノを着ている」っていうくらいのレベルの話なんだけどホントなんだからしょうがない。ソーセージとビール。ただし、ソーセージはどっか特別なところから買ってきた特別なものらしいが、私に言わせると、でかい以外は別に取り立てて(以下自重)。
そんなこんなでもう午後10時。ルフトハンザめ、できもしない約束をしやがって…と思っていると、午後11時にドアのチャイムが鳴る。
そこには私のスーツケースを目の前に置いたオッサンが立っていた。
正直言ってこれには驚愕しました。午後11時ですよ。ましてやクリスマスイブですよ。そりゃ日本ではフツーに仕事の人も多いだろうけど、こっちのクリスマスイブは言ってみりゃ日本の大晦日みたいなもんで、この時間に仕事をしたがる人ってのはそうそういないはず(…と学生時代は元日に添乗員として成田山新勝寺までバイトに行ってたやつが言う)。
ちなみにこのオッサン、翌25日も仕事らしい。考えてみると、この人には家族はいないのだろうかとかいろんなことを考えてしまった。脳内BGMの中島みゆきのエレーンと一緒に(例の過去日記暗い歌コンテストを参照のこと)。
こうして必死の努力で届けられたスーツケース。26日まで開けられなかったことはここだけの秘密です。