翌日は、◯分市内へ。嫁が吸い込まれていったのはデパートの茶碗売り場。…まだ買うんですか。
そののち地元の友人とかまえ魚河岸 水元という居酒屋さんへ。
この日はこれだけ。結構早くから行動したので午後8時台の電車でうちに戻る。この日の深夜もよく揺れた。特に夜中の1時過ぎに起きた地震には叩き起こされた…が、「またか」と思いすぐに寝てしまう。これが「またか」どころの話ではなく、熊本地震の「本震」と呼ばれる地震だったわけで。
翌朝。目が覚めるとまた地震。これが実は◯分では一番被害の大きかった由布市を震源とする地震。…だったのだが、わずか一日で変に地震慣れしてしまった私には「あーまた揺れてるなあ」程度。
朝のニュースは地震一色。この日はくじゅう花公園にでも行こうかと思ったのだがどうも震源地に近づいていくのは正解でない気がする(実際がけ崩れなどで道路が寸断されていた)。かくして、急遽予定変更。震源からやや遠い、地震被害の少なそうな国東半島へ行こう。
…向かったのは、杵築。え?読めない?上から読んでも下から読んでも「きつき」です。こちら、全国でも珍しいサンドイッチ型城下町として売り出している…らしいのだが、残念ながら全国レベルの知名度ではない。たぶん、これを読んでくださっている多くの方も「どこそれ」と思われているのではないかと。まあ、これからおいおい説明しますから。
なんで杵築にしたかというとですね、この日は月に一度のきもの感謝祭! in 小京都きつきなるものが開催されているらしいのね。2400円で着物が一日レンタルできて、しかも、着物を着ていたら観光施設の入館料が無料になるという。
市役所近所の駐車場に車を停め(無料…そういえばこの界隈に「コインパーキング」なるものの概念すら存在しないな。駐車場は無料が常識)、和楽庵というお店へ。着物レンタルそして着付けまでしてくださるそうな。
「すいませーん」
「あー、予約をしていた方ですかね?」
「いえ、予約してないんですが…まずいですかね?」
「いえいえ、今日はキャンセルがたくさん入ってますので大丈夫ですよ」
…と、突然外国人を連れた訪問にもかかわらず歓迎される。どうもこの地震で多くの予約が取り消されているらしい。もしかして逆にラッキーだった?
などと思った私に罰が当たったか、店内に入るなり襲ってくる余震。鳴り響く緊急地震速報。…確かにこんな日に観光に来るなんて酔狂に違いない。ただし、この日はこれ以降杵築市内を観光している間大きな余震はなかった。
(ご親切な和楽庵の皆様。その節はお世話になりました。)
嫁が着物を選ぶ。知らなかった。着物ってワンサイズじゃないんだ。無知を笑われることを覚悟して書くけど、着物なんて、帯などでいくらでもサイズ調整ができると思い込んでたのね。
ところが、ヨーロッパ人の嫁の体に合う着物の選択肢はほとんどないという。ひとつ気に入ったのがあったらしいのが、合わせてみた結果「無理」という評定がくだされる。で、消極的選択として青系の着物を選ぶ。
他方、私は極めて標準的日本人体型なので選択の余地がいくらでもあるか…と思いきや、男性の着物はほとんど選択の余地がないというオチだった。まあ、どれでも良いやと思いひとつテキトーに選ぶ。
(出待ちの噺家…ではなく、私です)
で、着てみたわけだ。いやー、感動した。この胴長短足の日本人の体、着物が似合うんだわ。まさに着物を着るために生まれた身体と言って良い。どう見てもこれから高座に上がる噺家にしか見えない。嫁は嫁で…意外なほど似合っている。さすがプロの仕事なのか。
さて、散策に出ましょう。最初に書いた通り、杵築の城下町って「サンドイッチ型」なのね。なにそれって、真ん中に谷があって、その上と下に武家屋敷群があって、それぞれ「北台」「南台」と呼ばれている。で、谷は町人の居住地だったわけです。現在いるのはその谷の中。北台に登ろうと。
北台に登るのに酢屋の坂という坂を登るのですが、そこがちょっとした写真撮影のスポットになってまして、プロのカメラマンさんが待機中で無料で撮影をしてくださるとのこと。和楽庵の女性従業員さんによると、「まず最初にここに行ってください。着物が着崩れしないうちに写真撮影した方がいいですから」って。ごもっともだわ。
じゃじゃーん、ここが酢屋の坂です。いい感じでしょ。何が一番いいって、思い出してほしい、あの京都のたかが竹やぶが観光客にあふれていたことを。それに対し、ここ、確かに熊本地震の余震のまっただ中ということもあったけど、だーれもいない。これってさ、「穴場」っていうやつじゃないかしらね?
坂を登ると武家屋敷が並んでましてまず向かったのは大原邸。受付では「着物を着ている方は無料です。どーぞ」と歓迎される。
(中央に写っているのは…私達です。係の人が気を利かせて写真を撮ってくださった。)
杵築藩の家老だったという大原邸。立派。古い純和式の建物を見て、ちょっと頭の片隅に熊本地震で倒壊した家の写真が頭に浮かんだが、ここは藁葺、平気だと言い聞かせる。
模造刀があるからと遊ぶバカタレ。遊んでいいと言われたので抜いてますからね。
お茶の先生がお茶を点ててくださいましていただく(ちなみに別料金)。
琴がある。京都や金沢では「お手を触れないでください」と書いてそうなところなのに、杵築では「ご自由にお弾きください」だって。緩いなぁ。
お隣は能見邸。ここは入館無料で中の一部は台の茶屋という喫茶室になっている。
(写真は杵築市の公式サイトよりお借りしております)
そのお隣は磯矢邸。
ここは入るなり杵築市の観光協会の方が各部屋を説明してくださった。着物を着た噺家は突然通訳に早変わりする。
(こうして、谷を隔てて城下町が北側と南側に伸びているのです)
今度は酢屋の坂を逆におりて、塩屋の坂を登って南台へ。こちらにはきつき城下町資料館がある(ここも着物を着ていると無料)。中は撮影禁止のため写真はなし。さらには杵築城を一望できる一松邸。
(一松邸からは杵築城まで一望できます)
もうこの時点で4時間以上が経過。和楽庵に戻り、噺家から普通の人に戻る(着替えたのね)。このまま着ていても良かったんだけど、どーも着慣れないものだし、トイレの心配とかあったり(できるんだろうけど、特に嫁のほうが心配だった)したし、着慣れないものだからやっぱり肩が凝るというか。
ようやく現代人の服装に戻り身軽になった二人は今度はカフェあおぞらへ。いわゆる「古民家カフェ」というやつ。
ここに、かないくんという絵本が置いてありまして…翻訳させられる。何の予備知識もなく読み始めて気がついた。これ、子供向けの絵本じゃないわ。
そして、本日の締めは、杵築城。
が、しかし、すでに遅すぎた。閉館。カフェでのんびりかないくんなんか読んでる場合じゃなかった。
ふとスマホを見ると、おかんからラインの連絡が入っている。
「帰りに明日のトースト買ってきて」
せっかく旅行に来てるのに生活感あふれるメッセージありがとうございます。はいはいはい。と表通りのスーパーへ行く。
店の入口にあるベーカリー。午後5時を前にしてすでに品切れ状態。使えんなー。
仕方ないので、スーパーの中のパンの売り場に行くが…なにもない。
ことここに至ってニブい私もようやく気がついた。もしかして、熊本地震の影響で物流が滞っている?
でも、熊本から◯分って、そんなに大きな物流があるのかしら?…と思ったら、この時は知らなかったのだが、この日の朝の由布市を震源とする地震で、震源近くの高速道路の法面が崩壊。高速道路が通行止めになっていたらしいのだ(それなら合点がいく)。
もしかしてと思って、水の売り場に行くと…
(写真はパン売り場だけど、細かいことは気にすんな)
ない。
興味本位で市内のスーパーを数軒覗いてみたが、ことごとく売り切れている。こりゃダメだ…帰ろう…と車を出したのだが、次の瞬間、目に飛び込んできたもの。
(物陰から配送トラックの様子をうかがう私…ってコンビニの駐車場に止めた車の中で待機しただけです)
セブンイレブン…そして、そこに入っていく配送トラック。
数分待機していると、案の定トラックから物資を下ろしている。
さらに数分待って店内に行き、しっかり金のトーストとやらをゲットする。なんか店員さんが、一部商品をカウンターの裏に隠したのが気になったが、なにか不正をしているという証拠もないし私のやってる事自体も図々しいので忘れることにした。
ちなみに、嫁は炭酸水を所望したのだが、炭酸水は不人気なのか、別のスーパーの前の自販機に残っていた。私はおいしい、麦酒とかいう炭酸水の一種があったので文句は全くありません。
うわー、よさそうなところですね、杵築。
機会があったら行ってみたい。
(もしかしたら、ふだんはすごく混雑しているのかもしれないけど)
地震があって、Snigelさんの実家はどうなったのか心配していましたが(すみません、九州に足を踏み入れたことが一回しかなく、土地勘がぜんぜんありません…)帰っていらっしゃっているときだったのですね。
お怪我などがなくてよかったです。
おひさです。
杵築は、いいところです。有名になってほしいと思う反面、お行儀の悪い団体客で賑わうくらいなら今のままでもいいと思ったり。
かくして、幸か不幸か普段からも全然混んでません(最近の月に一度の着物の日はどうかは知りませんけど…それでも酢屋の坂に観光客が大挙して押しかけている様子は想像がつきません)。
地震は、おかげさまでかすっただけでした。一日早かったら電車の運転見合わせなどで影響が大きく出ていたと思います。