現在進行形の日記を書くことの楽しみは、自分でも想像のつかないオチがつくことがあることかもしれません。前日の日記でMP3プレーヤーが行方不明になった話を書きました。話のおさらいを兼ねてもうちょっと詳細を書いておきます。
金曜日のルフトハンザのダブリン発フランクフルト行の最終便。降りるときに私はリュックサックに読みかけの本とルフトハンザの機内販売誌(Longchampのバッグを売っていた)とそれからちっちゃな黒いポーチに入ったヘッドフォンとMP3プレーヤー。私はこれらをリュックにつめて入国審査を受け、保安検査を受け次のヒコーキの搭乗口近くの店でバッグの物色をする。その時に店員に話しかけられたので、レジカウンターでリュックを開けてメモを取り出す。メモを取り出した際に邪魔だったMP3プレーヤーの入ったポーチを取り出してレジに置き忘れる。で、次のヒコーキに乗った時にMP3プレーヤーがないことに気がつく。
で、翌日は結婚式、翌々日は日曜日…というわけで、月曜日に普通どおり会社に出勤するまで放置。月曜日にネット上で調べたゲート近くのバッグの店に電話。時刻や状況を明確に覚えて居たまま説明。偶然私に話しかけた店員も私のことを覚えていたもののそんなポーチはなかったとのこと。ま、そんなもんでしょ。
この日は仕事が泣きたいくらい忙しかったものの、昼休みにダメ元でフランクフルトの空港の遺失物係にもメールを送る。もしかしたら、店でポーチを拾った人が店ではなく空港の職員に手渡した可能性があるかな…とも思ったわけ。可能性としては限りなく0に近いけど。もののついでにルフトハンザにもほぼ同じ内容のメールを送る。空港の遺失物係から見つかる可能性が限りなく0に近いなら、ルフトハンザの機内で見つかる可能性はそれよりさらに低い。だって、リュックの中にポーチを入れたのを確実に覚えているもん。
それ以降仕事に完全に忙殺されてMP3プレーヤーのことなんてほとんど忘れ去っていた。で、前日の日記を公開した翌日、つまり金曜日にルフトハンザからメールが来た。
MP3プレーヤーが見つかりました。お客様のダブリンのご住所あてにお送りします。
うそっ。
ごくごく正直に言ってありえねーと思いましたね。まず、なくなったもんが見つかるというのが初めての体験。いや、今そう書いてふと思い出した。京王線の中に買い物袋を忘れたらちゃんと遺失物センターに届いていたことがあったから正確には2度目だ。だけど、まさかヨーロッパでなくなったもんが見つかるとは思わなかった。
あるいはこれはルフトハンザだから…といえるかも。くされRyanairの機内で忘れものをしたら、私は素直に諦めると思う。見つかりっこないって思うもん。この仮説が正しいなら、やっぱりルフトハンザにRyanairより高い運賃を払う価値というのはあるのかもしれない。いや、あると思う。
でね、私は確実に覚えていたのだ。ヒコーキから下りるときに自分がリュックの中に読みかけの本と機内誌とポーチを入れたことを。そして、その本と機内誌はリュックの中にあった。が、結論から見ると、実はポーチはヒコーキの中に忘れてきていた。つまり、ポーチを確実にリュックを入れたという記憶は間違いということになる。ふと思ったことは、もしかしたら記憶は作られるのかもしれないということ。私はどこでMP3プレーヤーを無くしたかを考えているうちに、いつの間にかMP3プレーヤーをリュックに入れたと思い込んでしまっていたのだ。
これってあるいは怖いことかもしれない。刑事ドラマの見すぎと言われれば返す言葉もないんだけど、突然刑事がうちにやってきて、「この男を見ませんでしたか」とか聞かれたときに、一生懸命思い出そうとしたばかりに今回のように記憶が作られてしまうかもしれないということ。そして、その作られた記憶のせいであるいは一つの冤罪が生まれてしまうかもしれない。こんな仮定の話は詮無いことだけど、でも絶対にあり得ないとは言い切れないとも感じた。
と、まあ、まだ届いてはいなけれど運よくMP3プレーヤーが返ってくることになり、また私が運だけで生きていることをいみじくも証明してしまったわけで。
バッグの話のつかみのつもりが長くなりすぎたのでバッグの続きは翌日にて。