M50ってご存知でしょうか。アイルランド、ことダブリンにお住まいの方ならご存知だと思われるダブリンをC字状に囲む半環状の高速道路。東京でいえば外環道のような感じでしょうか。ここ10年で一気に整備されました。ちなみに、巨額の建設費を投じて作られたDublin Port TunnelもこのM50の一部。
そもそも計画がたてられたのは70年代のことだそうな。が、開通したのは20年以上経った90年代半ばのこと。それからの10年のアイルランドの経済発展は著しく、片側2車線での交通量は飽和状態、さらには各インターチェンジが本線を除き信号機つきロータリー(roundabout)での平面交差になっているため、こと幹線道路とのインターチェンジでは朝夕をはじめとして大渋滞(設計・建設段階ではこんなことになるとは夢にも思ってなかったそうな)。
さらに状況を悪くしたことには、ちょうどこのM50の中間点に当たる部分にある橋。Liffey川を渡る橋は有料。この料金所は平日の日中いつ行っても渋滞している。もうこのおかげで私にとってのM50は「避けるべき道」に分類される。わざわざ行列して金を払うなんて馬鹿げている。
挙句の果てには、新しくできたLUAS(路面電車)を何を血迷ったかインターチェンジの中でも一番渋滞の激しかったRedcow Roundabout(俗称Madcow Roundabout)にて平面交差させる莫迦っぷり。都市計画の専門家でもなんでもないシロートでも、ナウマンゾウと同等かそれ以上の脳ミソを持ち合わせていれば、始終渋滞している交差点に路面電車の線路を引いたらどうなるかわかりそうなものですが。
これじゃあいかん!と思ったのか、それともこれ以上渋滞がひどくなったら暴動がおこるとでも思ったか、そのへんは定かではありませんがM50はここ数年で開通したばかりなのに改良工事が続けられています。まず、片側3車線化、そして、件のMadcowを始めとする数か所の渋滞の一番激しかったインターの信号機を撤去した立体交差化と、改良工事は着々と進んでいます。
ただし、なぜかフツーのクローバー型のインターを作りたくないのか、その「改良」された立体交差は進行方向によってはUターンするような感じになったり、一部信号つきだったり正直に言ってナウマンゾウ以下の脳ミソの私には理解不能です。口ではうまく説明できないので気になる人はここ見て。各方面から(たとえば画面下のM50の南から市中心部へ)移動するのを指でなぞるとそのおかしさに気がつかれると思います。(注:pdfファイルが別ウィンドウに開きます)。
まあ、かくして一部意味不明なM50の改良計画も佳境に入りまして、今度は渋滞の諸悪の根源と言っていい本線料金所の撤去を敢行。
…と口で言うのは簡単ですが、いったいどうやって本線料金所を撤去するのか。可能性は二つ。(1)料金徴収をやめる(2)全部ETC化。で、アイルランドはやっちゃったんですよ。全部ETC化。
8月の終わりより、M50の本線料金所のあった場所を通過する車両は、次の3つの方法で料金を払わなくてはいけないそうな。(1)M50利用後翌日までにニュースエージェント(コンビニ)等の指定の取扱店またはネット上で3ユーロ払う。(2)指定のサイト上にアカウントを開いて利用ごとに2.5ユーロ払う。(3)ETCを積載して2ユーロ払う。ただし、月に1ユーロの口座維持手数料を払う。
この国は進んでいるんだか無茶なのか私にはわかりません。公共の場所でのたばこ禁煙といい、このETC設置といい、国の規模が小さいからなのか信じられないことをしてくれます。M50の料金所のある橋を何にも知らずに利用して、翌日までにその料金を払わなければ罰金を取るって言うんですよ。Roscommon郡から出てきたおっちゃんが何にも知らずにM50を使って数週間後に罰金の通知が来たなんていかにもありそうな話です。
かくして、M50なんぞ使ってない私ですが、面白がってETCの装置を注文してみました。民間の数社の業者が委託して販売・管理してます。その中で、利用ごと10%の手数料を取るものの、月ごとに1ユーロの口座維持手数料を取らなかった会社を選択。数日後、ETC装置(こっちでは「タグ」といいます)が送られてきた。
ちっちぇー。
なぜ、サイズ比較のためにおかれたライターが北斗の拳なのか疑問が残りますがそんなことはまあいい。日本のカードを飲み込むサイズのETCの装置に比べると、アイルランドの装置の小ささが際立ちます。これをフロントグラスに取りつけろとのこと。はいよ、言われたとおりに取りつけました。
完成図。
どうでもいいことですが、ETC装置の上に貼ってあるステッカーは、保険の証明、車検(NTC)の証明、重量税の支払い証明です。これらのステッカー、アイルランドでは助手席側の下のほうに貼るのが一般的ですが、私は日本的にルームミラーの後ろに貼ってます。
かくして、取り付けたので面白がって早朝に空港に行くときにM50を使ってみた。実際のところ早朝だと市の中心部経由で行っても所要時間は5分と変わらないのだが。
道中、料金所があった場所(料金所は本日現在撤去作業中ではあるが存在している)を通過してしばらく走ると、日本のNシステムのような装置が登場。そこを通過すると突然ETCが「ピッ」という電子音を立てた。これが課金の合図らしい。
考えてみると、日本のETCは料金所の建物を通過して、ゲートをくぐるので確か時速25キロ以下で通過しなければいけない(みんながみんなそうしているかは大いに疑問ですが)。だけどアイルランドのETCは私が100キロ超のスピードで超過したのにしっかりと課金されました。そういう意味ではこっちのほうが優れているとも言えそうですが、ETC装着を義務化、それが嫌なら通過後にすぐ指定の店に行って金を支払え…ってのは乱暴すぎるような気がします。
そして、「ピッ」という電子音がした以上、この装置には電池が入っていると思われます。が、電池交換の方法など説明書のどこにも書いてない。はたして電池が切れたらどうなるのだろうという点も気になります。