ドイツの大雪とそれを使った「おばあちゃんの知恵袋」?


ドイツ北部某所の私の住む村に先週突如寒波がやってきました。7日の日曜日の朝、外を見ると

ちょっと気になって玄関のドアを開けると

おお、かなり積もってる。ついでに寒い(マイナス8℃)。

これ、雪が問題というよりは風が問題。気温がマイナス8℃とかでパウダースノーが舞っているのだがこれがふわふわと飛び回っている。つまり、除雪などしても無駄。除雪したはしから風で雪が運ばれている状況。

こうして、日曜日の朝から慣れない(というよりやったことがない)雪かきの刑に処される。

日本ではどうかは知らないけど、ドイツでは(ちなみにアイルランドでも)家の前の歩道の除雪はその家の責務らしい。なにそれって、万一除雪がされておらずそれが原因で転倒などの事故が起きた場合の責はその家にあるらしい。なんじゃそりゃ。もっともアイルランドで雪が積もるなんてなかったから除雪なんかしたことなかったけどね。家にそのための道具もなかったし。

歩道を除雪してみました。

かれこれドイツに数年住んでるけど、ここまで積もったのは初めてのこと。苦節1時間でなんとなく除雪をしましたのポーズは完了。

本邦初公開(かどうかは定かではない)、自撮り写真。自慢してお見せするようなもんじゃないので画質もサイズも落としてます。

ご覧になって分かる通り、眉毛ももみあげも凍っちゃってます。眼鏡は曇りきっているので逆に何も見えない。ちなみにマスクは思いつきで防寒用につけました。ミズノマスクの担当者氏、極寒のドイツで防寒のために使われるとは想定外だろうなあ。しかも夏用のアイスタッチだったというのはもはやネタ。

この時気がついたのだが、人間って面の皮が厚いわ。マスクまで持ってきて顔を覆ったわけだけど、それでも顔全部を覆うことは不可能。それでも私の顔は(このあとやってきた)マイナス15℃の世界にそのまま晒されることができた。

ちなみに私には変なこだわりがあって、その一つが

股引履いたら人生負け

という謎理論がある。なので、ジーンズの下は何も履いてませんでした。あ、もちろんパンツは履いてました。昭和の銀幕俳優じゃないんだから。

こうして除雪したものの、一晩明けてみると

写真手前、階段下が吹き溜まりになってることに注目。

まさに元の木阿弥。新たに降った雪と風で運ばれた雪で昨日と同じ状況に戻ってる。いや、昨日積んだ雪山もなんとなく残っているから状況はむしろ悪化してるかも。

手前方向から車道に出られる小道があることに注目。

翌火曜日の同位置の写真。雪かきの努力の跡は見られるものの、それ以上にさらに雪が降ったことが見て取れるかと。

小道が潰された瞬間。

こんな状況ですから除雪車まで出動。ところがこの除雪車、道の真ん中にある雪をエッジの部分で押すから雪が左右に掻き分けられるだけなのね。ということは当然の帰結として、人が一生懸命作った車道から玄関までの小道まで潰してくださった。

この大雪の原因、なんでも北からやってきたくっそ寒い寒気と、南からやってきた暖気がドイツの北部でぶつかって、その部分だけ大雪になったらしい。ふと思ってGoogle Mapの交通情報を見てみた。

これ以上わかりやすくなりようがないくらいどこで寒気と暖気が喧嘩したか分かる状況になっていた。

このマイナス10℃の世界なのに、家の中はガス暖房でぽかぽかしてます。私が南国九州出身だからか単にうちが貧乏だったかは定かではないですが、私が子供の頃、ようやくもらった弟と共用の子供部屋にストーブなどはありませんでした。中学生になりようやく遠赤外線ヒーターを買ってもらいましたが正直屁の突っ張りにもならない代物でして。かろうじて石油ストーブがあるのはリビングともう一つの部屋くらいという状況でした。

なので、この家の全館が暖房でぽかぽかしているというのはにわかには信じられない状況なのです。家中ガス暖房が効いていて、愛用のユニクロのフリースを着ているとややもすると暑いと感じるほど。なので自室は暖房を控えめにしているほど。

そんな貧乏性な私を横目に、嫁はリビングの暖房などをがんがん強くしてます。思わずこどもの頃にでかけた別府スギノイパレスを思い出すほど(注:東日本にお住まいの方は常磐ハワイアンセンターと読み替えてください)。あそこが真冬に行ってもTシャツで過ごせるくらいの暖房をばんばん焚いてたのよね。

実は私、家賃という形で義両親に毎月このイナカにしては結構な金額を払ってまして、その家賃の中に光熱費は含まれてます。言い方を変えると光熱費を引けば大した家賃は払っていないのかもしれない。どっちにしても毎月のガス代がいくらか知りませんが間違いなく日本的に言えば万を超えてます。この家中を温めてくれるガスはロシアから来ているらしく、ロシアを怒らせたらどうもうちは凍っちゃうらしいです。

閑話休題。木曜日になり晴れました。気温はマイナス10℃とかで低いのだけど、それでも太陽が出るとそれなりに雪が溶ける。除雪車による努力などのおかげで、少なくとも表通りの車道部分はすれ違いは困難ながらも一部はアスファルトが顔を出すまでになった。

そして土曜日の朝。

スマホによると午前7時過ぎの気温はマイナス14℃。こんな中、近所のスーパーに1週間分の食料の買い出しに出かけた私。

道中写真を撮ってみました。パノラマ写真なので左右にぐりぐりできます。

…どう見ても近所に買い物に行くという風景じゃないですね。もしかすると北海道などにお住まいの方には日常風景なのかもしれませんが。

この写真を撮ったときの車の速度計の脇についた気温が目に止まった。

マイナス22℃。

たぶんですが、タイヤあたりにセンサーがついてて雪のせいで気温が低めに出るとかそんなオチだと思います。もしそうだとしてもマイナス22℃ってなによ。もはや冷凍庫より寒いじゃん。

こうして買い物に行き、朝食を済ませたところ、階下の嫁母(義母)がやってきまして、

「カーペットの掃除をするから手伝ってほしいのだけど」

はあ…。

よく状況をつかめないまま階下に行くと、カーペットを丸めてほしいと。それはそれはずいぶんと念入りな掃除ですな。え?持ち上げるの?

一辺最低でも2メートルはありそうなけっこう大きなカーペット、ぶっちゃけ重い。三人がかりで持ち上げて…外へ。どこさ行ぐだぁ?

日光のせいで溶けてきたとはいえ足首より遥かに高い位置まで降り積もった雪をかき分けて庭の雪の上に表面を下にして広げます(見えているのは裏側)。…ちょっと何やってるかわからないんですが。そこで取り出したるは

ふとんたたきー(CV:大山のぶ代さん…って言うことが昭和ですね)

え?ドイツにもあるんだ。布団たたき。初めて見たぞ。ドイツの家あるあるなのかは定かではないが、この家には大概のものはある気がする。ただし、Made in West Germanyとか書かれているようなものがまま出てくるのよね。

布団たたきが出てきたということは当然

叩く。叩く。百叩きの刑っ。愛も憎しみも怒りも悦びもすべての感情を込めて叩く叩くぶっ叩くっ。

私、人間をかれこれ40年以上やってきてますが、雪の上にカーペットを広げて掃除をするという風景をテレビなどを含めてただの一度も見たことがなかった。どうもおばあちゃんの知恵袋的なものらしいのだが…本当にそうなのか自信がない。これがドイツの生活の知恵―とかドヤ顔して書いて他に誰もやってなかったりしたら目も当てられない。

そして百叩き以上に叩きまくった後に出てきたは

業務用掃除機ぃ(CV:同上)

また変なもんが出てきたと思ったら、この掃除機、水も吸えるタイプのものらしい。そう、少しづつ裏返して、裏についた雪を吸い取っていくという地道な作業開始。

ベンチの上で最後の部分の雪を吸い取り作業完了。

おわかりいただけるでしょうか。カーペットがあった部分の雪が汚れていることを。雪が汚れを吸い取ってくれていることを。

…ってわかんねえよっ(個人の意見です)。ただしね、同じことを足ふきマットでやってみたので。

あー、こっちははっきり雪が汚れを吸い取っているのがわかるわ。

こうしてリビングにカーペットを持って帰って広げてみると

(ピカチュウのような模様は窓からの光の加減です)

私を除く一同:「ああ、きれいになった」

私:「お、おうっ」

カーペットが濡れるんじゃないかと思いましたが、掃除機できれいに吸い取ったせいかリビングに持って帰った時点でほとんど乾いており、心配するほどのことじゃなかったです。

嫁に聞いてみた。

私:「このカーペットいつ買ったの?」

嫁:「ええっと、おばあちゃんがまだ元気だった頃だから…」

…下手したらベルリンの壁崩壊以前ですね。ありがとうございました。当然イケアなどもなかっただろう頃だから相当良いお値段したらしい(調べたらイケアのドイツ初出店はミュンヘンに1974年。ただしうちの近所の店舗はそれから約20年待たなければならなかったらしい)。だろうなあ。私が買うような安いカーペットならこんな手間暇かけずに単純に買い直すわ。

この騒動の後お昼ごはんを作り、ついでにケーキまで作ったのちに午後遅くに散歩にでかけました。雪があるだけでいつもの世界は一変します。上の写真はまたパノラマです。

ちなみに来週になると気温はプラスに戻るらしいです。この美しい真っ白な世界ももとに戻るらしいです。