あの娘が帰ってきた…

ちょっとね、今日の日記を読んでいただく前に、去年の8月の日記を読んできてほしいんです。この続きなので。


というわけで、私達の唯一のオアシスと言っても決して大げさじゃなかったレストランが閉店の憂き目に遭い、イナカでの唯一の楽しみとも言える外で「食べる」ことができなくなった私。私が「ああ、あのレストランがあれば」とぶつぶつ言っているとCさんが言うのだ。


Cさん:「じゃあ、別のレストランに行ってみようか」


…なんでそんなもんがあるならもっと早くに言わない。


言ってきました。自分の注意力のなさに呆れた。というのも、そのレストランはいつも通る目抜き通りのいつも行くスーパーの真ん前にあったのだ。ただ、こじんまりとしてるから、確かに言われないと気がつきにくい。


ドアを開けると…うおっ。人がいっぱい。


土曜の夜…まあ、かきいれ時なんだろうけど、もともとテーブルは4つしかない、あとはカウンター席という小さなレストランはほぼ満席。いや、レストランは正しくないな、どちらかと言えば、カウンターでビールを飲むほうが似合うようなパブだわ。


メニューを見てみた。


ハンバーガー3ユーロ(400円)


…マクドナルドかよ。ここは。


ホントにね、マクドナルド価格だった。そんな中頼んだものはチキンサラダ。

(チキンサラダ、7.5ユーロ≒1000円なり)


サラダのくせしてすげーボリュームがあった。まあ、味も、決して飛び抜けておいしくはないけどこの値段の前に文句などでない。また来ても良いレベル。だけど、遠くの街に引っ越してしまった片想の女の子が忘れられない男子中学生と同レベルで、なくなってしまった別のレストランが恋しくてたまらない。「閉店」と書かれた店の前を通るたびにすんげー悲しい気分になっていたのです。


そんなある日…ってまあ、先週末の話なんだけど、事件は、起きた。


閉まっているはずのレストランに明かりがついている。


えっ?まさか、復活した?


そう、遠くの街に引っ越してしまった片想の女の子が帰ってきてくれたんです。これはもう行かない手はない。さっそく行きましたよ。ワクワクしながら。


久しぶりに鍵のかかっていない扉を開けると、そこには懐かしいレストランがそのままの状態であった。

(ちなみにこれは2年くらい前の写真ね。現在もほぼ同じ状態)


ところが。何かが違うのだ。そう、人が違う。見たことのないウェイターさんがカウンターから出てきたと思いきや、お客かと思ったカウンターに座って暇そうにスマホをいじっていた女性が奥に消えた。


ウェイターさんにテーブルに案内される。…ってか、レストランは完全に貸切状態。


まあ、ここで私は一縷の望みをつないでいたのよ。ウェイターさんは変わってももし同じシェフさんなら当然同じ料理が楽しめるはずだ。イナカのことだし、きっとシェフさんは同じに違いないと。


渡されたメニュー。


食べ物は…これだけ。ドイツ語なんてわからんぜよ…って怒ってる人、よーするに、食べ物はスープが1種類、軽食が2種類、メインコースが4種類だと理解していただければ十分です。ほとんど選択の余地がない。ちなみに以前は食べ物だけで5-6ページ分あり、さらに「今週のおすすめメニュー」も別にあった。


ウェイターのお兄さんというと一部からクレームがつき、おじさんと呼ぶと本人からクレームがつきそうな微妙な年齢の男性が注文を聞きに来たので、すんごく嫌な予感を感じつつ、メインコースを選ぶ。


その後、そのお兄さんまたはおじさんと少し話す。淡々と書くと…


ウェイターさんは先程の女性とこのレストランを共同経営している。女性は奥さんだかパートナーだか知らんが、彼女はシェフ。子供が3人いてレストランの2階に住み始めた。2階はまだ引越し荷物のダンボールを開けてすらおらず散らかっている。


もともとこの街から車で30分ほどの距離の街にレストランを開いていたが、今回引っ越してきた。


レストラン再開にあたり、特に新聞に広告を打つなどの特別なことは予算の関係上していない。静かに数日前に再開した。


旧レストランともどもよろしくお願いします。


程なくして、注文した料理は来た。

(右上にあるのが「コロッケ」ね。芋)


…見た目は…悪くない。味は…良くない。


このソース、極めて無難な味付けなんだわ。…ってか無難過ぎる。ここで私はひとつの疑惑に思いが至る。


…まさか、このソース、インスタント?


確証はない。だけどさ、どうもさ、あの、お湯でといたらソースになるあのクノールあたりのインスタントソースと味が似ているというか、それっぽいのだ。もしそうでなかったとしても、味に特徴がない。はっきり書いてしまえば、私にも作れる。


Cさんが食べたものも同じレベルだったらしい。


私もCさんも、幸か不幸か舌がまったく肥えていない。この世のたいがいのものはおいしくいただける。そんなCさんがレストランを出て家に向かう途中にさんざんにけなすのだ。まったく美味しくなかったと。…あんたがそう言うなら、これは本気でおいしくなかったんだろうな。


というわけで、2年ぶりに戻ってきてくれた片思いのあの子は、実はまったく別の子になっていた…という悲しいオチのようです。Cさんと私で同意したこと。このレストラン、たぶん三月と持たない。だって、私達ももう行く気はありませんから。私としては奇跡的に再び灯ったお気に入りのレストランの灯を消したくない、3人の子持ちのおとーちゃんをなんとか応援してあげたい…という気持ちはあるのですが…無理だろうなあ。