ドイツ式結婚行進曲2,013(4)ー披露宴会場設営

はっきりと言ってしまえばぶっちゃけ場末感漂うパブのホール。本当にここで結婚式やるの?私は脳内で、ここを結婚式にふさわしい会場にするにはどうすればいいか考えてみた。


「まず、床を張り替えて、壁紙も絶対貼り直しだな。天井も塗り替えて、あ、あのステージも全部やり直しだわ。ましてや、バーエリアは完全に作り直し…」


…ってよーするに建て替えろって言ってるじゃねえか…と自分で突っ込んでしまった。いやはや、これはありえないよ。ここでホントに結婚式するの?


あとで聞いたところによると、私の彼女も似たような感想を持ったらしい。とはいえは母強し。新婦の母は入り口の雨樋に張り付いてた蜘蛛の巣をさっさと取り払ってる。


文句を言っても始まらない。しかも突き放してしまえば自分の結婚式じゃないんだし、さっさと設営、始めましょ。


テーブルに赤いクロスを敷く。


花を飾る。


新婦の母さんが夜なべをして(かどうかは知らんが)一つ一つ折ったテーブルクロスを置く。


そんな地道な作業を続けていくと


…会場の場末感は明らかに減った。


あとあと、客が来た後に撮影してみたんだけど


人がいることでかなり華やかになった気すらする。


そういえば、私の席、どこ?


花を飾りながら自分の席を探すと


え?ここ?


なんというか、ステージ前の主賓席じゃん。


あの、私は「俺は主賓席なんだぜ。すげーだろ」とかいう話じゃ全然ないです。どーしても日本の結婚式の感覚を持ち込んでしまい、その結果としてはとんでもない席なんですが、ふと思うと、この結婚式の主賓って一体誰だ?日本の結婚式だとメンツにこだわって、ほら、県議会議員のなんとかさんが来てくださったとか、会社の社長が参加してくれたとか、そんなことが重要視されるような。で、言葉を交わしたこともない主賓さんが、新郎新婦さんとは無関係なスピーチをしていくとか…そんなことはないですか?


もっと言えば、新郎新婦の隣席は両家の両親。そう、この10人がけのテーブルは完全に身内席なの。


再び日本の結婚式。そりゃ、新郎新婦は真ん中に座ってるけど、両親って会場の一番後ろの端の末席に申し訳なさそうに座ってますよね。あ、私、「ガイコクの文化はすげーんだぜ。日本ダセー」などと、訳知り顔で語る人が苦手です…というか、嫌いです。


日本のいいことはいいこと、悪いことは悪いこととして、いつも話したいと思ってるのですが、この日本の「両親末席」は間違っていると思う。自分を育ててくださった両親に自分の晴れ姿を見ていただくのに遠く見えづらい末席とは失礼じゃないかと思うのだ。そりゃ、両親が会場の中央にでんと構えていたら、気恥ずかしいし、謙譲の美徳の観点では他のお客様に対して失礼になるというのが日本の常識だと思う。


だけどさあ、両親以上に大事な客ってきっと披露宴にいないと思うのよねん。経済的に苦しい時にも私にだけは苦労させまいと頑張ってくれた両親以上に私が感謝する人は今のところいない(気を悪くした人がいたならごめんなさい)。ましてや、会ったことのない県会議員なんてなんぼのもんじゃと思う。なので、私は日本で披露宴をやるなら、心から感謝をしたい両親には一番いい席に座ってもらいたいと本気で思っています。…まあ、日本で披露宴やる予定もないし、これは私の脳内妄想で終わると思われるのですが。


ともあれ、一度帰宅して着替えて会場へ。


日本の結婚式と違い、受付などない。新郎新婦が入り口付近に立っていて、お客が来ると「あらよく来て下さいました」とあいさつを始める。ゆるい感じ。で、客はお祝いのカードとか、お祝いの品とかを置いてゆく。


これはアイルランドと共通の文化だけど、プレゼントの「リスト」ってあるのよ。なんとも合理的というか味気ないというかのシステムなんだけど、新郎新婦が「自分のほしい物リスト」を作るの。


フライパン30ユーロ。
トースター40ユーロ。
鍋セット80ユーロ。


…みたいな感じでね。で、早い者勝ちで、そのリストから自分が買いたいものを選ぶという。しかもさ、そのリストが、デパートの機械に入ってて、新郎新婦の欲しいものは型番まで指定されているという。思えば、あのどう考えてももう勝手そうに見えないデパートが今日もやっていけるのは、この割引なしで売れるウェイトレスリストの利益に寄るところがあるのではないかと思ったりする。


この先長くなりそうなので、続く。次回はいよいよ最終回。