玄人が見たらバッカじゃねえの莫迦にされ、一般の人には何の興味も持たれないシロート目で見た車両の辛口評価、たぶんほとんど誰も見ていないのをいいことに、回を重ねるごとに暴走がひどくなってますが、まあ、続けましょう。書いてて楽しいし。
エントリーナンバー9。Stadler Dosto
総合評価★★★★
前回ドイツ国鉄採用のSkodaの2階建て車両を散々こき下ろしましたが、今回もまた2階建て車両です。2階建て車両って突っ込みどころが多い気がします。
スウエーデンのMÄLAB社との契約で作られた車両です…あ、言われてみると青がイケアを思い出させます。赤いアクセントラインを黄色にすれば完全に「イケア色」(=スウェーデン色)でしたね。私をしてStadler社が好きだと言わしめた車両です。
Skodaの車両と同じ一枚の大型扉です。ただ、比べると扉についた窓ガラスが、千代田線の6000系と16000系くらい異なります。意味がわからんという人、こっちのほうがでかいという理解でいいです。これはでかけりゃいい理論が成り立つ気がしますが。
それにしてもドア周りがしっかりと作り込まれています。握り棒の位置や、ドア開ボタンの位置などは満点だと思いま…あれ?ドア閉ボタンはないの?スウェーデンの冬は寒そうなのに。あるいはこのデッキに人が立っていることを想定していないのか。なんにしても、この扉が2枚じゃなくて1枚なのが気になります。もし、日本の通勤列車のドアがこんな一枚扉だったら…たぶんダイヤが乱れる一因になるだろうなぁ。
まずは、車軸の上の部分、つまり、1階でも2階でもない部分へ行ってみましょう。ちょうど運転席の真後ろになります。いわば中二階になるのですが、ドアから中二階に上がるのに5段の階段があります。前回登場したSkodaの車両は3段。2段の違いはドアの高さです。このイケア車両(Stadler Dosto)のドアのほうが階段2段分低いのです。この列車が運行されているスウェーデンのどこかはホームの嵩上げが行われていないのだろうと想定されます。
運転席後ろの小さな部屋に入った瞬間におおっと唸ってしまった。これはこれは。これは完全にイケアマジック入ってます。いや、Stadlerはスイスの会社なんだからイケアマジックも何もないもんだが、まあ細かいところはいいんです。この木目調をうまく使ったインテリア、かなり好感が持てます。イケアマジックというのに語弊があるなら北欧マジックなら問題ないかしら。
ただ、これなら対面式のボックスシートにしても良かったんじゃないかという気がする。そういえばすっかりいい忘れてましたが、ペダルを押せば座席が回転するとかいう神機能はほかは知らんが少なくとも私の知るヨーロッパ各国では見たことないですよ。日本人が進行方向に向かって座りたがるのはもうほとんど宗教の域に達している気がします。私はね…進行方向に向かってじゃないとイヤです。日本人ですから。
編成の一番前(あるいは一番うしろ)の席に座ってみました。残念ながら、前の座席の下に足が伸ばせないので足元の余裕に不満が残る残念席です。右下にあるのはビニール袋。なぜか北欧の列車にはゴミ用のビニール袋がご覧のように取り放題になってます。車内美化にご協力ありがとうございます…はいいんだけど、プラスチックのストローですら槍玉に挙げられている今日日、なんとなく環境先進国のイメージのある北欧でビニール袋取り放題ってなんか違和感を感じますね。
ご参考までに。ドア脇にあるゴミ箱。スウェーデン語は解しませんが、右は「紙」左は「その他のゴミ」で正解だよね。…あれ、プラスチックは?金属は?瓶は?ドイツのように缶や瓶に預り金があるのかもしれませんが、最後にスウェーデンに行ったのはたぶん15年とか前です。覚えてません。
話を戻します。そこにテーブルがある限り、私には引き出す義務があります(意味不明)。というわけで、引っ張り出してみると、小さなテーブルが登場。一部が手前方向にさらに伸びて、ノートパソコンなどを支えることができます。これは地味にいいね。
たださぁ、さっきも書いたけど、こんなテーブルつけるくらいなら、4人の対面式のボックスシートにしたほうが正解だったんじゃないかという気がする。
ドアから階段を登ってきた時にあえてスルーしたんですが、階段脇にわざわざガラスで仕切った謎のデッドスペースが。ごまかすために…かどうかは設計者のみぞが知るですが、補助席が設置されてます。はい。補助席とはいえ、窓なし席ー。わざわざガラスで仕切って、なんというか、昔で言えば、この席は通常席に座るご主人様に使える使用人の席…といった趣です。あ、もしかして、ボックスシートにするとその「ご主人様と使用人」感がさらに強まるからあえてボックスシートにしなかったのか…というのは明らかに妄想をこじらせてます。
ここでこの席をボックスシートにしなかった…できなかった理由をバラしちゃいます。さっきのテーブルを開いた席。よーく見ると足元に赤い線が引いてあります。実はここ、運転席のドアの開閉範囲。ここに座席を設置すると運転席のドアと干渉してしまうので、この運転席の後ろの部分には1席少ない7席しか設置されていないのです(補助席除く)。
運転席への天の岩戸が開きました。潜入しちゃいましょう。
運転席。ヨーロッパではよく見る感じの作りなのですが、また突っ込みどころが多いです。
まず言いたいのが、横。なんで横方向に窓がないのかが不思議でしょうがない。これでどーやって正しい位置に駅で車両を停止させるのかさっぱりわからない。ほら、日本だったら編成数により停止位置が明記してあってそこの車両の先端を合わせればいいわけじゃないですか。こんな車両だったら何を目印に停めればいいのやら。もしかすると、ヨーロッパで乗車位置なんかが駅に書かれていないのはこのあたりが原因なのかも。
そういえば第1回で紹介したJR東日本に採用された音楽館のシュミレーター。車掌室の外の床には画面が設置されていて、正しいドア位置が確認できるようになっているんだけど、あれ、こっちの運行管理者には理解できない領域かもしれない。「ええ?車両なんてホームから外れてなければそれでいいじゃん」くらいのことを言いそうな気がする。
次にマスコン。草野さんいわく、日本のは手前方向が加速で、奥方向がブレーキでこちらとまるっきり逆らしい。それって、車でいえばアクセルとブレーキの位置が逆みたいな話じゃ。…踏み間違いを誘発しているようなもんじゃん。なにか非常の際に緊急ブレーキかけようとしたら逆に加速しちゃったとか冗談にもならないわ。もっとも日本の運転士さんがある日突然こちらの列車を運行するとかありえないだろうからそれは問題ないんだろうけど、なんでわざわざ逆にしたのか、調べたらなにか歴史的な経緯とかあるのかも。
実はそれが言いたかったのではなく、私が言いたいのはマスコンのいい加減さ。日本のそれは数字で目盛りが明記してあるじゃないですか(してあるんです)。それがない。もうなんというか加速やブレーキの加減というのが完全に運転士さんに任されているんですよね。定時運行へのこだわりなどがこのあたりにも現れている気がする。
マスコンの向こうにあるものが気になる。
これ、シロートの私にはカーオーディオ装置にしか見えないのですが。いや、私が無知なだけで司令との連絡用の無線とかですよね。まさか運転席に専用の音響装置があって運転手さんがお気に入りのCD持ち込んで聞いてたりしませんよね?いや、上にCD入れる穴があるように見えるのは…気のせいですよね。ね?
なんか知らんけど、一両目の先端部を紹介するだけでどえらい文量になってしまった。これ、今回でこの列車を紹介し終わるのか自信がなくなってきました(注:今回はこの車両の紹介のみです)。
こちら、先ほどの「使用人席」(補助席)のところから振り返って撮影した写真です。こうやって見ると、この階がまさに中二階で、階段の踊り場的な高さになっているのが見て取れると思います。これから2階席に上がります。世界一どーでもいいことですが、中二階と聞くと上野の松坂屋を連想します。
階段脇の間接照明がなにげなーくオシャレです。この列車の評価が上がるのはこの辺の細かい造作のような。ついでに言えば、階段の手すりだってお子様用と思われるやや低めのものとわざわざ異なる高さのものが用意されてます。ただこれは他の列車でも見られたな。よく見ると、ここにも補助席が2つ。都合、使用人は三人まで雇えるわけですね。
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2階建て車両の宿命。天井が低い問題はありますが、この木目マジックは正直すごい。車内が引き締まって見えます。関西弁で言うところの「しゅっとしてはる」感じですね。それにしてもドイツ国鉄の一等車よりむしろこちらのほうが格式がある気がしませんか。木目、恐るべし。
階段を上がったら最初にあたる席がこれ。ちょうどドアの真上になる関係で2席分のスペースが取れず、1席+サイドテーブルという感じになってます。最近流行りのヒコーキのビジネスクラスシート、スタッガードシートを思い起こさせます。それはいいんだけど…
「あたり席」の一つは完全窓なし。窓枠…じゃないな、壁とにらめっこ状態です。なぜ、なぜなの?細長い窓か何かを採用できなかったの?もうだったらさ、いっそこの席だけ窓際の「サイドテーブル」に身体を向けて座る特別席にして「突っ伏して寝る人用シート」とかにしても良かったんじゃないかな。…あ、無理だ。足を持っていく場所がない。とりあえず、この席の「あたり席」認定は取り消します。ついでにいうと、このせいで総合評価の星の数が一つ減りました。
通路を挟んだ反対側はといえば…
…荷物置き場になってます。後ろの「サイドテーブル」部の手前につっかえ棒を設置してあるので、「サイドテーブル」部が完全なデッドスペースになってます。長尺のものとかを考えてつっかえ棒をここだけ取り除いても良かった気もしますが。それにしても、荷物置き場に窓があって、その前の席に窓がないのはもう愚の骨頂です。設計した人を呼び出したい気分です。
「あたり席」および「窓なし席」のお次にあるテーブル席です。ここも足元の広さなどを考えれば「あたり席」認定してもいいと思います。どう見ても東海道線の普通グリーン車より居心地が良さそうです。実際シートの具合も良かったし。まあ、見ればわかると思うのですが、このテーブル…
…手前に引き出して利用できます。というか、こうしないと、テーブルが遠くて使い物になりません。
場所を移動いたしまして、こちら1階席の様子をご覧頂いております。座席の向きに注目。通路を挟んで向きが逆になっているようです。これ、今回のイノトランスで初めて見ました。座席が回転しない以上は半分の座席は進行方向逆になるのはやむを得ないのですが、この通路を挟んで逆向きって、何式って言うの?とりあえず、気持ち悪いですわ。やっぱり向かい合わせのテーブル席が正解。
同じ場所から撮影した別角度の写真をば。天井の高さに注目。前回のSkodaの車両より天井が高い気がしませんか?あるいはハットラックの高さが異なるだけかもしれませんが、どう見てもこちらの列車のほうが優れて見えるんですよねぇ。
こちら、1階席のドアからすぐの座席です。ガラスの向こうに外への大きなドアがあります。このように1階席とドア部分は完全にバリアフリー。さて、ドアの部分の高さとホームの高さがあっていれば車内までバリアフリーなのですが、スウェーデンの事情を知らないのでなんとも言えません。ただ、スウェーデンの冬は寒そうなので、きっと真冬にこの席に座っていると駅に到着するたびに寒気がなだれ込んでくるでしょうね。
今度は座席のモケットにご注目いただいております。ちょっと光の関係で実際の色より明るく見えている気がしますが、赤い縫い糸が若干のアクセントになってはいるものの、イケアのソファーの中で一番地味なやつを選んだらこの柄になるだろうなという、万人受けする、悪く言えば特徴の無いものです。で、中央のアームレストの下にあるAC電源に注目。…4つもあるよ。おひとりさま2つの大盤振る舞いです。…だったら、AC電源とUSBにしたほうが正解だったんじゃないかという気もしますけど。どっちにしてものぞみの窓際にたったひとつだけ電源コンセントを設置しているJR東海の関係者の方がこの列車をご覧になってなにか感じ入るところがあったのなら幸いです。
各座席のヘッドレスト部分には読書灯までついてます。お金をかけているだけ…と言われればその通りなのかもしれませんが、いい列車です。
車両の残りの部分を駆け足で眺めていきましょう。
1階席ドア脇にある荷物置き場。やや小さい気もしますが、どこぞの東海道新幹線には荷物置き場がそもそもないわけd…これ以上書くと万一このサイトが関係者各位の目に触れた場合にまずい気がするからやめておこう。
ここで突然入った草野チェック。曰く…
…サンシェードが下まで下がらないっ!
確かに変な隙間が残ってます。このあと他の車両でも調べたのですが、どうもどの車両にもこの気持ち悪い隙間が残されています。あるいはEU法によりサンシェードは完全に閉まってはいけない…とかいう謎法律があるのかな…とかうがった見方すらしたくなります。
編成中央にある謎の空間。乗客から見ると全く無駄なスペースですが、おそらく運行に必要な通常だったら床下に配置されているようなものがこちらに集中配置されいるのだと思います。というわけで、2階建て車両って、単純に床面積が二倍になって2倍の乗客が乗れる…って話じゃなさそうです。
こちら車いす用のスペースです。そういえば、この車両、自転車置き場がありません。そして、1等車すら存在しません。この車両なら1等車などなくても十分快適…ってことなんでしょうか。
一枚上の写真の壁の向こうは多目的トイレです。割とよく見る感じのやつですね。
草野さんが怪しげな小部屋に吸い込まれていきました。ついていきましょう。
乗務員室だと思われるのですが、なんと電子レンジがありますよ。列車用の電源で電子レンジが動かせるんですね…。それにしても…
…なんでこんなに「これでもか」ってくらい電源がついてるんでしょうね。さらにはなぜかLANケーブル用と思われる接続端子もあるし。なんだこれ?
それ以外にも…
…J日本の新幹線のように多目的室…ちょっと気分が悪くなった時に使えるような部屋がありますね。なんか至れり尽くせりな列車です。座席の配置に一部難がありましたが、総じていい列車だと思いました。
この車両、北欧らしいデザインと言うのか、ナカナカ居心地のいい車両でしたね。
ところでマスコンの件、海外勢が前に倒すと加速、後ろに倒すとブレーキなのは、前に進むには前に倒し、減速するには手前へ引くのが、物理的な動きに合っているとか、馬の手綱と一緒だと言う説を聞いたことがあります。
では、日本のマスコンはと言うと、開発当時は右がブレーキハンドル、左が加速制御でいずれも縦軸のレバーでした。これを横軸の一つのワンハンドルマスコンにまとめようとした時に、管轄するお役所は押してブレーキでも引いてブレーキでも構わないが、緊急時に速やかに停止手配が取れるようにと言ったそうです。これを受けて開発者は、万一の時に運転士が取る動き、運転士そのものに万一のことが起こった時など様々なケースを考え、特に、後者の運転士に万一のことが起こった時、病気で気を失うとかには、体が前に倒れるだろうから、押してブレーキを採用した。と言うことです。
これは、日本で初めてワンハンドルマスコンを採用した、あるメーカー幹部が書いた回顧録に記載がありました。
やはり歴史的なお話がありましたか。ありがとうございます。
これ、日本の車両が輸出される時にどーなるのか気になりますね。確か一部は日本で制作されて輸出されているわけで。わざわざ海外仕様にするんですかね…するんでしょうね。
そして中古車両はどーなるのか…日本式とヨーロッパ式が混在しているような運用されたら運転手さんは間違いなく戸惑いますよね。ああ、気になる…。
間違えました、訂正。
お役所が言ったのは、「一度決めたら変えないように」と言ったのが正解でした。
日本製の車両が輸出されるときも、ユーザーの仕様に合わせて製作するので、海外仕様になりますね。鉄道そのもの(または、近代的な運転台)が初めてなんで、全部ご提案ください、となったら、どうなるか分かりませんが、、、