ハルツ国立公園遭難(未遂)事件(3=完)


こうして、遭難一歩手前でハルツ国立公園から下山した私たち。まあ、悪いのは紙の地図も持たずに山に入った、Googleなんぞを信用した私たちです。で、まだ続きがあるんです。情けないことに。

森の中のカフェ(Steinerne Renne)では朝ごはんしか食べていなかったにも拘らず飲み物のみ注文。まあ、ある意味この日にした選択のうちで数少ない正解。もしのんびりお昼ご飯を食べて出発してたら日が暮れてホントに遭難騒ぎになってた可能性がある。

山から降りると、不思議なくらいお腹が空いてない。なんか疲れすぎたのかそんなことってありますよね。嫁は車を出すなり助手席で本気で寝入っている。

私は時間調整も兼ねてあえて高速道路を使わずに一般道でのんびりとうちに向い車を走らせる。しばらくしたら嫁も目を覚ますだろうと。私は眠くなんてなく、普通に運転してました。

案の定、1時間くらいすると嫁がちょっと目を覚ましたので夕飯の提案をする。うちからまだ車で30分ほどかかるところながら、目をつけていた魚料理のレストランがあるのだ。なにせ、うちに帰っても食べるのものなどない。

Der Fischmeister

こちら、魚の養殖をしながら、直販、さらには直営のレストランをしているらしい。さらには移動販売車であちこちを回っているらしい。

話はずれますが、うちの近所の村、数軒のスーパーがあるのですが、鮮魚を売っている店は一軒もありません。売っているのは冷凍の魚か、パックに入ったスモークサーモンなどのたぐいのみ。もちろん鮮魚を売っていてもお刺身などは望むべくもないのですが、それ以前に生の魚を売っていない。

うちの前にはどこか北の方から週に一度魚の販売車がやってきます。で、毎週何かしら2-30ユーロを使うちょっとした「お得意様」です。私たちとは別に嫁母もさらに魚を買っているので。まあ、そんな移動販売車をこちらもどこかでやっているということですね。

注文前に嫁にダメ元で聞いてみた。ワインを飲みたいのでうちまで運転してくれるかと。即座に却下される。お疲れでとても運転などできないと。バカヤロー疲れているのはお前だけじゃない…と逆ギレすることは私にはできなかった。私がきちんと計画を立てていなかったことでなんだかグダグダになったのは事実だし。

幕の内弁当が大好きな日本人。こんなあれもこれも食べたいという4種盛りというのに惹かれるわけです。

こうして食べた魚料理はこちら。魚の四種盛り。

言うまでもなく飲んだのはノンアルコールビールです。ここでビールを飲んだら間違いなく飲酒運転です。あーあ、ワイン飲みたかったなぁ。

料理は美味しかった。まあ、強いて難をあげればやたらと明るい照明とか、田舎臭い調度品とか(実際田舎なんだし)あるけど、この値段でこの料理が出てくるなら何の文句もありません。満足してうちに戻りました。

ばたんきゅー(え?死語?知るかい。)

翌日は3月31日(日曜日)。3月の最後の日曜日は夏時間の開始日。時計の針が1時間進んでしまったこともあって嫁はいつまで経っても起きてこない。この日は完全に怠け者モードに入った私たちはのんびりとお昼ご飯を作ったりなどして日曜日を過ごしました。

その夜。

バスルームから御御足もあらたかに嫁が私の仕事部屋に飛び込んできた。

「ここ見て。ここっ」

夫婦とはいえもう少し恥じらいを持とうよ。なんで内股を見ろと…。なによ。ここがどうした。

「よく見て、よくっ」

なにか1-2ミリくらいの黒いものが…

「ダニっ、昨日、ダニに食われたっ」

なんですと?

そういうオチか。昨日、Google Mapのせいで廃道に迷い込まされて激藪の中をさまよった結果ダニに食われたわけか。

「ちょっと、ちゃんと見て。ちゃんと」

こうして、嫁の全身をくまなく検査させられるハメになった私。…うん、とりあえず、もういないと思うよ。すると…

「はい。服脱いで?」

こうして強制的に全裸にさせられた私。あまり詳しくは書きませんが、全身をくまなく見られましたよ。いくら夫婦でも…ねえ…

「いたーっ」

…え?

なんて説明したらいいのかな。おしりのお肉。男性でも女性でも垂れてなくてプリっと持ち上がってたら良いケツ…になるケツ肉があるじゃないですか。あのお肉と太ももの境に見つけたらしいんですよ。ダニさんを。

新鮮。採れたてのダニさんです。

ここで取り出したるは、先代のトラクターに轢かれて死んでしまった外飼いだった猫用に買ったダニ捕り用の道具。大きさこそ違えどまさに釘抜き。これ、当然人間にも使えるわけ。

嫁はうまくダニに引っ掛けるとくるっと回転させてダニの駆除に成功(注:これ、間違ってます。後述)。いや、嫁いわく成功しなかったらしい。

私のケツ(のダニがいた場所)をまじまじと見つめて

「ダニのくちばし(でいいの?針というべき?)が残ったかもしれない。感染症にかかるかもしれない。明日、医者に行こう」

はぁ…。

翌日は4月1日。世間的には4月馬鹿の日なのですが、個人的には私の誕生日です。そんな誕生日の午後、近所の医者に夫婦揃って出かける。

このお医者さんに事情を説明。当然といえば当然、じゃあケツ見せて…という屈辱の展開になる。そう言えば、2度ほど受けた人間ドックでも直腸検査はなかったから、人生でお医者さんの前にケツを晒すの初めてかも。

嫁:「ほら、ここ…あれ?どこだったかしら…もう見えない」

見えないくらいなら問題ないだろうが…と心の中で突っ込む私。

それから医者と人のケツを挟んであーでもないこーでもないと話す二人。なんでもダニを取り除いたことは間違ってないが、その際はまっすぐ抜くべきでひねって抜こうとするのは間違い(針が残るから)だとか、念のため向こう6週間は様子を見たほうがいいとか、なんでダニに刺されたのかとか、嫁の知り合いの知り合い(誰だよ)にダニに刺されたのが原因で仕事ができなくなった人がいるとかいないとか。

私:「あのー、私、ケツ、しまってもいいですかね…」

あれから3週間ほど経ちますが、どうもなってないので問題はないと思われますが、あれから嫁が毎晩やってくるのです。

「はい、お尻見せてー」

…正直やめてほしいです。問題なさそうだからもういいじゃないか…というのですが許してくれません。正直屈辱です。勘弁してほしいです。

結果として嫁は

「もう二度とハルツ国立公園になんか行かないっ」

と高らかに宣言。これが一番痛いかも。