ドイツ式結婚行進曲2,013(2)ー市役所での結婚式

翌朝。11時から市役所で結婚式。


はい。「市役所」です。「教会」ではなく。


私、ドイツの社会に対する知識がさほどあるわけでもないので、間違っていたら、むしろ教えて欲しいのですが、ドイツの社会に教会ってけっこうフツーに入り込んでます。ドイツの2大政党の一翼は「ドイツキリスト教民主同盟」ですから。なんでも「教会税」なるものが、月々10ユーロだか給料から天引きされるとかされないとか。ただ、この教会税というのはあくまで「任意」で(…ってことは「税」として紹介するのはおかしいのか)、教会から離れると宣言することで、この「税」を払わなくて済むようになるらしい。


ただ、教会から離れるというのは、特に年配の方には抵抗のあることのようで、私の知るここ最近教会から離れた人によると、その年の暮れのクリスマスミサにその人の敬虔な信者のご両親が行ったんだろうな。そこで、「今年教会を離れた人のリストを読み上げます」というどう考えても晒し者にしてるとしか思えない件があり、そこに娘の名前を聞いて大変なショックを受けたんだそうな。


私の周りを見る限り、敬虔な信者なんていない。私の彼女に聞いてみた。


彼女:「え?教会税?払ってるわよ。え?最後に教会に行ったのいつかって?…覚えてない。子供の頃は毎週親に連れられて行ってたけど…」


別にここで宗教の必要性について議論をするつもりはないんです。で、私の言いたいことはと言うとですね、教会じゃなくても結婚できるんだよ…ということ。ほんでもって、教会で結婚しても市役所でまたやらなきゃいけないらしいから、結局教会の結婚式って儀式の色が強い…ってこたー日本でも同じか。


午前11時から結婚式だというので、その20分前に市役所の駐車場についた私たち。明日の「披露宴」は6-70人の人を呼んでいるらしいが、この市役所の結婚式は両家の両親と新郎新婦の兄弟、さらに、証人となる最も親しい友人が数人…という感じの本人を含めて住人ちょいしか来ていない。なんかよくわからんが、会議室のようなところに通される。

(オトナの情事により写真が加工されていることをお許し下さい。)


ふむ。大きなテーブルの上にそれっぽい紙とかが置いてあって、それっぽい感じになってるぞ。


そこに市役所の職員さんが登場。職員さんに向かって、新郎新婦、そして証人2名が着席。その後ろの壁際に両親を含め、なぜここにいるのかよくわからない私を含めたその他大勢が座る。


職員:「あ、撮影はご自由にどうぞ」


というので、遠慮なくビデオで一部始終を撮影させていただきました(もちろん非公開です)。


やったことはないけど、日本の市役所に婚姻届を提出するって、市役所の13番窓口で市役所の人が書類に不備がないかを確認して、問題がなければ受理される…っていう感じで、けっこうあっさり進んでしまいますよね。だけど、こちらドイツでは何かしら会議室に通されて、のみならず、あら、証人二人の本人確認をした後、結婚についてのスピーチを始めちゃったよ。このおっちゃん。


眠くなるほど長くはないスピーチが続き、職員さんが


職員:「それでは指輪の交換です」


…へぇ…「市役所での」結婚式にそこまでやるんだ。


指輪の交換完了。それから、婚姻届にサイン。


職員:「おめでとうございます。お二人は晴れて夫婦です。それでは乾杯しますか。何人いらっしゃるんですかね?」


と言いながら、棚からシャンパングラスを出してくる。こっちはこっちで、持ち込んでいたバスケットからスパークリングワインとオレンジジューズが首尾よく出てくる。というか、新郎の弟が持ち込んだバスケット、こんなもんが入ってたのね。


かんぱーい。


さすがに職員さんは乾杯に参加していなかったが、それ以外の全員で乾杯。うーぃ、平日の朝の11時から酒飲んでるぞ(注:クルマを運転する人はオレンジジュース飲んでました。念のため)。


それから外に出てお祝い。あ、友人有志が10人ほど駆けつけてきてくれている。あんたらいくら仲のいい友人とはいえ平日に休みが取れるね。


まず出てきたのはさっきのバスケット。中にはスパークリングワインが入っていて改めて乾杯(平日の午前11時半に二杯目)。そして、風船。風船にははがきがついている。住所まで書いてあって、「今結婚しました。この風船を見つけたら送り返してくださいね(はあと)」(超意訳)などと書いてある。


風船を全員で空へ放した。風船は高らかと…とはとてもいえずよたよたと空へと昇っていった。


それから、私の彼女がなんか車のトランクから出してきたぞ。シングルベットのシーツくらいの布にでっかくハートマークと、その中心に新郎新婦の名前が書いてある。なんでも、このハートを切り抜くんだと。故意に爪切りのような小さなはさみが渡されて、相当な時間をかけてハサミが入れられる。


…で、そこをくぐると。


さて、これはなんかのおまじないなのか何なのかは知らないけど、「二人の初めての共同作業」なんだって。ん?なんか日本の結婚式でもケーキ入刀とかで同じようなこと言ってなかったっけか。


それから市役所の前で歓談が始まる。時刻は12時になり、市役所の職員さんがタイムカードを打刻してどんどん退庁していく脇で、私達は勝手に盛り上がる(金曜日は半ドンらしい。いいご身分ですなあ)。


そして、昼食会場へ移動しようと思いふと隣の建物の立ち入りのできない部分を見ると…


風船が力尽きて落ちてます。しかも2つも。


いやいや、思ったんですよ。絶対ガスが足りないか、ハガキが重すぎるかで元気よく飛んで行ってなかったなと。この調子だと、ヘタすると、全ての風船、町内から出て行っていないのではないかと。嫌だなあ、同じ街の中で、この風船拾ったら、おそらく拾った方も気恥ずかしいぞ。べ、別に二人の先行きに、ふ、不安なんか感じてないもんもんもんっ。