莫迦と煙になりきる休日(Titan RTとDas Josephskreuz)


いやー楽しかった。世間がコロナコロナでパニックになっているのに、私ときたら一人で日曜日を満喫してました。嫁放置で。

今日のドイツは気温10度程度と寒いながらも快晴。こんな日に家にいるなんてもったいない。

なのにどうも嫁が姪っ子(5歳)からごく軽度の嘔吐下痢症みたいなものをもらってきたらしく、別に大騒ぎするような状況じゃないんだけど出かける気分でもないと。ここで正しいダンナの反応は…

「大丈夫?なにか欲しいものはない?なにかあったら言ってね」

とかいう感じなんでしょうが、私の場合

「じゃあ俺ちょっとでかけてくるねー」

と脱走。愛だろ。愛っ。

最初にも書いたとおり、コロナウィルスの問題は欧州でも(というかこと欧州で)大問題になってまして、今日も国境閉鎖だとか、明日から学校はイースターまで臨時休校だとか通常時であれば耳を疑う様なニュースが次々と流れてきてます。そういう意味では家でおとなしくしてろ!というのがぐうの音も出ない正論なのでしょうが、まあ、これから行く先は屋外だし、家でうじうじしててもしょうがないし。そして、これを今日急いで書いているのはこのご時世だからこそバカ話を読みたい人もいるのではないか…という思いもあるのです。まあ、居直ってしまえば、熊本地震が起きた真っ只中に杵築や別府に観光に行った…という実績もある紛うことなきアホですので。

私の急遽作成し実行に移した計画は単純。嫁と一緒にならできないことをやろうと。

私の嫁、私と結婚したことからわかるように人を見る目がなかったりとかやたらと心配症だったりとかいろいろ問題はあるのですが、その中の一つが高所恐怖症。どうも父譲りらしいのだがかなりの高所恐怖症。というわけで、今日のテーマは「莫迦と煙が大好きな高いところに登ろう」。

まず向かったのは、Rappbodetalsperre。ドイツで一番高いダム。ほらきた。莫迦と煙が大喜びのフレーズ。XXXで一番高い。

ここ、ハーツ国立公園の中にありまして、うちから100キロほどの距離があります。1時間程かかります。ここに来るだけで久しぶりにちょっとした距離をドライブできるものだからすでに嬉しくてたまらない。きっと久しぶりに走れたそらまめ号だっていい気分だったに違いない。

ここ、何がすごいって、ドイツで一番高いダムに並行して2017年に約460メートルのTitan RTと呼ばれる吊橋を作っちゃったと。地上からの高さは100メートル。…莫迦と煙は手を叩いて喜ぶしかない。百聞は一見に如かず。こんな感じですよ。

ほんと莫迦ですよね。ダムに並行して吊橋をかけるという発想はなかったわ。

まずはダムの方から行ってみます。皆様のお使いの環境によりますが、パノラマ写真は左右にぐりぐりできるはずです。

正直日本人の私はそんな言葉があるかは知らないがある意味「ダム慣れ」している。去年の秋の帰省時も奥秩父でダム巡りをしたし(この話もそのうち書きたいのだが…)、そういう意味ではこのダムも確かに規模はでかいけどすげーとなるものではない。

ダムの堤から続くトンネルを通り吊橋入り口へ。Titan RTの渡橋料金は€6なり。…けっこういい値段だね。嫁に話したら「なんで吊橋を渡るとかいう罰ゲームに€6も払わないといけないのっ」…とのこと。はい。価値観の違いです。…ってまあ、正直に言えば現地で「ん?ちょっと高くね」と思ったことは事実。

ほとんど予習せずにやってきたので知らなかったのだが、この橋ではこんなこともできる。

…これをなんというかは知らないが(現地ではMegaZipLineと書いてあった)ひとっ飛び€39らしい。

さて吊橋(Titan RT)。

この日は風も強かったことも手伝ってか、まあ揺れる揺れる。手すりにつかまりたくなるほど。なのだが、去年の帰省時に十津川村で頭がおかしいとしか思えない(最大の賛辞…十津川村のお話もそのうち…)とんでもない吊橋をいくつか渡ったおかげで私の吊橋についての経験値は爆上がり、間違いなくレベルアップしてちからが3あがり(以下略)してるので、まったく恐怖感は感じない。

参考画像。こちら十津川村の吊橋。

この吊橋の素晴らしいことは、足元が金属の金網状…つまり下がよく見える。

そしてこちら。遠くからズームを使ったとか言うならともかくダム(Rappbodetalsperre)をこの位置から撮影できるって他にはないような気がする。

こうして吊橋(Titan RT)を満喫した私はお次の目的地へ。

Das Josephskreuz (Joseph Cross)

これまた莫迦と煙が大喜びしそうな塔です。このJosephskreuzは、今から遡ること120年以上前の1896年にこの高さ36メートルの塔が観光用に建てられたらしい。構造的にはかのパリのエッフェル塔と同じだそうな…ってことはちゃんと調べてないけど東京タワーとも同じということかしら。

駐車場から20分ほど歩いて上の写真の場所にたどり着いたとき、ごく正直に言って私はがっかりした。大した高さじゃなさそうだし、こりゃ期待できそうにないな…と。

ともあれ、この時点で時刻は午後2時をすでに回っている。腹減った…と塔のたもとにあるレストランに直行。お一人様でも堂々と突っ込んでいけるのはたまにとはいえ出張とかしてるせいだろうなあ。昔の私だったら一人でレストランになんて突撃できなかった。

メニューを見ても…なんというか心躍らないというか、「正しいドイツのイナカのレストラン」という趣で「おっこれ食べたい」と思うものがまっっっっっったくない。メニューを見ていると「お子様メニュー」のページの下の方に見つけてしまった。「お年寄りメニュー」

日本でこの発想ってありましたっけ。「お年寄りメニュー」…要するに量が控えめなのね。そりゃいつもメガ盛りになれているドイツ人諸氏には不満かもしれませんが、私には十分だろうとお年寄りメニューに初挑戦しました。説明不要のドイツ式とんかつシュニッツェル。その結果…

サイズ比較できるものがないのでなかなか難しいですが、そうですね女性の手のひらサイズのお肉(ただし、叩いて伸ばして手のひらサイズだからかなり小さかったと思われる)、マクドナルドで言えばLサイズのポテト、そして明らかに缶詰のグリーンピースと人参の付け合わせ。

…ええっとね、とりあえず、シュニッツェルもポテトも揚げたてできたてでその点は満足。

だけど、この付け合せの野菜が缶詰というところにこのレストランのやる気を見てしまうのよね。まあ、可もなく不可もなくというのが正当な評価。ただ、お値段€9.5は格安。量は正直「あー食べ過ぎた」と感じない程度でまさに適正だったと思います。というわけで、ご自分が通常の量しか食べないと思う日本人の皆様、ドイツでは「お年寄りメニュー」の欄に注目してみるといいかもです。たぶんお子様メニューと違って年齢制限はないです…知らんけど。

正直このフォント苦手なんだけど、1896ははっきりと読めるぞ。

€3.5を払ってドイツのエッフェル塔に昇ります。エレベーター?んなものはないです。一歩一歩階段を昇ります。

昭和の古びた建物の非常階段…とキャプチャーをつけても信じてもらえそうな写真。鉄骨が華奢。

最初の踊り場でふと気がついた。

この鉄骨。えらく華奢じゃないですかね。

そして、入り口のところに書いてあったことを思い出した。1896年建設

この2つの事実が私の中で一つの情報としてまとめられ、そこに一つの感情が生まれた。

怖いっ

さっきの地上から100メートルの高さにある吊橋のほうがよっぽど怖いだろう…とお考えの方も多いと思いますが、なんかこの125年近く前に建てられた塔のどこかが錆びていたりとか土台がどうかなっていたりする可能性はたった数年前に現在技術の粋を集めて作られた(ような気がする)吊橋が落ちる可能性より遥かに高い気がする。

こうして「下を見ちゃダメだ」と言い聞かせつつ再び昇り始める。3/4くらいまで登ったところで

階段が螺旋になった。脳内では某横山元弁護士「もーやめてっ」と叫んでいた。

なんか隙間から落っこちそうな気分になりませんか。私はなりました。

勘弁してくれよ…と心のなかで泣き言を言いつつ上り詰めると、文字通りのてっぺんに到着。まさかここまで登ってこられるとは思わなかったよ。

そこは人が10人も登ってきたらあふれるような狭い場所。一生懸命後ろに下がって撮ったのがこの写真。実はあと数十センチ下がれたけど後ろの柵に体を預ける勇気は私にはなかった。チキンとでもダックとでも好きに呼んでくれ。

言い訳をさせてもらうと、ものすごーい強風で塔が明らかにゆらゆら揺れてるのよ。ホントに自分でも説明できないけどあの吊橋が触れているのは平気だったのにこっちはダメ。怖かった。

そんなわけで、一生懸命撮ったパノラマ写真にも柵がしっかり写り込んでいるわけだ。もし柵の上でカメラを構えれば柵など写り込まなかったわけで。

上はこんな感じ。本当にてっぺん。そして、なんて細い鉄骨使ってるのよ…ホントに大丈夫なの?これ?

というわけで、降りる様子を動画にて。2倍速です。なんか古いビルの非常階段のような趣が理解していただけるかと。ついでに強風と。

このあとは田舎道ばかりを選んでのんびりとドライブがてら帰宅。ほんとに一人で楽しめた日曜日でした。