文化の日に献血について語る

今日は文化の日だったんですね。文化とか言っても石田純一しか思い出せない私の脳みそにはきっと何か変なもんが湧いているのではないかと思います(「不倫は文化だ」発言ね)。それじゃああんまりだと思って数秒考えた結果が「文化放送」。…ダメだこりゃ。


先週献血に行ったんです。…って別にさしたる高尚な思いがあるわけじゃないんです。だけどさ、ほかにボランティアだの社会貢献だのなんも胸を張れるような行為をしていない私、これくらいはしてもいいんじゃないかという思いは心のどこかにたぶんある。慣れちゃえば痛くもかゆくもないし。


あとはねえ、働いている人も、話していて楽しい人というか、悪い人はいないと思う。基本献血に来ようとかいう人に悪い人はいないと思うから(当社調べ)、結果として労働環境も悪くないと思うんだよね。まあ、逆に言えば、献血という無償の行為で嫌な思いしたらもう二度と行かないと思うし。もっとも、日本の献血ルームのあの至れり尽くせりの状況と比べるべくもないわけですが。


先週の金曜日の昼下がり、講習が早く終わったのでO’Connell Bridgeの橋のたもとにある献血センターに向かった私。待ち時間なしで受け付け、事前問診を済ませる。そして次は実際の献血。通常看護士さんが呼び出してくれる。またもや待ち時間なしで呼び出しが来る。


うおっ。


母音だらけの呼びづらい私の名前をこれでいいのかしらという顔をしながら一生懸命呼んでくれた看護士さん、私の好みの女性像にピッタシカンカン(激死語)。身体にまったく無駄な肉がついてなくて、きれいな金髪が鼻筋の通った面長の顔に映えている。年齢は二十歳前後といったところか。


看護士:「はい、そこの椅子に掛けてください」
私:「はーい(でれでれ)」
看護士:「名前と誕生日をお願いします」


この質問、献血センターで少なくとも5回は聞かれる。確かに万が一にも人違いで別の種類の血液を輸血してしまったりしたら人の生死にかかわるわけで。当然といえば当然の質問。その質問に答えていると、この「かわいすぎる」(流行語を使う浅薄さ)看護士さんの立つ側とは逆側の左側にいつも見かける私より年上と思われる男性の看護士さんが登場。


かわいすぎる看護士さん、私の右手のひじの内側の血管を探し出そうと一生懸命私の腕に触れる。なかなかうまい場所が見つからないらしい。悪戦苦闘している。おいおい、腕をちょっとあげればお胸に手が届いちゃうぞ(ってその右手は押さえられてんだけどねえ)。それを眺める男性の看護士。なんだなんだ、なんで今日は二人がかりなんだ?…というところで、はっと気がついた、


このかわいすぎる看護士さん、看護士じゃない。医師だ。


確認はしてないけど、おそらくドナーの腕に献血用の針を刺すことは、医師じゃないとやっちゃいけないんじゃないかと思われる。そんなわけで、通常だと看護士さんが待合室に私を呼びに来て、私の名前などを確認なんかをした後に、おじいちゃんと呼んでもいい医師がてくてくやってきてふたたび名前などを確認、針をぶすっ…という流れになる。なのに、今日に限っては、別の「かわいすぎる」医師が私を呼びに来てくれたのだ。


件のかわいすぎる医師さん、私の右腕がお気に召さなかったらしく、左腕に挑戦。ようやく針をさせる場所を見つけたらしい。いつものおじいちゃん医師なら所要数秒のところ、数分かかったぞ。となりにいたいつもの看護士さんは「よくやった」って誉めてるし。これで合点がいった。このかわいすぎる医師さん、きっと新人なんだ。新人さんだから、(暇な時間帯ということもあり)わざわざ私を迎えに来てくれたりなんかしたんだ。


というわけで、いよいよ針を刺す。かわいすぎる医師さん、「あっちむいてていいですよ」なんて言うけど、私は針の行方とかわいすぎる医師さんの真剣な顔を交互に見てしまう。ああ、いいなあ、この真剣な顔。


ぶすっ


…という擬音しか浮かばないんだけど、予防接種のそれとは比べ物にならない太さの針は音もなく私の腕に入ってきた。なんか大昔に読んだクレヨンしんちゃんでしんのすけが美人の看護士さんに注射をされた時、「おねえさんテクニシャン。もう1回やってー」みたいなことを言っていたのを思い出した。…しんのすけ、気持ちはわかるぞ。


献血が無事開始されたので、このかわいすぎる医師さんのお役目は終了。そう、なぜだかは知らないが、針を抜くことは看護士さんでもできるらしいのだ。というわけで、かわいすぎる医師さんは去ってしまった。…ちょっとさみしい。


私に付き添ってくれているいつもの男性の看護士さんがいろいろ雑談を始める。まあ、お決まりトーク、想像つくでしょ。なに、日本から来た?おい、地震はどーなった?クリスマスに帰省するのかなどなど。で、話の途中に何気なく(少なくとも本人はそう思っている)さっきのかわいすぎる医師さんのことを聞いてみた。


私:「そういえば、今日はいつもの男性の先生じゃなかったですね」
看護士:「ああ、Paddyなら今日は休みだよ」


やっぱりPaddyかい。パブのカウンターの係も、ニュースエージェントのレジも男性はみんなPaddyと呼ばれなきゃいけない法律でもあるんですか。この国は(それくらいよくある名前なのね。特に中年以上の年齢で)。


私:「じゃあ、今日の先生は臨時なんですか」
看護士:「そう。来週からまたPaddyは帰ってくるよ」


というわけで、この日記を読んでかわいすぎる医師さんに会いたいと思って行っても、Paddyに針を刺されるのがオチですので、そのような不純な動機でここを訪問することはお控え願いたく存じます。もうひとつ、最後に書き添えときますが、同居人ひでかすいわく、私の女性を見るセンスは概して悪いらしいです。あくまで「当社比」でかわいすぎただけですので(でもかわいかったんだよお)。