10月11日午後4時半。
ドイツはHannoverから1時間ほど列車で下った某駅。私はこの駅で空港に向かうために1時間に1本しかないHannover中央駅行き列車を待っておりました。この駅では毎時同じ時刻に上り線と下り線が発車します(と言っても単線ですれ違いがあるわけではないのでおそらく単なる偶然)。ところが今日は待てど暮らせど両方向の列車が来ない。
いや、だいたい出かける前から嫌な予感はしていた。ラジオでは
「Hannoverの空港で爆弾騒ぎで1200人が避難して午後1時まで閉鎖」
などと物騒なことを言っていた。いや、上は私のどーしょーもないドイツ語のヒアリングの能力で理解したこと。正しくは、「Hannoverの空港近くの村で不発弾が見つかり空港を含む一帯が午後1時まで閉鎖された」らしい。私のフライトは午後7時。影響はないとは思うけれども心配になったことには違いない。
そのニュースを聞いてからいい加減8時間ほども経った午後4時半の某駅。ここから空港までは中央駅での接続の悪い乗換えを含めて1時間半の道のり。空港にはヒコーキの出発時刻の1時間10分前に着く。あまり余裕はないけれど、最初に書いたように1時間に1本しか列車がないからこれ以前のに乗ろうとすると空港に2時間前に着いてしまいそれはあまりに早すぎるので、やはりこれが唯一の選択肢なのだろう。
で、畑の中になぜこんなとこに駅があるんだという趣の某駅。当然のように無人駅。そこにどこからかやっているかは知らないがアナウンスが流れる。
「Hannover発某駅行きの列車、人身事故のために当駅にて運転を打ち切ります。バスによる代行運転を行います」
実は線路をはさんで反対側のホームでその列車を待っていたのはたったの一人。やれやれという趣でその女性は地下道を通ってバス停のあるこっち側にやってきた。それにしても人身事故ってのは日本では実におなじみだけどドイツでは前代未聞だな。それはそうと、人身事故になって下り線だけ運行を中止して、上り線は運行を継続するなんてことがあるんだろうか。
そんな素朴な疑問を持つこと5分。私の疑問は次のアナウンスで氷解した。
「Hannover行きの列車、人身事故のため本日は運行を行いません」
…って何よ?確かに私の疑問は解けたけど問題は解決してないぞ。反対方向と違ってバスによる代行輸送もなし?私、文字通りのMiddle of nowhereでハマったの?
これは推理だけど、おそらく「人身事故」を起こしたのはまさに私が乗ろうとしていた列車なのだと思う。そのおかげで線路が使えなくなったので、反対方向の列車も運行を中止したのではないだろうか。で、その列車には多くの客が乗っていたから代替バスの手配をしたけど田舎駅で待っているたった数人の客は、事故を起こした列車の乗客ともども見捨てられたのだと思われる。考えようによってはその列車に乗っていたら完全に身動きが取れなくなっていたから、私は運が良かったのかもしれない。
当然のように次の列車を待っていたら私はヒコーキに乗り遅れる。しかも次の列車が定刻通りに発車する保証はどこにもない。うーんと思っていたら、5-6人ほど列車を待っていた人のうちの私の横にいたカップル、彼が車で来ていて彼女を10キロほど離れた駅に乗っけていくらしい。
私:「乗っけてってくれー」
とまあ、思いきり図々しいヒッチハイカーとなり10キロほど離れた某駅へ。ここまで行くとHannover行きのS-bahn(近郊列車)が2系統1時間おきに出ている(つまり運休した列車を除いて30分に1本の間隔ね)。運良く次の発車は10分後。しかも人身事故が起こったのにこの列車は定刻どおりの発車した。
…がここで話は終わらない。この列車、定刻どおりに出発したはいいが、途中駅で止まってしまった。おそらく人身事故のためにダイヤが乱れているためなのだろうが、運転士からの状況説明は一切なし(S-bahnには通常車掌は乗っておらず、時折検札のための係員が乗ってくる)。
(資料写真)
ようやくHannover中央駅に着いた時、列車は15分の遅れ。ともあれ、30分に一度の空港行きの接続列車には間に合った。これに間に合えば空港にはヒコーキの離陸の30分前に到着。ぎりぎりだけどセーフだ。
が、頭の中に引っかかっていたことがある。それは今朝のラジオで聞いた不発弾騒ぎ。あれのおかげで空港線のダイヤが乱れていたりしたら完全に乗り遅れるな。まあ不発弾の処理が終わってもう4時間も経つから大丈夫だろうけど。そんなことを思っていると、早速アナウンス。どーでもいいことだけど、Hannoverの中央駅では万博があったせいか、自動アナウンスはドイツ語と英語の両方で行われるので私のようにドイツ語が出来ない人間には助かる。
「今度のHannover空港行きは20分遅れでの運行になります」
私の脳内では、オフコースのあの名曲のイントロが流れ始める。
♪もう、おわーりだね
…って諦めるわけにはいかない。翌日は仕事だ。しかもやらなきゃいけないことが溜まっている。しかも、新たな航空券代として数百ユーロの支出になる。ここまでヒッチハイクまでしてやってきたのに冗談じゃない。中央駅から列車で20分ちょいの距離。やむなし。
タクシー
乗りましたよ。タクシー。このトルコ人の運転手さんがまたすごかった。別に頼んでもいないのに飛ばす飛ばす。いや、むしろ乗るときに「急ぎか?」と聞かれたので(そりゃそうだ、列車で行けるところをわざわざ高い金を払ってタクシーで行こうとするんだから「理由あり」の可能性が高い)「いや、時間は充分あるよ」と言ったのだが、50キロ制限の街中を80キロ以上出して飛ばす。
正直言って私はスピードを出す分にはさほど気にならない。だけどさ、ドイツの名車おベンツがどれだけ信用できるか知らんが、降り始めた雨でつるつるになった路面なのにほとんど車間距離をとらない状態で前の車を煽り、車線を右に左に変えるのには閉口した。いやはや、以前コペンハーゲンで乗った以上の神風タクシーだわ(激しく死語ですな)。空港の近所では50キロの速度超過を記録。はい。日本なら赤切符もんです。
そんなこんなで通常なら列車乗りかえ一度で済む道のりをヒッチハイク、列車、そしてタクシー(22ユーロほど散財)を乗り継ぎ空港には定刻の45分前に到着。空港は「不発弾ってどこの話ってくらい平穏でして。定刻どおりに出たヒコーキは定刻どおりに乗りかえのフランクフルトに到着。
おまけ。ルフトハンザのラウンジで見つけた「裏メニュー」
(ラウンジではありがたいことにアイルランドで手に入らない日本の新聞がおいてあります)。
…いや、裏メニューってほどでもないんですけど「ご希望により出します」って書いてあったので頼んでみました。
ちなみに私、カップラーメンなど食べない人です。基本的にこーゆーインスタント食品を莫迦にしてます。例外はソース焼きそば(完全に矛盾)。だけど、遠く異国の地でカップヌードルを見たのでそれこそ十数年ぶりに食べてみた。
ラウンジの係のお兄さん、3分待っていざ食べ始めたところにやってきて
「熱いでしょ」
といいつつ、ご親切にも氷をひとかけら入れてくれた。
ご丁寧にどうも…と笑って言った私は間違いなく日本人だと再確認した。
薄くなったスープとあわせて、やっぱりインスタント食品はまずいと再確認をしたフランクフルトの夜でした。