そんなこんなで発車。もともと速達性など誰も期待していない観光列車はトコトコと渡良瀬川沿いの線路を下り始める。そう言えば、平日で、かつ、足尾銅山の観光をしていたらとても乗れるとは思えない午前中のトロッコ列車なのに満席だったというのはある意味すごいな。
トロッコ列車は要所要所でスピードを落として観光案内までしてくれる。美しい清流にしか見えない渡良瀬川も、実は未だに汚染されている話などをうかがう。
トロッコ列車はやがて長いトンネルに差し掛かる。ここでもトロッコ列車は工夫を凝らしてまして、ちょっとしたイルミネーションを実施。
嫁の一言
「こんなもんより、網棚のほうが大事だわ」
夢も何もない発言ですが、確かに、相席となりリュックサックの置き場所に困った私たちからすれば切実な発言です。
そう。途中駅からお客さんが乗ってきて、二人しか座っていない私たちの席がロックオンされて相席に。…相席は構いませんが、勝手ながらこちらでお弁当をいただきますよ。
乗車時に購入した車内補充券を見てずっと悩んでいたことがある。どー見ても「トロッコ列車にはご乗車いただけません」って書いてあるよね。もしかして電話予約時に誤解があった?相席になったこともあり心配になり、車内補充券を販売してくれた乗務員さんのいる売店に。この乗務員さん、車掌業務から売り子さん業務まで忙しそうに全部こなしてらっしゃる。おつかれさまです。
トロッコ列車内には売店があり、わたらせ渓谷鐵道の関連商品などを売っている。で、トロッコ整理券のことを聞いてみると
「間違って発行しちゃいました。ごめんなさい(てへぺろ)」
…もし気がついていたのなら一言言ってほしかったわ。こちとらずっとケツの座りが悪かったんだから。まあいいや。そんなことよりも何よりも予約していたお弁当(と麦系飲料)をくださーい。
トロッコ弁当とやまと豚弁当をそれぞれひとつづつ予約。このお弁当、前日までの予約が推奨されていたので、あらかわ遊園から友人のスマホを借りて予約したのだが、忙しい時にお邪魔しないように販売元のレストランの閉店間際に電話。だが、この気遣いが逆効果だったか閉店間際に電話する迷惑客になったらしく、えらくつっけんどんな応対で予約を受け付けられた。なので、予約がちゃんとされているかいささか不安だったのだが、大丈夫だった。
そんな予約の時に聞かれたこと。「お茶はおつけしますか」。何も考えずに「はい」と答えたのだが、その結果。
こ、これはっ!!
昭和の時代に新幹線で飲んだ記憶がかすかにあるお茶じゃないか。こんなもんが平成の世も30年が経過しようという今日びに生き残っていたのかと仰天する。いや、フツーにおーいお茶か何かのペットボトルが出てくるくらいにしか思ってなかったのよね。これをツイッターで実況中継したらこんなツッコミを頂いた。(あ、私のたまにつぶやくTwitterのアカウントはこちらです)。
なるほどなあ。
言われてみると、このお茶の「ペットボトル」が全盛期の頃、おーいお茶のペットボトルなんて存在しなかった。コーラの缶も細長い250mlの缶だった。初代ペットボトルって言い得て妙というか、目からウロコだわ。お茶はすでに冷めきっていたがそんなことは問題じゃない。いや、感動した。
…と、ペットボトルのお茶を紹介してお弁当を紹介し忘れそうになったわ。
こんな言い方をしたら怒られそうなんだけど、トロッコ弁当って、よーするに幕の内弁当。どこにでもあるシロモノじゃん、なので私はやまと豚弁当を食べたかったのだが、「つまらない」(お約束注:個人の意見です)幕の内弁当よりも美味しそうなやまと豚弁当を嫁に譲った。なんて優しいアタクシ。
…なのに、嫁はひとくち食べただけで交換を要求。こちとら願ったり叶ったりの状況なので大歓迎…なのだが、なんでこのやまと豚弁当を嫁が気に入らなかったのかは気になるところ。
こんなところにも洋の東西の文化の差が出てきているのだ。まあ、有り体に言っちゃえば、やまと豚弁当の豚肉、脂身が多すぎらしいのだ。私に言わせれば、この豚肉と醤油ダレが絶妙の組み合わせでもう大満足の逸品。そう言えば、同じ理由でウナギも食わず嫌いだな。一方で、この少量でいろいろ食べられる幕の内弁当って昨日の話じゃないけどまさに和食の極みだよね。
間藤駅からトロッコ列車に乗ったことはある意味で失敗。というのも、渡良瀬川の上流に行けば行くほど美しい自然を満喫できるのだが、下流の桐生市界隈は上流に比べると見るところは少ない。つまり、ハイライトを先に見てしまい、だんだん起点の桐生市に近づくにつれ、見るところが少なくなっていく…というオチ。
上の写真を見てふと思った。そう言えば、このテの観光列車にありがちとなった水戸岡鋭治デザインとはこのトロッコ列車は無縁なのね。別に水戸岡鋭治氏を礼賛するつもりはないけど…なんだろ、この車両にもうひと工夫あってもバチは当たらなかったかもね。
こちらは「非トロッコ」車両。座面の座りごこちは木製ベンチのトロッコ車両より良さそうながら、その代わりテーブルがない。「満席」とアナウンスがあったけど、写真手前のロングシートまで座席指定していたのかは定かではない。網棚も完備…つまり、トンネル内のなんちゃってイルミネーションはこちらでは実施されない。
2時間ほどのトロッコ列車の旅の終わりは桐生駅。その手前に東武桐生線と交差する相老駅があったんだけど、乗換案内に「浅草」って出てきて、あれ、ここって意外と東京に近いんだなと改めて驚いた。考えてみたら、羽田空港や日本橋まで乗り換えたった1回で行けるってすごいことじゃないかな。
桐生と言えば、とあるお騒がせの元市議会議員さんのイメージしかない。両毛線は一時間に1本程度の運行しかないらしくここでも40分ほどの待ち時間があり、街に出てみたのだが、駅から溢れ出ていた印象は正しかった。地元の方には申し訳ないけど、元気のない地方都市…と言った趣。降り出した雨とあいまって、人気がなくたそがれた、そして立派な高架駅がその印象をさらに引き立てる。
今これを書くにあたって改めて調べていて気がついたんだけど、桐生市から高崎市に向かうには上毛電気鉄道上毛線という選択肢もあったのね。もしか、桐生市の中心の駅はこの上毛線の西桐生駅だったり…たぶんしないよね。まあ、高崎でも桐生でも別の駅に到着するのであまり現実的な選択肢じゃなさそうだけど。
駅前にある喫茶店で時間を潰そうとするが、この日は定休日だか営業時間外だかで玉砕。失礼ながらあまり活気の感じられない駅前のシャッター通りに開いていたケーキ屋さんは残念なことにお持ち帰り専門店。それでも美味しそうだったのでケーキを2つ買うが…どこで食べよう。駅構内のベンチで食べようとしたらこれまた活気がない(お隣のキオスクも閉店されておりまして…)立ち食いそば屋の親父に「そこはうちのベンチだ」と追い出される。すいませんーと立ち去るが…どーやって食べようかと悩むハメになる。結局、あまり味わうこともできずに食べることに。ちょっと残念なことになったわ。
両毛線の車内での記憶はほとんどない。なぜなら風情も何もないロングシートの車内で熟睡してしまったから。
高崎の一つ手前の駅で突然私の鼻提灯が破れた。誰かが言っている。
「ドアが閉まりまーす」
これが車掌さんのアナウンスならなんの問題もない。けど、言っているのは少年…と呼ぶにはちょっと無理のある若い男性。
これだけなら、ああ、なんか鉄道マニアかなにかなのかと思うところだが、彼はちょっとその斜め上を行っていた。本物の車掌さんが
「次は高崎、終点です。お乗り換えのご案内です…」
と乗換案内の放送を始めたのだが、この男性、その案内を一字一句違わずに同時中継している。いや、車掌さんのアナウンスなんてある意味決まりきったものだけど、何とか線、何番線より、何時何分…っていうのが正確に再現されているのだ。もしかして、レインマンは実在するのか?と思わず目が醒めてしまった。
マグーン(ドカポン王国…ってたぶん99.9%の人には通じないな)の高崎駅は、わたらせ渓谷鐵道の上流から、あるいはドイツの片田舎からやってきた私達には大都会の駅でして、駅の片隅にある上信電鉄のホームへ。このスイカもパスモも使えません…という不便さに逆に安心する(桐生から高崎への両毛線では使えた)。
このどう見ても元西武線の電車、中は残念なことに往時の西武線そのままに風情のないロングシート。朝8時半から無為な待ち時間を含めるとすでに8時間近く経過しもういい加減乗り疲れてきた。これだけの時間をかけたのに、移動距離は実は150キロに満たないというのはもう冗談の域。そんなこと言うならおとなしく新幹線に乗れば良かっただろ…という話になるのだが。
もうちょっと文句を言っていいならこの区間の営業キロは34キロで1110円。ちなみに京王線の新宿から京王八王子までは37.9キロで運賃は360円。…3倍ですか。そりゃ大手私鉄と地方の私鉄の違いは大きいだろうよ。だけど…運賃3倍…ねえ…。「財布落としても定期落とすな」は北総線だけの話じゃなさそうですな。とりあえず、運賃だけで語っていいならJRでの横川駅に行くべきでした。
そんな中、ふと頭上の吊革に目を留めると、
…私たちの席の上だけハート型の吊革がぶら下がっている。
別に狙ってこの席に座ったわけじゃない。なんとなく座ったのだが、狙ったかのように頭上のハート型の吊革。なんじゃこりゃー…と思ったがそういえばこの電車、マンナンライフのラッピング車両だったわ。つまりはそーゆーことだわ。
電車はのんびりと田舎の各駅に律儀に停まる。一部の駅には駅員さんと思しき方がいるのだが、ご丁寧にも去ってゆく電車に礼をしたり、手を振ったりと思えば日本以外では目にすることのできない光景が繰り広げられる。去りゆく電車に手を振る女性の駅員さんにアホな嫁が手を振り返すと、それを目ざとく見つけた駅員氏、まさに破顔の笑顔で両手で嫁に手を振り返す。動画サイトに投稿したら人気動画になったのではないかという勢いのいい絵だった。まさかそんなことになるとは思っていないのでもちろん撮影はしていないけど。
そんなこんなで高崎駅から1時間かけてついにようやくとうとう上信電鉄の下仁田駅に到着。「上信電鉄」とは上州と信州を結んでいるから上信電鉄。ん?待て、下仁田駅は長野じゃない。そう、信州に辿り着く前に県境の山脈を貫くことができずに上信電鉄は力尽きてしまったらしいのだ。今となってはこの区間を鉄路で結ぼう…なんて言う人はもはや誰も居ないだろうからおそらくこのままだろう。
鉄路を結ぶ夢は潰えたとは言え、東京は本郷から延々と続く国道254号線はこの山脈を立派なトンネル群で貫いている。峠越えの労を厭わず迎えに来てくれた友人の車でこのトンネルを利用して佐久市に到着。長い一日となりました。
Snigelさんの奥様も絶賛されていたいろいろな物をちょっとずつ組み合わせる・・・日本の小鉢の食文化、本当に良いですね。
日本人はとかく「セツト物」に、弱いです。
あはは…まさにそのとおりだと思います。
小鉢文化に無理やり文句をつけるとすれば、大皿一つ…のほうが食洗機で有利なことくらいですかね(;・∀・)
新年一発目の記事でも「あけおめ!」とか書かない思慮深さが好きです。そして「鼻行灯が破れた」なんて古風な表現を遠くドイツから届けてくださるのには感謝しかなく。って、まさかこんなところでドカポン王国の名を目にしようとは…!
そんなわけで今年もよろしくお願いします。続き、楽しみにしてまーす。
なんというか、毎日更新してれば新年のあいさつくらいしたような気がします。
はい、昭和の時代に取り残されたような表現やネタばかりで申し訳ないです。言われて気がつきましたが、確かに鼻提灯とか誰も言わないですね(;・∀・)
けんけんさんのコメントで個人的ないちばんのツッコミどころは「日本三大秘境」ですね。どこやねん…と思って調べてみたら、なるほど。というか、中部と四国のそれはけっこう観光地化されているような。