【もはや過去形】車が盗まれた!(6)

上海出張および日本帰省から帰ってきた8月の終わり、手紙が届いた。


「車が8月31日に着きます。ダブリン港まで引き取りに来てね(はあと)」


…って、明日やん。それ。


慌てて準備を始める私。泥縄感は拭えないが、それよりも何よりも連絡が遅すぎるわい。しなければいけないことを大雑把に書くと、


税金を払う
港の使用料を払う
車に保険をかける


まあ、たったこれだけだけど、これって、5時間かけてことことと煮込んだシチューを「シチューなんて、野菜と肉を切って煮込んだ料理だろ」というくらいの暴言なのだ。その詳細は以下にあーだこーだと書くわけでして。


まず税金。3種類の税金がかかる。


車の輸入税
車の登録税
車に対する付加価値税


もうこの3行を書いただけで疲れてしまった。具体的には


車の輸入税=車両価格の10%


車の登録税(Vehicle Registration Tax (VRT))=これはオンラインで計算できる


車に対する付加価値税=日本での車両本体価格に対して23%。


かくして、大雑把に車の車両価格と同じかそれ以上の金額が税金その他で飛んでいく。たとえば50万円の車を買ったら、税金その他で50万円以上かかる感じ。


結論から書くと、アイルランドに日本から車を輸入することはあまり意味がない。同じ価格を払えば、同等の車をアイルランドで買うことができる。まあ、強いて違いを言えば、日本から車を輸入すれば、日本品質の車を輸入できることかな。ごくごく正直に言えば、ン十万円の高い買い物、失敗はしたくないから、アイルランドでおかしな賭けに出るより、日本から車を輸入したほうが賢いと思う。


あ、これは駐在員さんほかアイルランドに日本からお引越しになる皆様にはちょっと次元の違う話になることを申し添えておきます。というのも、日本で6ヶ月以上自分名義で所有した車に関しては、車の取得税が免除されるのだ。あと、EU域内とかだと付加価値税が免除されるとかいうのもある。まあ、ご参考まで。


実は、日本からアイルランドへの車の船賃は意外なほど安い。この原油価格高等の折、船賃は6-7万。もちろん船ですよ。6週間ほど時間はかかりますよ。だけど、日本からアイルランドに人一人がヒコーキで移動したら、15万円とかかかることを考えると、車の図体のでかさ、重さを考えると破格に安い気がする。


日本ではかなりお買い得な車を買った。車の年式や程度から考えると破格。まあ、車関係の仕事をしている知り合いからほとんど譲渡価格で買ったんだから、当然なのだが。


ここに対して、ダブリン港のくされ税関からクレームがついた。「こんなに傷ひとつない車がこの価格のわけはないだろうと」


もうほとんど任侠者の言いがかりのレベル。だって、この車をこの価格で買ったのは事実で、領収書だってちゃんと提出した。なのに難癖をつけられ、勝手に「この車はアイルランドの市場価値から考えると提出された価格の4割増が妥当であり、600ユーロの追徴課税をします」


はぁ?


ここから税関との大喧嘩が始まった。冗談もたいがいにせいと。もうあーだこーだと何度とないやり取りの後、「提出価格の1割増し」で話がまとまる。…ってかさ、車の購入価格という事実はひとつなんだから、交渉する類のものじゃないと思うのだが。


さらに、車の取得税の計算は、NCT…日本的に言えば陸運事務所で行うという。これまた意味不明。だって、この計算はネット上で、年式や走行距離などを入力すれば簡単に計算されるの。なのに、車をわざわざ陸運に持って来いとはどーゆー了見やねん。


というのも、この車の取得税を払ってはじめてナンバープレートの番号がもらえる。つまり、この車の取得税を払わない限り、ナンバープレートのない私の車はアイルランドの公道を走ることができない。そして、保険をかけることすらできない。さてさて、ナンバーのない車をどーやって陸運事務所まで回送するのよ。


日本でご覧になったことがあるかどうか、ごくごくたまに仮ナンバーというおかしなナンバーで走っている車がある。あれって、車のディーラーや修理工場が、所轄の警察署に申請をして、「そこからここまでナンバーなしで運行しますので許可をしてください」と書類を申請してようやく借り受けることのできる特殊なプレートなのだ。


アイルランドにもGarage Plateなるものがあり、修理工場が独自のプレートを持っている。ただ、日本ほど厳密ではないので、運行計画書の提出は不要。これを知り合いの修理工場に頼み込んで借りる。…と言っても、このプレートで運行する限り、自分で運転はできないから、修理工場の人を二人借りることになる。なぜ二人かというと、ダブリン港まで二人で運転してきて、一人は私の車を運転して、もう一人はその運転してきた車を運転して帰ることになるから。まあ、繁華街の運転代行を思い浮かべていただければわかっていただけるかと。もちろん、ただで借りることはできない。このどーでもいいようなことでの無駄な出費が130ユーロなり。


税関と大喧嘩していたこともあり、車を引き取りに行くことができたのは、車が到着してから2週間後。港では1週間以内に車を引き取らないと、保管料金と称して1週間後以降の平日については一日5ユーロの保管料金を取られるから、これでさらに30ユーロの無駄な出費。


かくして、ようやく車と対面できた。


正直な感想。ちっちゃい。


いや、Rav4だってちっちゃかったよ。具体的には車長はノートのほうが50センチも長い。だけどさ、車高とかどっしりとした感じはRav4のほうがはるかに格上。


かくして、修理工場の人に運転をしてもらい、GreenhillsのNCT(車検場)へ、車の登録税の計算をしてもらいにいく。これも、事前に予約をしないとだめという素敵な仕様。幸い1週間程度で予約ができたのでよかったが。


で、はじき出された金額は、ネット上で計算された金額と同じ。…何のためにここまで130ユーロも払って車を回送したんだか。

(なんじゃこりゃ…本文とは直接関係ありませぬ)


この時点で、ようやく車の登録番号(ナンバーね)がもらえる。ただし、「番号」がもらえただけで、「ナンバープレート」はもらえてないわけ。NCTでも「ナンバープレート」を作ってくれると言うから、頼むことに。


私:「ナンバーを作ってくださるってそこに書いてますけど、時間はどれくらいかかります?」
係:「5分もすればできますよ」
私:「じゃあ、お願いします。でも私のは日本からの輸入車なので、(EUの通常サイズの)細長いやつじゃないほうで」
係:「あ…それはすぐは無理ですね。数日かかります」


…やっぱりな。話がうますぎると思った。


結局修理工場でナンバーを作ってもらえることになった。ただし、完成は翌日。とはいえ、登録番号がもらえたので、とりあえず、保険をかけることができる。保険屋に電話。登録番号や、車両の明細を説明すると、すぐに保険をかけてくれた。


翌日、ナンバープレートを装着。まだ、話はここでは終わらない。今度は車検。車検を受けないといけない。また車検場に予約。


1週間後、車検場へ車を持っていく。日本で完全に整備された状態だったので、合格は間違いない…と信じて疑っていたのだが、あにはからんや…


係:「車は完璧な状態だったけど、不合格でーす」
私:「えええ。なんでよ」
係:「EUではね、タイヤにEU基準に適合しているというEマークがついていないといけないの。ほら、この台湾製のタイヤ、Eマークがついてない」

(なるほど。Eマークってついてるな…って言われないと気がつかないと思う)。
…なにそれ。


こうして、新品のブリヂストンのタイヤはヨーロッパの基準に合致していないとかいうわけのわからん結果に。タイヤ代240ユーロの無駄な出費。…金がいくらあっても足りんばい。


とまあ、紆余曲折はありつつも、ようやく車は乗れる状態になった。果たしてこの車を好きになることができるのだろうか。その感想は次回の男子寮Galway合宿に続く。


ついしん:車を盗んだアホタレ。お前のせいでいくらかかったと思ってんだ。ばかちんがー。